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王子様の白百合 1
しおりを挟む歴史と名誉を重んじる名家ラザフォード伯爵家では、一族にΩの子が生まれると、領地内の深い森へ幽閉する。
一族の名誉と尊きαの血を守るため、由緒ある貴族の家ではΩの子を隠すのはそう珍しいことではない。
平民ですらΩの子は人目を避けるように育てるのだ。建国以来の忠臣で、代々要職に就いてきたラザフォード伯爵家では至極当然の措置である。
ラザフォード伯爵家の末子、エリオットも例に洩れず、12歳の誕生日にΩと診断されてからは森の中の小屋に移り、一人で暮らしてきた。
生まれたときから体が小さく、虚弱体質だったこともあり、早くから自分がΩであることに薄々気づいていたエリオットは、Ωだと言い渡されたときも、大きな衝撃はなく、どこか他人事のように事実を受け入れていた。
兄達が受けていた貴族子息のための教育をエリオットは受けさせて貰えなかったし、社交も内気な自分にはとても向いていないと思っていた。
何をやらせても他の子供たちに劣るエリオットに両親は興味がなく、兄達はいつも冷ややかで、エリオットはまるで無いもののように扱われていた。
そんな家族の態度もあってか、様々なことをとっくに悟っていたエリオットは、森に追いやられても、自分の置かれた状況を冷静に受け止めることができた。
朝日と共に目覚め、日が暮れると眠る森での生活もそれほど悪くない。
責任のない暮らしは、考えようによっては気楽で、自分にはそれが合っている。
そう、言い聞かせ、なんとか前向きに日々を過ごしてきた。
とは言え、森での暮らしは、楽しいことばかりではなく、むしろ辛いことの方が多い。
エリオットは12歳から7年間、たった一人で暮らしてきた。
今では随分慣れはしたが、夜になると森は深い闇に包まれ、どこからか獣の鳴き声も聞こえてくる。ヒートが始まってからは自分の体を掻き抱いて、1人で熱を耐えた。
今でも時々、どうしようもないほどの孤独感に襲われる。
家族に恨みは無かったが、居ないものとして扱われることはやっぱり寂しかった。
同時に、もう屋敷に自分の居場所が無いことを理解していたし、今更帰れるとも思っていなかった。
Ωである自分には、一般的な幸福は許されないものだと理解していた。
そんなものは、とうの昔に諦めていた。
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