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31 気分転換に1泊目3

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身体を洗っている間に、浴槽に溜まったお湯が満タンになった。多少の汗もかいたからさっぱりとした身体を休めようと浴槽に入ると、熱すぎず冷たすぎないちょうど良い温度の水に身体が包まれた。大きな丸い浴槽から外の海の景色を眺める事が出来るが、あいにくの夜だから真っ暗だし、なんならバスルームの明かりで窓ガラスが鏡みたいに私を映し出す。もしかしたら太陽が出ている時は、ここから見える景色は絶景なのかもしれない。
──相当高そうな部屋
旅行の滞在中のプランやホテルは全部薫が手配してくれたから、明日は何をするのか私は知らされていなかった。部屋に入ってすぐ彼のそばにいたから、部屋の中はまだちゃんと見れてないけど…少なくともバルコニーにプールがあるだけでもすごいのに、お風呂まで大きいとなるとただの部屋のグレードではない気がしてきた。
──本当、こんなのばっかり経験していると…もう前みたいになれないかもしれない
薫と出会う前はバイトや親からたまに貰うお小遣いでやりくりしていたのに、社会人になって一人暮らしを始めて慣れてきてもいないのに、いきなりタワマンの高層の部屋で同棲している。生活品もファッションもブランド品も全部徒歩圏内にある買い物に便利な場所だし、薫がほとんどお金を出すから私が払うのは、自分の住む家の家賃と今はほとんど使ってないから基本料金ぐらいの光熱費だけでお給料も貯まっていく一方だ。
生活レベルを上げているつもりはないのに、全てが一流品ばかりに触れているとそれが当たり前になっている。
──薫と別れたら…私はどうなっちゃうんだろうか
こんなに好きになってしまった薫と別れちゃうくらいなら、一度距離を置いた方がいいのだろうか、とマイナス思考になっちゃうのは、安藤くんとのことが心に引っかかっているからだ。薫も怒っていたし喧嘩ではないけど、薫とギクシャクしているのも事実だ。
「好きなのに…なんで距離を置かないといけないのよ」
浴槽の縁に頭を乗せて窓ガラスの外を見ると、やっぱり全然楽しそうじゃない自分の顔がそこにいる。
さっきまでの…メッセージが届く前に戻れたらいいのに、と思っていると、ぼぅっとしてくる。
「…そろそろ上がらないと」
いつもの薫ならココで遅いって言って、私がいるバスルームに入ってくるのにそれすらない。
「…もうやだ」
泣きそうになりながら身体を乾かして、脱衣所にあるバスローブを着た。腰の紐を締めてドライヤーを持ってバスルームから出ると、ベッドで仰向けになっている薫は天井をじっと睨んでいた。
「…薫?」
「…あがったのか、なら俺も入ってくる」
私に視線を合わせないで、入れ違いで彼がバスルームへと向かった。
「ダメになるのかな」
──ダメダメッ!お風呂に入る前はちゃんといつもの薫だったでしょ!茉白っ
頭を横に振って薫が寝ていたベッドに座り、ドライヤーで髪を乾かし始めた。

ベッドのそばにある丸いテーブルには、薫が頼んだ料理と飲み物がまるでグルメ番組を見るように綺麗に置かれていた。
これをこれから2人で食べるのだから、バスローブ姿じゃダメだと着替えようとドライヤーのスイッチを切るとシンと静まり返る。
「もう乾かしたのか」
背後から声を掛けられて振り向くと、薫は私と同じバスローブ姿で壁に寄りかかっていた。
「うん」
私が返事をすると薫は私の方に近づいて、無言で私の横に座った。
「シャンプーは備え付けの使った?」
乾いた髪の先を手に取って、毛先をくるくると自分の指先に巻きながら彼は言う。
「うんそう…薫も?」
「ああ」
そう言って私は薫の頬に手を伸ばすと、薫の硬い頬に指先が当たって、そのまま手のひらを添えた。
