15 / 30
1章
15.美詠の作戦 ◆
しおりを挟む
美詠の操る女の子ミンちゃんと、拓斗の操る怪獣スーちゃんの戦い。
効率くよくスコアを稼ぐために必要な情報が巧妙に隠されているゲームだ。
ヒントは商品を販売する時に動くスコア比のゲージだけ。棒グラフの長さしか情報がないので、僅差だとどっちが勝っているのかよくわからない。
ミニゲームの制限時間が過ぎた。
結果は56対44で美詠の勝ち。二人で稼いだジュエルは640。拓斗のスコアが伸びただけ稼ぎも増えているが、スコア比も接近してきている。
「負けた」
拓斗はごろりと仰向けになった。脚を閉じ、腕を広げて手招きする。
「みよみちゃんいいよ。それとも俺起きようか?」
「そのままでいい……けど……」
美詠はためらった。この体勢の拓斗に抱きつくには、彼をまたいだ格好で体を沈めるしかない。
「どうしたの。早く」
「う、うん」
美詠は四つん這いになって歩み寄った。同じ四つん這いでの接近でも、昨日のイタズラとはまるで違う。口を開けて待つオオカミに近づくようなものだ。
拓斗の顔の脇に手をつき、脚を開いてまたがる。垂れたスカートの縁が拓斗の腰にしなだれかかった。
顔が向かい合う。
美詠はたじろいだ。下からヒリつくような存在感が立ち昇っている。胸にも腰にもそれが当たるのを感じた。抱きつきにきたはずなのに身体がこれ以上沈まない。
しかし半端なこの位置にあまりとどまることもできなかった。その気になればいつでも彼は、美詠の胸だろうと、お腹だろうと、下腹部だろうと触ることができる。
唇を当てる場所に迷いながら美詠は顔を近づけた。前髪の開いたおでこにキスをした。
「可愛いキスだなー」
見上げる目が笑っている。
美詠はプイッと顔をあげた。体も起こしてその場から引き上げた。
仕切り直して次のゲーム。
結果は50対50の同点になった。増えたジュエルは720で、美詠が一人でやったときの倍の稼ぎ。
しかし素直に喜べない。
「なんで同点なの」
「俺がうまくなったんだよ、四回目だし」
「私はもっと何回もやってやっと300超えられたのに」
「俺、やり方わかんないから最初にみよみちゃんの動きずっと見てたしさ」
「あーー、ずるいーー」
最初は手探りで苦労した美詠は口をへの字に曲げた。お手本のおかげで彼は楽に同じラインまで到達したのだ。
「そうしないと追いつけないじゃん。けど同点はどうするか決めてなかったな。みよみちゃんは勝ってないけど負けてもないから罰ゲームじゃなくていいや。俺にキス」
「わかった……」
さっきと同じ仰向けになった拓斗に美詠は四つん這いでまたがった。
またおでこにキスしてさっと逃げる心づもりだ。
しかし、そんなヒツジの心をオオカミの目は看破した。
「さっきも思ったけど、みよみちゃん俺に抱きついてないじゃん」
「え?」
「身体を合わせないとダメじゃん」
「え、え、でも……」
「ほら、こうやって」
「あ、だめぇ」
ふわっとからみついた腕に美詠は抱かれた。腕が美詠の身体を下へおろそうとしている。
「もっと身体を下げて。ゆっくりでいいから、もっと」
「ああん」
美詠は下へ引き寄せられた。身体は肘と膝の位置を変えながら下がって、すぐに拓斗と重なった。背中を抱く腕が二人の胸と腰を密着させている。
「みよみちゃん軽いなー」
「んんー……」
「すげードキドキしてんじゃん」
「たっくんだってしてるでしょ」
「バレたか。顔のどこでもキスしていいよ」
「どこでもって……」
動けないのだから口以外に選択肢がない。
くちゃくちゃになりかけた目を閉じて、美詠は笑う唇に唇を重ねた。
それは触れあう程度の重なりだったが、拓斗の手がうなじに上がって美詠に深い接触を強要した。唇は体温が混ざりあうほどの密着へと変わった。
口内の震えをごまかしたい美詠は必死になって吸いついた。くっつきあう粘膜の抵抗で唇こそ震えはしなかったが、生々しい温かさに口内の震えはおさまるどころか大きくなった。
