体育館倉庫での秘密の恋

狭山雪菜

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ある日2

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寝室の部屋から出ると、すぐにリビングとして使っている6帖の部屋に出て電気をつけた。この家、夏樹の住むアパートに通うようになって、ある程度分かるようになってきた。
彼はこの家は自由にしていいと言ってくれてるが、やはり勝手に使うのは忍びなくて、なるべく彼から離れないようにしていた。
ーー合鍵も貰ったけど、結局使ってないし
彼と学校から離れた場所で待ち合わせをして、この家にくることの方が多くて、会えないともう分かっていると自分の住むマンションへと帰るからだ。
リビングから廊下と併設されている台所に立つと、小さな鍋と冷蔵庫から玉子を取り出した。
鍋に水を入れコンロに火をつけて鍋を置く。その間にシンクの下の引き出しの中にある袋麺を出し破いてシンクに置いておく。
玄関まで行き靴を脱いだそばにあるバッグを拾うと、中から携帯電話を取り出した。台所に戻りながら携帯を操作していたら、着信や知り合いのメッセージはなかったので、携帯本体の横のボタンを押して画面を真っ暗にしてたら、ちょうど鍋の水が沸騰したので、インスタント麺3袋を鍋の中へと入れた。
携帯で時間を確認して3分待っていると、下にスウェットのズボンを履いて上半身裸の夏樹が寝室から出てきた。いつものように私のそばに寄ると、私の髪に鼻を埋めて背後から抱きしめてくる。彼の固い胸板と腕に包まれると、ホッとして力を抜き彼に背中を預けた。
「あと…1分くらいでラーメン出来るよ」
「ん、」
ひと言彼なりに了承すると、思わず笑みがこぼれた。
ーーさっきの気まずいと思ってるのかな、可愛い
そんな事を考えていると、あっという間に1分経ったので、コンロの火を止め鍋の取っ手を掴もうとすると、彼の腕が私を止めた。
「俺がやる」
彼がやると言うので、ラーメンを入れる特大と普通の器を準備する。彼専用とペアで買った私専用の器も出す。
二つ並べると彼は自分の器に鍋に入った麺とスープを全て入れる。私は菜箸で彼の器から隣に移して、スープも入れた。
難なく二つ運ぶ彼のあとに続いて、お箸を二つ持ってリビングへと入った。
ソファーの前にあるテーブルにラーメンを二つ置くと、ドカッと床に座る夏樹の隣に腰を下ろした。
「さんきゅ、いただきます」
「はい、いただきます」
お箸を渡すと豪快に食べ始める彼に見惚れ、ラーメンが半分程になると、じっと見られている事に気がついた彼が、
「…どした?」
「あっ…ううん」
慌てて自分の前にある少しだけ冷めたラーメンを食べ始めた。


「そろそろ、決めたか?」
食事も終わり日付が変わりそうな時に、並んでテレビを見ていた私に彼の声が聞こえた。
「決めた…って、同棲の事?」
横を見ると、彼はじっと私を見下ろしていた。
「そうだ、もう…半年だろ」
身体の向きを変えた彼は、私の方に身体の正面を向けた。
「…半年…だね」
彼の言葉と同じ言葉を返すのが嫌だったのか、私の腕を取り引くと彼の腕の中へと収まった。
「夏くんっ」
驚いて私は顔を上げると、彼の真剣な眼差しと視線が絡まった。
「…香苗」
私の頬に手を添え親指の腹で撫でると、気持ちよさに目を細め頬を触る彼の手に触れた。
「まだ、付き合って半年だよ…早いと思うよ」
そう、彼は以前から私との同棲を申し出ていたのだ。だが、それを私はのらりくらりと躱し、返事を濁していた。
「香苗、そんなわけ…」
ない、と言う彼の口に人差し指で止めた。
「まだ、早い」
有無を言わせない香苗の顔に、夏樹は諦めて肩を落としたのだった。

なぜ、同棲に踏み込めないのか、それは彼からーー夏樹からちゃんと愛の告白をされていないからだ。
なぁなぁで付き合っても、明確な言葉にしない夏樹と居てもいつかきっと嫌になってしまうだろう。
ーーだって私は、ちゃんと言葉にしてほしいから
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