薫は目を細めて私のする事を見守っていて、親指の腹で彼の頬を撫でていると薫の顔が私の方へ近づいてきた。彼の首の後ろへと腕を回しながら、そのまま口が重なると薄く口を開けたところから薫の舌が私の口内へと入ってくる。彼の舌を迎えるために、自分の舌を彼の舌にくっつけると器用に動いた彼の舌が私の舌を持ち上げて吸いつかれた。
「ンッ、ずっとそこにいたの?」
強く吸い付いた後は唇が離れたけど、お互い離れようとは思わなかった。
「ああ、綺麗だと見惚れてた」
「薫酔ってる?」
ただ髪を乾かしているだけなのに大袈裟に私を褒める薫に、数時間前に薫が飲んでいた生ビールを思い出して酔いが回ってしまったのかと思ったけど彼は軽く笑う。
「んなので酔うか」
薫の笑い顔を見て、憂鬱で張り詰めていた思いが小さくなっていくのを感じた。
「薫、私本当に薫が好き…他の人なんて見てないし考えッ…」
自分の気持ちを全て言い終える前に薫は私の口を塞ぎ、噛み付くように荒々しいキスをする。
「…っ、分かってる…俺の心が狭いだけだから気にするな…茉白」
たっぷりと私の口内を味わった彼は低く私にそう告げると、私を抱きしめた。
「…薫」
「安藤とは連絡先交換するな…今後は男全般もダメだ」
「…うん」
「親なら許す」
薫の首の後ろに回した手を下ろして、彼の背中に手を回しながら胸に顔を埋めるとバスローブが顔に当たる。
「…今まで交換している男友達は?」
「……なるべく連絡を取るな」
薫には困った返答をすると、薫は少し悩んでからまた無理を言う。
──でも嬉しい
今までもこれからも安藤くんや他の人と連絡先を交換するつもりはなかったけど、薫の言葉に胸が熱くなる。
顔を横に振ってぐりぐりと彼の胸に顔を押し付けると、バスローブがはだけて薫の胸板の肌が直接私の顔に触れた。目の前にある肌をペロリと舐めると、彼は私を抱きしめる手に力を入れた。
チラッと上を見ると薫は私を見ていて、もう一度彼の胸板に今度はゆっくりと舌を這わすと薫の目が細くなる。
「愛してる、茉白」
口を重ねながら後ろへと押し倒され、柔らかなベッドが私の身体を下から包む。薫は自分のバスローブの腰の紐を解くと、勢いよくバスローブを脱ぎ捨てた。無表情の彼は他の人が見たら怖いと思うかもしれないが、私には薫が何を考えているのかわかる。
──私が欲しいって顔してる
鋭い眼差しの奥にある瞳は欲情の熱がチラつき、鍛えられた分厚い胸板と太い腕、綺麗に割れた腹筋とすでにおへそを隠すように勃ち上がる昂りには血管が浮き出していた。上から見下ろされ、ゾクゾクと背中に快感を感じる。手を動かして私も自分のバスローブの腰の紐を解くと、一挙一動を逃すまいと薫の痛いくらいの視線を感じる。バスローブの前を退かすと真っ白な乳房が2つと、お風呂から出た時に下着なんて履いてないからきっと下生えまでも丸見えだろう。私の顔、乳房と下半身へと薫は視線を下げて、逆の順番に私の顔に視線を戻された。左の白い指先を同じ肌の色の左の乳房にやると、薫の視線もそちらへと移動する。薫に愛撫されている時を思い出しながら、手のひらで乳房を下から掬うように掴んで揉み始めた。固くなった乳房の中央にある粒を親指と人差し指で摘みこねる。薫がしてくれるように快感はやってこないけど、ペロリと自分の唇を舐める薫の表情が私の快感を起こしていく。
「…続けて」
掠れた声に命令され右足を上げてベッドへに付けると、右手を下半身へと伸ばす。下生えを指先に絡めつけ、薫に見せつけるように蜜口の縁をぐるりと指先で辿った。
ギシッとした音がした後、私の身体の横に膝をつけた薫の重みで、ベッドのスプリングが凹んで私の身体が傾く。薫は私の右足を持ち上げて自分の肩に置くと、私の足の間に入った。
「茉白」
彼の声に促されるように、下半身に伸びた手が動き始めた。彼の肩に置いた私の足首からふくらはぎへと顔を少し横に向けた薫の舌で這わされ、私からも視線を外さない。
──ああ、どうしよう…すごくカッコいい
どうしてこんなに薫を好きなの、カッコ良すぎてどうにかなってしまいそうだ。