美詠の腰を抱いていた手が位置をさげ、お尻を触った。大きな動きでなでだした。
美詠は唇をもがかせた。それを拓斗が舌で突き上げた。美詠の唇を割って、にゅるりと入った。
口を封じられた美詠は背中をくねらせる。これがかえって胸を苦しくさせた。とうとう頭を持ち上げて口を離した。唇の間から抜ける拓斗の舌が、なまめかしい感触を美詠に残した。
うなじから背中へ手が下りた。お尻をなでる手はそのまま残っている。
「うぅぅ……たっくん~~~」
泣き顔に近い赤い頬。
拓斗も頬を火照らせている。淫猥な目つきだ。上気しているのが息遣いからもわかる。
「みよみちゃん、もういつでも負けていいみたいな顔してんじゃん」
「……してない……してないから……」
「本当に? じゃあ俺から離れてみてよ」
「たっくんが手で押さえてるから無理だもん」
「ぜんぜん力いれてないのになー」
拓斗の手が両方とも離れた。しかし美詠は起き上がれなかった。
「みよみちゃん、もしかして裸んぼうにされたあとの罰ゲームいっぱいやられたいの?」
「……え、ちがっ」
「顔がもう俺に負けてるしさー。そうだよね、俺がやりたいんだから、みよみちゃんもやられたいよね」
「違う~、やだぁ、そんなのされるのやだぁ。負けないもん」
「は~、俺に負けたらみよみちゃん悔しいんだろうな。負け続けたうえにそんな罰ゲームされたみよみちゃん、どんな顔するんだろうな」
自身の勝利姿をしみじみと夢想する拓斗に美詠の意地が再燃した。
「うーーーっ! 負けないっ、負けないっ、負けないっ」
美詠は猛然と体を起こした。奥歯をきりりと噛んで気持ちを引き締めた。
「さー、勝負だ」
二人はコントローラーをにぎった。
うつ伏せの肩がくっついてすり合った。それはべつに離れなかった。
ミニゲームの画面が起動する。
美詠にとって不思議でならないのは、同点に追いつかれた先の一戦だ。
拓斗は注文を処理しきれていなかった。待たされすぎた客が何人も怒って帰ってしまっている。おまけに彼は盛り付け方も美詠に比べれば雑。
なのに評価が同じだったことに納得がいかない。
今回、美詠は作戦を立てた。
プレイ中の主な操作はフルーツのカットと盛り付けの二つ。しかしフルーツのカットはスコアゲージが動かないうえに、カットされたフルーツの在庫は拓斗と共通。つまり二人のうちのどちらかが自分の時間を割いて、スコアにならない材料を用意しなくてはならないのだ――自動調理器のボタンを押すだけではあるが。
美詠が考えたのは、唯一の協力要素ともいえるこの作業を彼になるべく押し付けること。「たっくんカットはお願いね」作戦だ。
「じゃあ始めるね」
「おー」
ミンちゃんのフルーツパーラー
―― START ――
ショップがオープンした。
6人のお客さんが入ってきて、ミンちゃんとスーちゃんのレジに3人ずつ並んだ。どちらのレジでも3人から注文が同時に出る。
注文はどれからこなしてもかまわない。ミンちゃんが一つこなすとさっそくスコアゲージが動いた。
お客さんが帰ると、すぐに新しいお客さんが入ってくるシステムだ。レジの周りには常に3人の注文が並んでいて減ることはない。
美詠は先に来店したお客さんを覚えている。お客さんを待たせすぎないように、ミンちゃんをてきぱき操作する。
6人目の注文を終えて隣に目をやると、スーちゃんのレジにはまだ開店時のお客さんが1人残っていた。待たされすぎて怒りマークが出ている。とうとう手ぶらで帰ってしまった。
あーあ。美詠は内心で笑う。
作戦も順調……というよりは、カット作業を押し付けるまでもなく、拓斗は常にバンバン切って材料を不足させない。お客さんの処理が間に合っていないにもかかわらずだ。
美詠はそのぶん盛り付けに集中できた。盛り付け下手のペナルティもないし、お客さんを怒らせることなくすべての注文を処理できた。完璧だった。
ゲーム終了。
結果は美詠48、拓斗52。
