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14 満員電車

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薫はびっくりするくらい、平日に手を出してくる事はなかった。週2、3回の仕事終わりの食事の後は、いつものように最寄りの駅からコインパーキングに停めた彼の車に乗り私の家へと送ってくれた。キスもするし、車内で若干のお触りはあるが、それ以上はなかった。その代わり金曜日の夜から私の家に泊まり、月曜日の朝に一緒に会社へと向かう。途中から乗り込む車両を移動する徹底ぶりだ。
会社の人に見つかると、何を言われるのかわかったものじゃないから、それはそれで良かったけど、週末に身体を重ねるんだと分かっていても、欲しくなる時はあるもので――



『ただ今一つ先の駅で、車両トラブルにより、電車の運転を見合わせております、お急ぎのお客様には、大変ご迷惑を――』
夏に向かう季節になり、週の半ばになり、電車内も冷房がかかっている。帰る時間はちょうど通勤ラッシュの時間で、電車の先頭車両に乗った。先頭車両の運転席へ鍵を解除して開ければ行ける扉の前の凹みに私を誘導してくれた。小声で話していると、車内アナウンスがまた流れた。
『お客様に申し上げます、一つ先の駅で起きた車両トラブルにより、列車に乗っているお客様を駅のホームへと誘導しております、またあと20分ほどで運転再開を見込んでおります、お急ぎのお客様には――』
40.分ほど待って電車が発車すると、次の駅で運転見合わせていた車両から降りた人々が、私たちのいた電車に乗り込んだ。一気に増える乗客に薫は押されて、私の顔の横にある扉の小窓に手をつけた。人々にぎゅうぎゅうと押された薫の身体が私に当たり、視界いっぱいに広がる彼の胸板で、彼と抱き合うような格好になってしまった。
電車が出発して揺れていると、薫が小声で私に
「俺に掴まっていいから」
と言ってくれたので、お言葉に甘えて彼の両脇に手を置いた。カーブに差し掛かって電車が大きく揺れると、薫は手に力を入れて動かないように耐えていた。次第にこの状況に慣れてくると、誰も見ていないしと彼の胸板に頬を付けた。ドクンと彼の鼓動が速くなり、サマージャケットを着ているからと言って薄手だから彼の鼓動も聞こえる。息を吸うと薫の好むコロンの匂いに包まれ、幸せだ。
「…茉白」
薫は私の頭のてっぺんに口をつけると、彼も私の方へ身体を寄せてお互いの身体が触れる面積が増えた。電車が揺れ薫が押さるたびに彼の胸板に私の頬が当たる。
しばらく揺れていると、ゴリッとした固さをお腹辺りに感じて見上げると、バツの悪そうな顔をした薫がいた。
『すまない』
口をぱくぱく動かして言っている彼に、その固さは彼の昂りだと気づくのにそう時間は掛からなかった。
『か お る』
私も口をぱくぱくと動かして、ジャケットのボタンを2つ外すと、広がったジャケットと私の手持ちのバッグで私の手の動きを隠してくれるはずだ。薫のジャケットの中へ手を忍ばせて、彼のお腹の上を指先でなぞると、ピクッと反応する薫が可愛いと思ってしまう。今日の彼もベルトをしているから、スーツのズボンのフロントチェックを下ろすと、隙間が出来たから手を入れた。繋がった時よりも固くはないけど、少し芯を持つ昂りに薫の履いているボクサーパンツの上から5本の指先でなぞると、むくむくと固くなっていく。
『茉白』
私の頭のてっぺんに、また口をつけた彼は、私に身体を押しつけるから、薫と扉の間に挟まって身動きが取りづらくなる。チラッ、チラッと回りを見渡せば、彼の大きな身体で私が隠れているし、小窓しかない扉の凹んだところにいるから、誰にも見られていないのをいいことに、私は大胆にも彼の昂りを握る。下着越しの昂りを下から上へと擦ると、下着も一緒になって動く。昂りの側面と先端の凸凹も弄りながら、先端へと向かうと下着が濡れ始めて染みが出来たと思う。
ふんっ、と薫が咳払いをすると、揺れる電車に合わせて彼の腰が動いた。私の手のひらに触って欲しい所を押しつけて、私は指先に力を入れて、ぎゅっと握ったり擦ったりする。
薫が私の手で気持ち良くなっていると思うと、湧き上がる快感を抑えられなくなってしまい薫の胸板に頬を付けた後、シャツの上から薫と胸板を噛んだ。リップの跡が付いたけどジャケットで隠れる場所だから問題ないはずだ。
『茉白、直接触って、前に穴があるから』
と電車遅延を謝る車内アナウンスに被せて、薫が私にしか聞こえない声でそう言うから、言われた通りにスーツのズボンと同じ場所に、指を引っ掛けるとパンツのフロント部分が開く知る。直接触れると、やけどをしそうなくらい熱くて、固くなっている。何分に一度、咳払いをする薫は、私の頭に口をつけたまま髪の中に入る彼の吐息がだんだん荒くなっていき、その度に腰を小刻みに動かしていた。
直接触れる昂りの凸凹した先端と側面の間を親指の腹でなぞり、そのまま先端から溢れ出るツユの場所・・を押せば彼は、くっと小さな声を漏らす。人差し指から小指までの指を昂りの側面の浮き出ている線――多分血管だろう――と一緒に握れば、グンと嵩が増した気がする。薫は私の頭に口を強く押しつけて、私の顔の横に置いていた右手を下ろして、私の背中から腰、お尻へと回った。私のいる扉の凹みは彼の右側からはちょうど端の所だから、他の人に見られる心配はない。スカートの上から強めに揉まれて、下半身がジンとする。彼の固くて太い長い指が太ももの間に入ろうとするが、私はロングスカートを履いているから邪魔をして、上手くいかないみたいだ。結局お尻と太ももの境目を摘まれ揉まれると、彼を触りたいだけだったはずの私は、それだけじゃ我慢が出来なくなっていた。
『薫っ』
とうとう我慢が限界を超えたから顔を上げると、彼は眉を寄せて苦しそうな眼差しを私に向けていた。
『次の駅、降りよう』
すると、すぐに電車は減速して、いつもは降りない駅に到着した。