薫は自分の昂りに手を伸ばして握ると、上下に擦り始めた。先端から溢れるツユが彼の手を濡らし、擦り付けるたびに水音が加わっていく。彼から与えられる刺すような視線と、ふくらはぎを甘噛みされ舌を這わされ強く吸われてチクリとした痛みとともに赤い所有印が増えていく快感で、蜜壺から蜜が溢れていく。
「あっ、気持ちっ、い、いっ、薫っ」
淡い蜜口の触れ合いだけじゃ我慢出来なくなって蜜口の奥の蜜壺に指先を入れると、薫はその様子もバッチリと見られた。いつも薫が私にやってくれているように指先を動かすと、じわじわと快感が増していく。
「…気持ちいいか」
「うんっ、あっ、っ」
そのうち蜜壺に入れる私の指先が2本になると、薫は一段と低い声を出して私の蜜壺の中へ私の手に重なるように自分の右の指を2本入れた。
「茉白が好きなのはここだ」
「んぁっ!はっ…あっ」」
一気に蜜壺が満たされていくと、自分で気持ちいいと思っていたところとは別のところに、薫は指先を曲げて私の指をそこに誘導した。ただ軽く私の指の上から薫の指で押されただけなのに、一気に身体に快感が巡って全身が痺れる。
「気持ちいいか?」
上体を屈めた薫は私の耳の下に額を、鼻を首筋につけた。
「あっ、そ…んっ…あっ、あっ」
薫が上体を屈めて私の上に重なったから、彼の胸板につけていた足が彼の動きに合わせて私の胸に太ももがくっついた。蜜壺の中に入る彼の指は、私の指先よりも奥の蜜壺に潜り込み内側をあちこち触り広げていく。
快感が強くなり蜜壺から自分の指を抜くと、テラテラとひかりながら濡れた指先を薫は左手で掴み迷う事なく口に入れた。薫は舌を這わし強く吸い付くと私の指先が、蜜から彼の唾液で上書きされる。私の指先を舐め終わると彼の口から解放され、私は彼の舐めた指を今度は口にして舐めた。うっとりと薫を見つめながら指先を舐め終わると、お互いの唇が重なり深いキスをする。上げていた太ももを退かされ、彼の腰の横に移動すると、下半身に当たる固い昂りが押し付けられる。
「…もういれるの?」
「ああ、2人・・でやったからな」
キスの合間に、まだいつものように解されていないと、不安を言えば、私の身体を私よりも知っている薫が大丈夫だと言ってくれる。私のくびれから腰へ、腰からお尻を触る薫の左手が私の足を持ち上げると、蜜口に熱い塊がくっついた。
「あ…っ、んっんんっ」
薫の頬に鼻を押し付けて、やってくる圧迫感に全身の力が抜けるように努力する。ズズッと蜜を潤滑油のように利用して滑らかに蜜壺に入っていく昂りの先端が埋まると、その先は一気に貫かれた。
「ぐっ、っ」
ピクピクと私が軽く達すると、締め付けられた薫が低く唸る。私が昂りを締め付けている間にも、ぱん、と一度大きく蜜壺から昂りが引き抜かれ、蜜壺の最奥に戻る時に肌がぶつかると、タガが外れたかのように早くなる抽送が始まる。
「アッ、はっあ、ぅんっ、っ」
「茉白っ、はっ…ぐっ」
甲高い声が口から溢れて、ギシッギシッとベッドが揺れる。右手を薫の首に回すと、腰の横に手を置いた薫は動きやすくなったのか、私が特に感じる場所を私に教えるようにそこばかりに昂りを当てる。
「あっ…いっ、くっ、あっ…あぁっ!」
「俺もっ、茉白…っつ」
頭が真っ白になっていく感覚──もう絶頂が近いと頭の隅の自分が教えてくれ、無意識に口にすると絶頂がすぐにやって来て何にも考えられなくなった。
ぎゅぅっ、と蜜壺の中にある昂りを締め付けると、遅れて熱い液体で蜜壺の中を満たされた。
薫も一緒に達したと思った時には、もう薫の昂りは太く固くなって復活していた。
「は…あっ!」
余韻に浸っていると、腰に腕を回され抱き上げられると、ベッドに座った彼の上へと跨いで座った。自分の体重でイッたばかりの身体に、昂りが深く突き刺さる。収まりつつあった快感の波が乱され、頭がおかしくなりそうだ。
「あと一回、な」
下から見上げられ眉を寄せて汗をかく薫の姿に見惚れた私は、返事の代わりに彼の頬に両手を添えてキスをした。

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