「なんで、なんで、なんでーー」
美詠は座布団におでこをすりつけた。
「みよみちゃん罰ゲームじゃーん」横から嬉々とした声がする。
美詠は悔しさを噛みつぶして座布団から顔をあげた。
「たっくぅん」
「んー?」
「もしかして……フルーツ切るのも点数に入る……?」
「入らないと思う」
「じゃあなんで私が負けたの」
「俺のほうが売ったから」
「うそだぁ」
タンタンタン。ぐずった足がマレットのように畳を叩きだした。
「売りかたを教えてあげようか?」と、笑いの見え隠れする親切な声がリズムにのった。
「いい。自分で頑張るから」と、タンタタン。
「そうかー。はい、罰ゲームだよ。立って」合図を送る手から軽い音。
「ううー……」
美詠は立った。
同じく立った拓斗に命じられる。
「足をそろえてきれいに立って。胸も張って」
「うん……」
「手は背中で組むこと」
「ええ?」
おずおずと背中に手をまわす。
それを、こうだと言わんばかりに拓斗は修正した。手を合わせるのではなく、手首のほうを合わせられた。
「ああっ」美詠は声をあげる。
「みよみちゃん、罰ゲームは罰なんだよ。だから手は縛られてると思って、こうやって組むこと。手は後ろって俺が言ったらいつもこうして」
「うん……わかった」
「あと返事はいつも“はい”ね」
「はぁい……」
「ダメ。ちゃんと“はい”って言うこと」
「はい」
「よし、スカート脱がすよ」
腰のホックがはずされ、ファスナーもおろされた。
スカートはやわらかなプリーツを揺らして足元にすとんと落ちた。
美詠に足を上げさせて抜き取ったスカートを拓斗は畳に広げている。
「恥ずかしいよお」
顔より先に身体が熱くなって美詠は訴えた。
「昨日あんなことしたのに、これだけでもう恥ずかしいの?」
振り向いた顔がにやけている。
「昨日は昨日だもん」
「そうかー。少しシャツを上げるよ」
拓斗はTシャツの裾を三回折り上げてショーツにかぶらないようにした。恥じらいをリセットさせた美詠に責めがいを感じている様子が見てとれる。
ショーツ姿で立つ美詠は見栄えがよく、拓斗の目は自身の想像以上に満足した。
「今日のパンツはリボンが可愛いね。最初は真っ白かと思ったけど、リボンとここが緑色だ」
パステルグリーンのリボンが良いアクセントになっている。
ウエスト側のステッチも同じパステルグリーン系の糸でジグザグに入っている。
ステッチに指を這わせていた拓斗は、リボンをつついて揺らしたのち、しゃがんでショーツの前に顔を置いた。今にも下腹部に顔をうずめそうな近さと目つきで眺めながら、手をウエストから脚ぐりへ移す。
「脚のほうは白だ」
脚ぐりのステッチは白い糸。
それを左右同時に指でなぞった。腰のほうから少しずつ、中央へ向けて指の間隔を狭めていく。
「見るだけじゃないの……」
クロッチへ迫る指先に美詠は緊張を隠せない。
「これぐらいは見るうちだよ」
拓斗はしれっと言った。
「エッチなとこがシワになってるじゃん」
「たっくんがお尻揉むから……。シワ直していい?」
「ダメ。後ろ向いて」
美詠は手首を組んだまま後ろを向いてお尻を見せた。
「ほんとだ、すごい食いこんでるね」の言葉に思わずまぶたを閉じる。
「みよみちゃん、脚を開いて」
「はい」
「もっと開いて。人の字くらい……よし、いいよ」
拓斗は下から見上げた。
開いた脚の間の後ろと前を交互に見比べる。
「女の子のパンツって股のところが厚くなっててエッチだな」
「エッチに見えるんだ」
「だってエロいところだけだいたい覆ってるじゃん。みよみちゃんの割れ目ってここだろ」
ショーツの一点を指がさした。
クロッチの前縁の外側だが、見えないはずの淫裂の開始地点をぴたりと言い当てている。
「ここから割れてるよね?」
「うん、そのへん……」
「みよみちゃんの割れ目は、ここから始まって、脚の間をずっといって――」
指が前から脚の間にもぐって後ろへ抜ける。
