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しおりを挟む寂しくてどうしようもなくなると、いつも思い出すことがある。
幼い頃に一緒に遊んでいた幼馴染のマックスのことだ。兄の学友として一時期よく屋敷を訪れていたマックスは、エリオットをよく構ってくれた。日の光をキラキラと反射する黄金色に輝く瞳を蜂蜜のように蕩けさせ、実の兄の何倍も優しく、可愛がってくれた。
マックスのことは兄の学友であることしか知らなかったが、いつも仕立ての良い服を着ていて、洗練された上品な所作から、名のある名家の令息だと、確信していた。
子供なのに紳士的で優しくて、誰よりも美しい。
いつも花のような香りを纏ったマックスはエリオットの憧れだった。
マックスは遊びに来るとエリオットを膝に乗せ、そのままよくティータイムを楽しんだ。
クッキーの屑をマックスの高級なウールのパンツにたくさん零して、彼の護衛が慌てていたのを思い出して、思わず笑みがこぼれた。
マックスはエリオットにはどんな無礼も赦していたし、エリオットも彼に素直に甘えていた。
自分がΩだと確信していたエリオットだったが、万が一βだったら、兄が通っているアカデミーに入学して、マックスと一緒に学校に通うことを夢見ていた。
幼いエリオットにとって、それは唯一の夢だった。
でも、残念ながらエリオットはΩだ。
この国でΩという性は、αを誑かす、ふしだらで低俗な存在だ。
そんなΩである自分がいくら会いたいと思っても、高貴な貴族令息であるマックスには迷惑になる。
せめて彼の近況だけでも知りたくて、最低限の食糧を運んでくる、年老いたβの使用人に駄目元で尋ねたが、「マックス」というありきたりな愛称では誰のことかも分からなかった。
そもそも、マックスが屋敷を頻繁に訪れていたのはエリオットが8歳から10歳までの2年間で、エリオットが森に来る前に交流は断たれてしまっていた。
屋敷にいる兄に聞けば分かるかもしれないが、Ωであることが判明して以来、家族とは一度も会っていない。今更エリオットが会いたいと言っても、取り合ってもらえないことは明らかだった。
屋敷から嗜好品を一つも持ってこなかったエリオットにとって、マックスとの思い出は、宝箱から偶に取り出して眺める、美しい宝石のようなものだ。
「さぁ、今日もしっかり働かないとね。」
宝石は日々を慰めてくれるが、空腹を満たすことはできない。
最低限の食糧は屋敷から運ばれてくるとは言っても、森で生きていくためにエリオットは毎日働かないといけない。
手に入らないものを欲しがっても仕方がないのだ。
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