満員電車から降りて、薫に手を引かれてエスカレーターを上ると、構内の多目的トイレへと入った。
「はやっ、くっ」
「ッ、茉白っエロすぎだろっ」
鍵を掛けた薫が振り向くと、目を見張り低く唸る。それもそのはずで、私がスカートをたくし上げて下着を下ろしたからだ。私から手提げのバッグを取り上げて、洗面台の後ろにある予備のトイレットペーパーが置いてある棚に2人分の荷物を投げるように置くと、彼は私を洗面台の横にある壁に押し付けた。
「ッ、来て」
「でもっ」
「平気っ、早くっ」
まだちゃんと触れられていない下半身に、薫の昂りを入れた事はない。いつもちゃんと解してから入れられるのに、今はもう早く薫と繋がりたかった。懇願して彼の腕を引いて彼の手を下半身へと誘導すると、ヌルッと滑る。それがきっかけで、薫は無言でズボンのベルトを外し、フロント部分を広げてボクサーパンツをずらした。ぷるんと弾む昂りは、天井に向かってそそり立ち、今にも爆発してしまいそうなほど膨張している。私は右足を上げて、薫の首の後ろへと腕を回すと、彼は私の上げた右太ももを掴み、私に顔を寄せて口を塞いだ。荒々しく気持ちの余裕のない乱暴な口づけをしながら、彼の昂りの先端が蜜口に当たり入っていく。ヌルッと私の蜜壺から溢れた蜜が彼の先端を包み、潤滑油の役割を果たしている。解してないといっても、彼の昂りを受け入れるために、蜜口が広がる。
下半身が苦しいと、身体が悲鳴を上げるのに、そのうしろに控える快感を求めてしまう。
「っ、くっ、茉白っ、力を抜けっ」
「んんっ、ぁ、っんぐっ」
薫は私の足を支える左手とは逆の手で、私のお尻や胸を服の上から強めに弄る。浴室にいる時みたいに、部屋とは違い私の声がよく聞こえる気がして、こんな所で響かせたくないと薫の唇を求めた。私の腰を壁に押しつけたからか、固定され一気に貫かれると、鋭い快感に耐えられなくなり喘ぐが、彼の口の中へと消えて、ぴたりと重なった私の身体はぴくぴくと反応する。背中を壁に付けたまま、薫は抽送を始めると、お互いの服の擦れる音も次第に大きく聞こえる。
「くっ、ッ、つ」
薫は立ったまま器用に蜜壺へ入れる角度をかえていく。いつもはじっくりと愛されるのに、薫は我を忘れたようにガンガンと腰を打ちつける。私も自分が気持ちいいと感じる所に触れてくれないから、自ずと抽送されながらも自分の腰を動かすと、さらに角度が変わって絶頂が近いと目の奥が熱くなる。イくっ、と小さな声を漏らせば、彼は私の唇を奪い、舌を絡めた。ちゅう、と薫の舌を強く吸えば、絶頂はやってきた。ぎゅうぎゅうと彼の昂りを締め付け、頭が真っ白になって何にも考えられなくなる。
頭の隅で熱くなって濡れた蜜壺を感じたが、目の前の快感に酔いしれた。


「ッ、茉白、拭くだけだから」
「うん、わかってる」
注がれた証を拭う薫の指に、イッたばかりの敏感な身体は反応してしまう。だけど、薫の触り方も悪いから、私のせいだけではない。その証拠にトイレットペーパーで蜜口を拭うのに、彼の指がついでに蜜口から出ている粒を触るのだ。それに拭っている反対の手で私の胸を揉んでいるのだ、感じない方がおかしい。次第に立っているのにもキツくなって、薫に寄りかかると、無意識のうちに目の前の逞しい首に唇を寄せた。
「茉白」
と困った声色を出すのに、彼の手は私の足を持ち上げて昂りを再度蜜壺の中へと入れるのだ。
「あっ、深いっ、ん」
最初に性急に繋がった時とは違い、私の中を堪能するような緩やかな挿入は深い快感が起こる。はぁっ、と吐息を吐くと口を塞がれて、ねっとりと舌が絡まっていく。お互いの舌を味わって吸い重ねて甘噛みすると、ゆっくりと交わっていた下半身も完全に繋がった。抽送が緩やかに始まると、口を合わせたまま二度目が始まり終わった。



もう出ようとトイレから出ると、車両トラブルのため人が溢れていたホームには数名の人と、電車遅延が解消して通常の運行スケジュールとなっていた。
「…送るよ」
「うん」
とんでもない事をしてしまったと、頬を赤らめた私は、薫のと手を繋いだ左腕に顔を埋めた。最後まで言葉数少なく過ごして、マンションへ送ってもらった車の中で、いつものように別れの口づけをしていると、
「…今週は俺の家で過ごそう、な?」
初めて彼の家へと行く事を約束した。
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