「――お尻の割れ目とくっついてるよね。お尻の割れ目はどこまでかな。ここかな」
つん。
正確な位置。
「きゃあ」
「みよみちゃん、びくびくしてる」
「あ、う」
「ちょっと触るよ。じっとしてて」
「はい」
「後ろからいこうかな。みよみちゃんのお尻の穴はここだろ」
つん。
今度も正確。指先が穴のごく近くまでお尻の割れ目に入っている。
彼の言葉から次とその次も予想した美詠は下唇を噛んでじっと耐える。
「膣はここ」
つん。
予想どおりの言葉と正確さ。
指がショーツに食いこんだ。
「エッチ豆はここ」
つん。
これもショーツに食いこんだ。
蕾から顔を出し始めている芯の位置から1ミリもズレていない。
「当たってる?」
「当たって……ます」
「三つとも?」
「はい」
「やったぜ。みよみちゃんもう俺に全部バレてるね」
拓斗は無邪気に頬を笑わせた。
正解の三か所を下から満足の目で見上げている。
「みよみちゃん、パンツにしみができてない?」
「ええっ!?」
「こら、動いちゃダメだろ。そうそう、そうやってじっとしてて」
「しみ……あるの?」
「おしっこじゃないよ、位置的に。小っちゃいしみだなー。もしかしてこれ愛液かな」
美詠は動揺で身体が震える寸前だった。
胸と手足を命じられたとおりに維持するだけで精いっぱいになった。
「そ、そこはいつも濡れてるもん。たっくんが指でつっつくからだもん」
「けどいつもはそんなには濡れてないって言ってたじゃん。みよみちゃん、エッチになっちゃったんだ?」
「…………」
「黙ってるなら黙ってるでいいけど。ふうん、そうか、恥ずかしくて、くやしい罰受けてんのに、エッチになっちゃったのか。パンツにしみ作っちゃうぐらい、みよみちゃんは愛液出しちゃったのか」
美詠は首を横に振った。ガクガクと膝が揺れそうになるのを必死にこらえる。
「違う、違うの~~」
「んー?」
「さっきキスしたから濡れちゃったの」
「そうなの?」
「……そ、それにっ」
「うん?」
「たっくんと一緒にいるだけで……私……濡れちゃうから……だよ……」
「マジかー。みよみちゃん可愛いね」
美詠は足首をつかまれた。
膝に拓斗のキスがついた。右と左にひとつずつ。
「ひゃああ」
脚がくの字に折れる。
「ちゃんと立って」太ももが叩かれた。
美詠は体勢を立て直した。拓斗がまた脚の間を覗いている。
「ああ、みよみちゃん。よく見たらショーツにしみなかった」
「えーー!?」
「凹んだところの陰だった。俺の見間違い」
「ええーー!」
見間違いなんてぜったいウソだと美詠は思った。だまされたのだ。だまされて、言わなくてもいいことを彼に告げてしまった。
「しみになってなくて良かったじゃん。もう見間違えないように食いこみを直してあげるよ。引っ張ればいいんだろ」
脚ぐりが右も左もつままれた。つまんだ指の先がショーツの中に入って、爪の背が秘唇にあたっている。
「ああん……」
美詠は身体の火照りに負けて、甘い声を出した。
クロッチが左右に引っ張られ、割れ目から布がはいずり出た。
食いこみをなおした指が次の場所へ移る。脚ぐりに指先をもぐらせたままでの場所移動。拓斗のつややかな爪の背が秘唇の肌をゆっくりすべった。
前から後ろまで、すべての食いこみが消えるまで、美詠は同じことを三か所でやられた。
「よし、罰ゲーム終わり。勝負の続きやろうか」
「うん……」
「畳じゃなくてテーブルでやろう」
「うん」
勝負の場はテーブルに移った。
グラスの残りを飲み干して拓斗は言う。
「そういえばハートマーク出してる客いるじゃん。あれボーナスキャラじゃないかな?」
「ボーナスキャラ?」
「スコアが多くなるキャラかもってこと。次ちょっと試してみるから何かわかったら教えるよ」
「うん、わかった」
「けど勝負は本気だぞ。そのほうがおもしろいし。みよみちゃんは次負けたらもっと恥ずかしいよ」
「うん、負けない」
「よし、いこう」
六回目のゲームが始まった。
