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第2章 跪いて足をお舐め

#72 愛と性のファシズム⑬

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 しばらくの間、平穏な日々が続いた。
 
 トロルに引き抜かれたルビイの腕も、正一によってすぐに新たな義手に取り替えられた。

「神経ソケットさえ無事なら、大事には至らないのさ」
 
 1時間弱の取り付け作業の後、正一は言った。

「ただ、もう少し腕や足の着脱をしやすくしておいたほうがいいかもな。状況によっては、腕の代わりに直接武器を装着する時がくるかもしれない」

 あれ以来、王宮からも王妃からもお達しはなく、ルビイはひたすら訓練に励んだ。

 昼間は庭で武術と格闘の訓練を、夜は寝室でサト相手に性技の訓練を、といった具合である。

 特に後者は、その続行をサト自身が強く主張したのだった。

 マリウス相手に技を使う時が近い。

 だから、もっと感覚を磨くのだ、と。

 おかげでルビイは、2回に1回はインキュバスの血を引くサトを打ち負かせるようになっていた。

 20年前、魔王に犯されたあの時は処女だったのだから、そこから鑑みると長足の進歩である。

 20年の歳月が流れているといっても、あの後一度死に、我が子の肉体に転生したルビイにとっては、まだ実質的に数ヶ月しか経っていないのだ。

「これなら大丈夫です。どんな殿方でも、ルビイさまの前では赤子同然でしょう」

 ベッドの中でルビイに組み伏せられ、あられもなく絶頂の声を発した後、頬を赤らめてサトが言った。

「男などという生き物は、実に単純なもの。いざ性の奴隷にしてしまえば、どんなふうにでも操れます。マリウス皇子も例外ではないでしょう。いえ、サトの見立てでは、あの方はまだ童貞。潔癖症のお后、アグネスさまとの間にもいまだ性交渉はないと思われます。童貞に性の深遠な悦びを教えたら、その者はもう調教者の奴隷も同然と成り果てるに違いありません。ふふっ、楽しみではありませぬか、ルビイさま」

 マリウスのまっすぐなまなざしを思い出すと、後ろめたい気分に陥らずにはいられないルビイだったが、サトの言葉にも一理あった。

 手っ取り早く魔王討伐軍を立ち上げるには、まず討伐派の代表、ミネルヴァを動かすしかないからである。



 そうして、1週間が過ぎた。

 王妃の伝言を携えてマリウスが屋敷を訪れたのは、武闘会からちょうど1週間後の、屋敷の周囲の森に宵闇が迫る頃のことだった。





 

 
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