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14.唐突に始まる謎の展開はじめました

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「はっ、何が怖いだよ」
「ちょーっとぉ、今笑ったね? 大いに笑ったね?」
「ああ笑ったよ。笑ったさ」
「はいはい、二人とも喧嘩はやめなさい」

 これがレクターの前じゃなくて本当に良かった。
 早速勃発する双子の喧嘩を、私は溜息混じりにたしなめた。

「いや、でもお嬢様。こいつに限って怖いとかそんなもんある訳……」
「きゃー怖い。セイラお嬢様、助けてぇ」

 そう言って、エリーナの真似で私に縋りつくジュネ。

「やめなさい」

 付き合うこっちが疲れてくる。

「で、本当のところは何の用事で私達を呼んだの?」
「あっ、そうでしたそうでした」

 ジュネは思い出したようにポンと手を叩いた。

「嘘から出た実って話ですよ」

 嘘から出た実?
 首を傾げた私の手をひいて、彼女は裏門の扉を開ける。

「まあ、来ちゃったわけですよ」
「来た? ……ってもしかして」

 なんとなく用件が読めてきた。
 嘘が真実になるんだとしたら、まあ要するにこれしかないだろう。

「お見込みの通り」
「げ」
「!」

 裏門を出たその先に人が待っている。
 いや、待っているってそんな行儀のいいものじゃない。
 彼らはまるで、獲物を狙うハイエナのように、鋭い眼光でこちらを睨んでいた。
 数にして、二、四、六、ハ……十ニ人。

「私達が変装しなくても、役者は十分揃ってたんじゃない」
「いやはや、でも、彼らは手加減出来ませんよ?」
「それは……そうだけど」

「へへへ、お貴族様がここで慈善事業してるって噂聞いてなぁ。俺達にも、支援してくださいよ、お貴族様」

 ゴロツキが、下卑た顔を浮かべながら、私達を取り囲んでいく。

「……はあ、下衆が」

 ネインの挑発。
 それは、彼らの怒りを駆り立てるのには十分だった。

「何をぅ? おい、お前らやっちまえ!」

 彼らが一斉に飛びかかり始めた。

「今日はもう、魔法は使わないと思ったのに……!」

 ダンッとネインが片足を強く叩き付けた。
 瞬間、足元から氷の柱が現れる。

「は!?」

 氷に触れたゴロツキ達は一瞬にして氷漬けになってしまった。
 これでまず五人。

「ふふ、さっすが我が弟。便利」
「うるさいな」
「流石だわ、ネインさん」
「ありがとうございます」

 なんて、のんびりしている場合ではない。

「馬鹿野郎! 遠くから狙え!!」

 接近すると凍らされると警戒したゴロツキ達が、今度は遠隔攻撃を始めようとしていた。

「おい、ジュネ!」
「うーん、それは困りますなぁ」

 全く困っていないような、まったりとした表情を浮かべながら、ジュネはスカートに手を忍ばせた。
 まるで手品。
 彼女の手には、一瞬のうちに細い投げナイフのような物が握りしめられていた。

「じゃあこれで」

 彼女の手からナイフが投げられる。

「ぎゃっ」

 ナイフはまるで追尾機能でもあるかのように、遠くにいる男達の手に命中した。これで五人。
 じゃあ、あと二人は。

「ははっ。この状況は計算外だったが、どっちにせよお前を捕まえれば終わりだろ!」

 挟み撃ちをするように、二人が草むらから現れた。

「お嬢様っ。危ない!」
「お黙りなさい」
「え? 何を言っ……!?」

 これは決して二人の従者に言ったものではない。
 私が命令したのは、別の二人。

「そのナイフは危ないわ。今すぐ捨てて、地面に伏せなさい」
「……はい」

 私が告げた言葉の通り、彼らはナイフを打ち捨てると、その場に低く平伏したのだった。
 
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