効率くよくスコアを稼ぐために必要な情報が巧妙に隠されているゲームだ。
ヒントは商品を販売する時に動くスコア比のゲージだけ。棒グラフの長さしか情報がないので、僅差だとどっちが勝っているのかよくわからない。
ミニゲームの制限時間が過ぎた。
結果は56対44で美詠の勝ち。二人で稼いだジュエルは640。拓斗のスコアが伸びただけ稼ぎも増えているが、スコア比も接近してきている。
「負けた」
拓斗はごろりと仰向けになった。脚を閉じ、腕を広げて手招きする。
「みよみちゃんいいよ。それとも俺起きようか?」
「そのままでいい……けど……」
美詠はためらった。この体勢の拓斗に抱きつくには、彼をまたいだ格好で体を沈めるしかない。
「どうしたの。早く」
「う、うん」
美詠は四つん這いになって歩み寄った。同じ四つん這いでの接近でも、昨日のイタズラとはまるで違う。口を開けて待つオオカミに近づくようなものだ。
拓斗の顔の脇に手をつき、脚を開いてまたがる。垂れたスカートの縁が拓斗の腰にしなだれかかった。
顔が向かい合う。
美詠はたじろいだ。下からヒリつくような存在感が立ち昇っている。胸にも腰にもそれが当たるのを感じた。抱きつきにきたはずなのに身体がこれ以上沈まない。
しかし半端なこの位置にあまりとどまることもできなかった。その気になればいつでも彼は、美詠の胸だろうと、お腹だろうと、下腹部だろうと触ることができる。
唇を当てる場所に迷いながら美詠は顔を近づけた。前髪の開いたおでこにキスをした。
「可愛いキスだなー」
見上げる目が笑っている。
美詠はプイッと顔をあげた。体も起こしてその場から引き上げた。
仕切り直して次のゲーム。
結果は50対50の同点になった。増えたジュエルは720で、美詠が一人でやったときの倍の稼ぎ。
しかし素直に喜べない。
「なんで同点なの」
「俺がうまくなったんだよ、四回目だし」
「私はもっと何回もやってやっと300超えられたのに」
「俺、やり方わかんないから最初にみよみちゃんの動きずっと見てたしさ」
「あーー、ずるいーー」
最初は手探りで苦労した美詠は口をへの字に曲げた。お手本のおかげで彼は楽に同じラインまで到達したのだ。
「そうしないと追いつけないじゃん。けど同点はどうするか決めてなかったな。みよみちゃんは勝ってないけど負けてもないから罰ゲームじゃなくていいや。俺にキス」
「わかった……」
さっきと同じ仰向けになった拓斗に美詠は四つん這いでまたがった。
またおでこにキスしてさっと逃げる心づもりだ。
しかし、そんなヒツジの心をオオカミの目は看破した。
「さっきも思ったけど、みよみちゃん俺に抱きついてないじゃん」
「え?」
「身体を合わせないとダメじゃん」
「え、え、でも……」
「ほら、こうやって」
「あ、だめぇ」
ふわっとからみついた腕に美詠は抱かれた。腕が美詠の身体を下へおろそうとしている。
「もっと身体を下げて。ゆっくりでいいから、もっと」
「ああん」
美詠は下へ引き寄せられた。身体は肘と膝の位置を変えながら下がって、すぐに拓斗と重なった。背中を抱く腕が二人の胸と腰を密着させている。
「みよみちゃん軽いなー」
「んんー……」
「すげードキドキしてんじゃん」
「たっくんだってしてるでしょ」
「バレたか。顔のどこでもキスしていいよ」
「どこでもって……」
動けないのだから口以外に選択肢がない。
くちゃくちゃになりかけた目を閉じて、美詠は笑う唇に唇を重ねた。
それは触れあう程度の重なりだったが、拓斗の手がうなじに上がって美詠に深い接触を強要した。唇は体温が混ざりあうほどの密着へと変わった。
口内の震えをごまかしたい美詠は必死になって吸いついた。くっつきあう粘膜の抵抗で唇こそ震えはしなかったが、生々しい温かさに口内の震えはおさまるどころか大きくなった。
美詠の腰を抱いていた手が位置をさげ、お尻を触った。大きな動きでなでだした。
