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■本編 (ヒロイン視点)

レッスンじゃない3

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 琴香のなかにある鳴瀬の指が、ゆっくりと抜き差しされる。異物感がぬぐえなくて、腰がひけてしまう。
 けど、いまの甘い雰囲気を壊したくない、怖がっていると思われたくない。
  
「も、もう大丈夫、鳴瀬さん……」
  
 未成熟な十代の少女でもないのだから、多少強引に進めても問題ないと思う。

「もう大丈夫だから、……して……ください」 
  
 そう言いながらも、心の焦りに身体がついてきていないのはわかる。痛みに近い違和感を、息をのんでやりすごす。 

 ナカからゆっくり指を引き抜いた鳴瀬は、琴香を抱き寄せてころんとベッドに転がった。
  
「無理せず。ゆっくりで。うまくいかなくても、いろんなやり方があると思うし」
「は、い……」
  
 腕にすっぽり包まれると、こわばっていた身体から徐々に力が抜けていく。
 心地よいぬくもりにひたって目を閉じた。こうしているだけでも心は充分満たされている。

 ──でも、大人だから。この先があることも知っているし、彼とそこまで一緒にいきたいと思う。
  
「任せてくれます?」
  
 顔を覗き込まれる。ここまで近かったら眼鏡がなくても表情がわかる。
 この顔は『いつもの鳴瀬さん』だ。ドキドキするけど、同時にとても安心する。 
  
 琴香が小さく頷くと、まぶたにキスが落とされる。こめかみに、頬に、そして唇に。
 けど、唇へのキスは少し長くて。
 呼吸のあいまをぬって、彼の舌が悪戯にぺろりと唇を舐めた。意図をくんだ琴香が少しだけ口を開くと、とたんに侵入してくる熱い舌。
  
「んぅ、」
  
 深いキスに溶ける、鼻から抜ける声。応えようと舌を絡ませる。鳴瀬の舌はさんざん口内を舐めて、ちゅ、と音をたてて離れていく。
  
「そか……。先生、キスは初めてじゃないんすね」
「え……?」
「どうせなら、全部俺が……、……いや、なんでもない」
  
 どこかで聞いたセリフ。どこだっけ。
 きもちがいいと、どんどん思考が奪われしまう。
 ぼんやりしているあいだにも、彼の手はいろんなところを撫でている。お尻のまるみをなぞって、背中をさすり、わき腹をたどって胸にたどりつく。
  
「あっ」
「やっぱ好きなんすね、こっち」
  
 感心したように言われてしまうと恥ずかしい。ぎゅっと目をつむっても、声は我慢できない。
  
「っはぁっ……」
  
 胸の先端をくるくるといじられるのがたまらなく感じてしまう。そっちに気を取られているうちに、彼の唇は頬に、首筋に、鎖骨にと降りてくる。そして、いじられてぷくりと立ちあがった先端に吐息がかかる。
  
「あっ、舐め……っ」
  
 初めてのそれが、すごくよくて。ちろちろと舐め上げる舌の動きに、ぞくぞくっと背がしなった。 
 舌は指よりも熱くて、やわらかくて、しつこく琴香を攻めたてた。
  
「あぁんっ」
  
 きもちよさに頭がもうろうとする。ぐしゃりと鳴瀬の髪をかきまぜるくらいで、抵抗らしい抵抗ができない。息をするのもいっぱいいっぱいなのに、彼はさらに指で琴香の下の方をいじりだした。
  
「あっ、あーっ……」
  
 舌と、指と。いいところを刺激され続けて、琴香はびくびくと身体を痙攣させた。自分でイくときの比じゃない快感に襲われる。
  
「も、だめ……! あっ!?」
「ん、二本入った」
  
 ずるん、となかを滑るものに驚く。いつのまに。
  
「たぶん、これだけ濡れたら、痛くないかと思うけど……」
  
 はぁはぁと息を整えながら、琴香は小さく頷いた。
  
「ん、よかった。……ほら、よく滑る」
「ぁん、んっ、あ」
  
 とん、とん、とリズムよく奥まで抜き差しされる感じ。本当のセックス、みたいだ。頭の中ではこれが彼の動きに思える。きゅうっと足先がシーツを握る。
  
「ひぅっ……あ、っ」
  
 指がかすめる。イイところが、たぶん、ある。
  
「大丈夫そう、ですかね」
「も、いいの……ほんとに……」
  
 耐えきれなくなって、名前を呼ぶ。
  
「はやくしたい……きて、鳴瀬さん、おねがい」
  
  
  
  
  
 鳴瀬の吐いた息が、琴香の耳に吹き込まれる。
  
「鳴瀬さん、ちゃんと、ちゃんと気持ちいいですか……」
  
 圧迫感に耐えながら琴香が囁く。
  
「すごく」
  
 短いことばのなかに、琴香と同じくらいの熱を感じる。うれしくて、じわっと胸の奥があたたかくなる。そうするとおなかの奥も濡れるらしい。鳴瀬が小さく呻いて、ゆるく腰を押し付けてきた。
  
「動いて、いいすか」
「はい、あっ……、ん、っ」
  
 ゆるい突き上げでも、体格差のせいか全身で受け止めている気分になる。 
 ゆっくりだったものがだんだんと滑りをよくして、速度をあげていく。ときおり挿入の角度を変えながら、奥へ奥へと打ち付けられる。もう、痛みは感じない。ただひたすら彼の荒っぽい動きに翻弄される。
  
(奥、すごい、あたるっ……) 
  
 イイ、と思ったところが同じだったらしい。初めて聞く甘い声で、鳴瀬が小さく呻いた。
  
「あ、すご」
「あんっ、そこ、もっと」
「ん、俺も、気持ちいい」
「うん、うんっ……すき、そこ……あぁっ」
  
 ただ、擦りあっているだけなのに、なんでこんなにきもちいいんだろう。
 夢中で求め合って、指と指を絡め合う。熱っぽい視線が琴香をのぞき込む。
  
「イきたい、けど、もうちょっとしたい」
  
 そんなこと言われたら、とけてしまいそう。きゅっとおなかに力が入ってしまって、鳴瀬が呻いた。
  
「っ、もぉ、せんせ……」
「ん、だって、……いい、いつでも……んっ、あっ、あっ」
「ああ、イイ……だめだ……せんせ、……琴香、」
  
 がつがつと穿たれる。息ができない。
 求められてうれしい。この人が好き。満たされて、琴香はきつく鳴瀬の身体にしがみついた。
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