美詠は唇をもがかせた。それを拓斗が舌で突き上げた。美詠の唇を割って、にゅるりと入った。
口を封じられた美詠は背中をくねらせる。これがかえって胸を苦しくさせた。とうとう頭を持ち上げて口を離した。唇の間から抜ける拓斗の舌が、なまめかしい感触を美詠に残した。
うなじから背中へ手が下りた。お尻をなでる手はそのまま残っている。
「うぅぅ……たっくん~~~」
泣き顔に近い赤い頬。
拓斗も頬を火照らせている。淫猥な目つきだ。上気しているのが息遣いからもわかる。
「みよみちゃん、もういつでも負けていいみたいな顔してんじゃん」
「……してない……してないから……」
「本当に? じゃあ俺から離れてみてよ」
「たっくんが手で押さえてるから無理だもん」
「ぜんぜん力いれてないのになー」
拓斗の手が両方とも離れた。しかし美詠は起き上がれなかった。
「みよみちゃん、もしかして裸んぼうにされたあとの罰ゲームいっぱいやられたいの?」
「……え、ちがっ」
「顔がもう俺に負けてるしさー。そうだよね、俺がやりたいんだから、みよみちゃんもやられたいよね」
「違う~、やだぁ、そんなのされるのやだぁ。負けないもん」
「は~、俺に負けたらみよみちゃん悔しいんだろうな。負け続けたうえにそんな罰ゲームされたみよみちゃん、どんな顔するんだろうな」
自身の勝利姿をしみじみと夢想する拓斗に美詠の意地が再燃した。
「うーーーっ! 負けないっ、負けないっ、負けないっ」
美詠は猛然と体を起こした。奥歯をきりりと噛んで気持ちを引き締めた。
「さー、勝負だ」
二人はコントローラーをにぎった。
うつ伏せの肩がくっついてすり合った。それはべつに離れなかった。
ミニゲームの画面が起動する。
美詠にとって不思議でならないのは、同点に追いつかれた先の一戦だ。
拓斗は注文を処理しきれていなかった。待たされすぎた客が何人も怒って帰ってしまっている。おまけに彼は盛り付け方も美詠に比べれば雑。
なのに評価が同じだったことに納得がいかない。
今回、美詠は作戦を立てた。
プレイ中の主な操作はフルーツのカットと盛り付けの二つ。しかしフルーツのカットはスコアゲージが動かないうえに、カットされたフルーツの在庫は拓斗と共通。つまり二人のうちのどちらかが自分の時間を割いて、スコアにならない材料を用意しなくてはならないのだ――自動調理器のボタンを押すだけではあるが。
美詠が考えたのは、唯一の協力要素ともいえるこの作業を彼になるべく押し付けること。「たっくんカットはお願いね」作戦だ。
「じゃあ始めるね」
「おー」
ミンちゃんのフルーツパーラー
―― START ――
ショップがオープンした。
6人のお客さんが入ってきて、ミンちゃんとスーちゃんのレジに3人ずつ並んだ。どちらのレジでも3人から注文が同時に出る。
注文はどれからこなしてもかまわない。ミンちゃんが一つこなすとさっそくスコアゲージが動いた。
お客さんが帰ると、すぐに新しいお客さんが入ってくるシステムだ。レジの周りには常に3人の注文が並んでいて減ることはない。
美詠は先に来店したお客さんを覚えている。お客さんを待たせすぎないように、ミンちゃんをてきぱき操作する。
6人目の注文を終えて隣に目をやると、スーちゃんのレジにはまだ開店時のお客さんが1人残っていた。待たされすぎて怒りマークが出ている。とうとう手ぶらで帰ってしまった。
あーあ。美詠は内心で笑う。
作戦も順調……というよりは、カット作業を押し付けるまでもなく、拓斗は常にバンバン切って材料を不足させない。お客さんの処理が間に合っていないにもかかわらずだ。
美詠はそのぶん盛り付けに集中できた。盛り付け下手のペナルティもないし、お客さんを怒らせることなくすべての注文を処理できた。完璧だった。
ゲーム終了。
結果は美詠48、拓斗52。
「なんで、なんで、なんでーー」
美詠は座布団におでこをすりつけた。
「みよみちゃん罰ゲームじゃーん」横から嬉々とした声がする。
美詠は悔しさを噛みつぶして座布団から顔をあげた。
「たっくぅん」
「んー?」
「もしかして……フルーツ切るのも点数に入る……?」
「入らないと思う」
「じゃあなんで私が負けたの」
「俺のほうが売ったから」
「うそだぁ」
タンタンタン。ぐずった足がマレットのように畳を叩きだした。
「売りかたを教えてあげようか?」と、笑いの見え隠れする親切な声がリズムにのった。
「いい。自分で頑張るから」と、タンタタン。
「そうかー。はい、罰ゲームだよ。立って」合図を送る手から軽い音。
「ううー……」
美詠は立った。
同じく立った拓斗に命じられる。
「足をそろえてきれいに立って。胸も張って」
「うん……」
「手は背中で組むこと」
「ええ?」
おずおずと背中に手をまわす。
それを、こうだと言わんばかりに拓斗は修正した。手を合わせるのではなく、手首のほうを合わせられた。
「ああっ」美詠は声をあげる。
「みよみちゃん、罰ゲームは罰なんだよ。だから手は縛られてると思って、こうやって組むこと。手は後ろって俺が言ったらいつもこうして」
「うん……わかった」
「あと返事はいつも“はい”ね」
「はぁい……」
「ダメ。ちゃんと“はい”って言うこと」
「はい」
「よし、スカート脱がすよ」
腰のホックがはずされ、ファスナーもおろされた。
スカートはやわらかなプリーツを揺らして足元にすとんと落ちた。
美詠に足を上げさせて抜き取ったスカートを拓斗は畳に広げている。
「恥ずかしいよお」
顔より先に身体が熱くなって美詠は訴えた。
「昨日あんなことしたのに、これだけでもう恥ずかしいの?」
振り向いた顔がにやけている。
「昨日は昨日だもん」
「そうかー。少しシャツを上げるよ」
拓斗はTシャツの裾を三回折り上げてショーツにかぶらないようにした。恥じらいをリセットさせた美詠に責めがいを感じている様子が見てとれる。
ショーツ姿で立つ美詠は見栄えがよく、拓斗の目は自身の想像以上に満足した。
「今日のパンツはリボンが可愛いね。最初は真っ白かと思ったけど、リボンとここが緑色だ」
パステルグリーンのリボンが良いアクセントになっている。
ウエスト側のステッチも同じパステルグリーン系の糸でジグザグに入っている。
ステッチに指を這わせていた拓斗は、リボンをつついて揺らしたのち、しゃがんでショーツの前に顔を置いた。今にも下腹部に顔をうずめそうな近さと目つきで眺めながら、手をウエストから脚ぐりへ移す。
「脚のほうは白だ」
脚ぐりのステッチは白い糸。
それを左右同時に指でなぞった。腰のほうから少しずつ、中央へ向けて指の間隔を狭めていく。
「見るだけじゃないの……」
クロッチへ迫る指先に美詠は緊張を隠せない。
「これぐらいは見るうちだよ」
拓斗はしれっと言った。
「エッチなとこがシワになってるじゃん」
「たっくんがお尻揉むから……。シワ直していい?」
「ダメ。後ろ向いて」
美詠は手首を組んだまま後ろを向いてお尻を見せた。
「ほんとだ、すごい食いこんでるね」の言葉に思わずまぶたを閉じる。
「みよみちゃん、脚を開いて」
「はい」
「もっと開いて。人の字くらい……よし、いいよ」
拓斗は下から見上げた。
開いた脚の間の後ろと前を交互に見比べる。
「女の子のパンツって股のところが厚くなっててエッチだな」
「エッチに見えるんだ」
「だってエロいところだけだいたい覆ってるじゃん。みよみちゃんの割れ目ってここだろ」
ショーツの一点を指がさした。
クロッチの前縁の外側だが、見えないはずの淫裂の開始地点をぴたりと言い当てている。
「ここから割れてるよね?」
「うん、そのへん……」
「みよみちゃんの割れ目は、ここから始まって、脚の間をずっといって――」
指が前から脚の間にもぐって後ろへ抜ける。
「――お尻の割れ目とくっついてるよね。お尻の割れ目はどこまでかな。ここかな」
つん。
正確な位置。
「きゃあ」
「みよみちゃん、びくびくしてる」
「あ、う」
「ちょっと触るよ。じっとしてて」
「はい」
「後ろからいこうかな。みよみちゃんのお尻の穴はここだろ」
つん。
今度も正確。指先が穴のごく近くまでお尻の割れ目に入っている。
彼の言葉から次とその次も予想した美詠は下唇を噛んでじっと耐える。
「膣はここ」
つん。
予想どおりの言葉と正確さ。
指がショーツに食いこんだ。
「エッチ豆はここ」
つん。
これもショーツに食いこんだ。
蕾から顔を出し始めている芯の位置から1ミリもズレていない。
「当たってる?」
「当たって……ます」
「三つとも?」
「はい」
「やったぜ。みよみちゃんもう俺に全部バレてるね」
拓斗は無邪気に頬を笑わせた。
正解の三か所を下から満足の目で見上げている。
「みよみちゃん、パンツにしみができてない?」
「ええっ!?」
「こら、動いちゃダメだろ。そうそう、そうやってじっとしてて」
「しみ……あるの?」
「おしっこじゃないよ、位置的に。小っちゃいしみだなー。もしかしてこれ愛液かな」
美詠は動揺で身体が震える寸前だった。
胸と手足を命じられたとおりに維持するだけで精いっぱいになった。
「そ、そこはいつも濡れてるもん。たっくんが指でつっつくからだもん」
「けどいつもはそんなには濡れてないって言ってたじゃん。みよみちゃん、エッチになっちゃったんだ?」
「…………」
「黙ってるなら黙ってるでいいけど。ふうん、そうか、恥ずかしくて、くやしい罰受けてんのに、エッチになっちゃったのか。パンツにしみ作っちゃうぐらい、みよみちゃんは愛液出しちゃったのか」
美詠は首を横に振った。ガクガクと膝が揺れそうになるのを必死にこらえる。
「違う、違うの~~」
「んー?」
「さっきキスしたから濡れちゃったの」
「そうなの?」
「……そ、それにっ」
「うん?」
「たっくんと一緒にいるだけで……私……濡れちゃうから……だよ……」
「マジかー。みよみちゃん可愛いね」
美詠は足首をつかまれた。
膝に拓斗のキスがついた。右と左にひとつずつ。
「ひゃああ」
脚がくの字に折れる。
「ちゃんと立って」太ももが叩かれた。
美詠は体勢を立て直した。拓斗がまた脚の間を覗いている。
「ああ、みよみちゃん。よく見たらショーツにしみなかった」
「えーー!?」
「凹んだところの陰だった。俺の見間違い」
「ええーー!」
見間違いなんてぜったいウソだと美詠は思った。だまされたのだ。だまされて、言わなくてもいいことを彼に告げてしまった。
「しみになってなくて良かったじゃん。もう見間違えないように食いこみを直してあげるよ。引っ張ればいいんだろ」
脚ぐりが右も左もつままれた。つまんだ指の先がショーツの中に入って、爪の背が秘唇にあたっている。
「ああん……」
美詠は身体の火照りに負けて、甘い声を出した。
クロッチが左右に引っ張られ、割れ目から布がはいずり出た。
食いこみをなおした指が次の場所へ移る。脚ぐりに指先をもぐらせたままでの場所移動。拓斗のつややかな爪の背が秘唇の肌をゆっくりすべった。
前から後ろまで、すべての食いこみが消えるまで、美詠は同じことを三か所でやられた。
「よし、罰ゲーム終わり。勝負の続きやろうか」
「うん……」
「畳じゃなくてテーブルでやろう」
「うん」
勝負の場はテーブルに移った。
グラスの残りを飲み干して拓斗は言う。
「そういえばハートマーク出してる客いるじゃん。あれボーナスキャラじゃないかな?」
「ボーナスキャラ?」
「スコアが多くなるキャラかもってこと。次ちょっと試してみるから何かわかったら教えるよ」
「うん、わかった」
「けど勝負は本気だぞ。そのほうがおもしろいし。みよみちゃんは次負けたらもっと恥ずかしいよ」
「うん、負けない」
「よし、いこう」
六回目のゲームが始まった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる