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26話 遭遇

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ついに傘のような盾が届いた。
こいつの名前はそうだな。umbrellaアンブレラにしよう。
単純に傘みたいだからという安直な名前だ。

"酔姫"と"umbrella"

二つ並べると中々に風情がある。
umbrellaはステンレス製の盾。
傘のような緩い角度の円錐形
スライムの酸程度は防いでくれると思うが、スライム騎士の剣を受けるには少し耐久に不安があるな。
それにしてもやはり重いな。
持てることは持てるがやはり重い。

だが準備はできた。
早速ダンジョンに向かいたい所だがその前にやる事がある。

中庭の軒下にお皿を置き、そこにキャットフードを入れておく事だ。
あの猫はどうやら俺の家の中庭に住み着いているみたいだ。
昨日も夕方くらいにエサを置いたら、ひょっこりと中庭から出てきてむしゃむしゃと食べていた。

だが、今日はすぐに来ないな。

「ここに置いといたからな!」

俺は中庭にいるだろう猫に一声かけて部屋に戻る。
後は勝手に食べるだろう。
ようやくダンジョン探索だ。

***

ダンジョンに入った俺は1階層、2階層をストレートで突破し、3階層に到達した。

早速高級レインコートを着てみたが、さすが高級だな。
特有のゴワゴワ感が無い。
試しに通常の黄スライムでレインコートの性能を確認したが、
結果は予想通り、完璧にスライム液からの麻痺を防いでくれた。

これで黄スライムは転がる素早いだけのスライムに成り下がり、驚くほど簡単に倒せてしまった。

そして再び俺は黄スライム騎士のいるボス部屋に来た。
リベンジ開始だ!

俺が入ると早速、黄スライム騎士はスライム液を放ってきた。
通常の黄スライムはしない攻撃だ。
俺は大きめに避けた後、地面に残った黄スライム液にポケットのゴミを投げ入れる。

するとゴミはシュッ~と音を立てて溶けて消えた。

やはりか。
飛び散るスライム液と発射してくるスライム液では特性が違うのではと思ったんだ。
 というのも2階層の赤スライムも放ってくる弾丸タイプのスライム液は爆発するが、ボディから飛び散る液やスライムボディ自身にその作用はなかった。
それは黄スライム騎士にも当てはまるのではと考えたのだ。
おそらく発射してくる黄スライム液は麻痺と溶解の複合液というのが俺の予想だ。
故に絶対避ける必要があるな。
あたればレインスーツが溶けて麻痺してしまう。

発射されるスライム液を確実に避けつつ、接近していく。
黄スライム騎士の攻撃がムチにシフトする。
念のためムチにもゴミを飛ばしたが溶ける事は無かった。

以前はムチ攻撃で悩まされたが、対策はある。
まず、ムチの先端がしなる前に【飛ぶ斬撃】でムチを弾く。
弾かれたムチからスライム液が弾ける。

ーーだが無問題モーマンタイ

傘みたいな盾"umbrella"で顔面をガードしながら更に懐へ近づく
スライム液は被ったが痺れは無い。

次は黄スライム騎士の手首を【飛ぶ斬撃】で切り裂く。
手首ごとムチがその場にボトッと落ちる。
こうなった場合、スライム騎士達は自らの身体を変形させて攻撃してくる。
だが形状変化にはタイムロスがある。

今、お前は無防備だ。

俺は【酔姫】を持つ手に力を込める。
縦切り、横切り、袈裟斬り、3連続の【飛ぶ斬撃】を連続で放つ
スキルは徐々にではなく、突然進化する。

"飛ぶ斬撃"も以前まではインターバルとまではいかないものの連続使用は出来なかった。しかし、今、この戦いの中で【飛ぶ斬撃】を3連続まで連続で使えるようになったのだ。

放たれた斬撃がスライム騎士を激しく切り裂く。

顔をumbrellaでガードしながら更に【移動】で回り込む。
斬撃は胴体を動き回る核には当たらなかったが、切り刻んだ事で核の動き回る範囲が狭まった。
これで核の位置は特定できた。

黄スライム騎士は体が千切れながらもスライムの特性を活かし、俺にスライム液を飛ばそうとしてくる。
ーーだが、遅い

再度【飛ぶ斬撃】を放ち、核は切り裂く。
黄色スライム騎士が形状を保てなくなり、その場に崩れる。

よし!倒せた!

ドロップアイテムはなんだろうか?
ワクワクするな
粒子化する黄スライム騎士を眺める。

ポトッと音を立てて落ちたのは、……タオル?なのか?
黄色のスライム素材のフェイスタオルのようなものと大きめな魔石がドロップされた。
うーん、相変わらず毎回謎なドロップアイテムだな。
帰ったら検証だな。

***

3階層のダンジョンボスを倒した俺は、そのまま4階層に向かう事にした。
4階層も今までの階層同様に広めの通路と大広場からなる巨大洞窟のダンジョンっほいな。
次は何色のスライムか?と色々予想しながら広場に向かう
一応、手前からゆっくりと警戒しながら進み、広場を覗くと

……

……

……

そこにはいた。

某人気RPGにて皆が大好きなあのスライムが…
銀色のつるりとした輝きを放ち、倒した者に莫大な経験値を与えるボーナス的な存在
圧倒的な守備力と素早さを持つ有名スライム

メタルスラ●ム!

全く同じ名前をつけるのはダメだよな。
だから銀スライムと呼ぼう。
広場の真ん中に銀スライムが佇んでいたのだ。

俺は驚きのあまり動けなかった。

だが向こうは違った。銀スライムは俺に気づいたのか、微かに震えると消えた。
いや、少しだけ見えた。消えるくらい早い速度で奥の広間に逃げていったのだ。
マジか……

早すぎる…この速度はガチのメタルなスライムじゃないか…
って事は倒せばレベルアップできるのか!?
ヤバいな!めっちゃ興奮する。
俺の心臓は張り裂けそうな程に強くビートを刻んでいた。

この階層はもしかしてと思い、次のフロアに行くとそこに居たのは銀スライムでは無かった。
なんか表面に薄く藻?コケのようなものが生えている緑色のスライムがいた。
なんかマリモみたいだ。
こいつは緑スライムだな。

おそらく緑スライムがこの階層の通常モンスターなのだろう。
やはり出現率も銀スライムは本家並みというわけか……
残念すぎる……だが気持ちを切り替えよう

俺はレインコートを身につけ、黄スライム対策仕様で広場に入った。
早速俺に気づいた緑スライムは、体をフルフルと振るわせ、緑色の液体を放ってきた。

俺は【移動】を3連続で使用し、大きく避け、緑色の液体が飛んでいった先を見る。

緑色の液体は粘着力があるようで壁にベチャッと張り付いた。
壁自体に変化は無いが、緑の液体はぐつぐつと沸騰している。

これは毒で間違い無いな。
毒はないよと言われても絶対に触りたくない。
問題はこの緑液をレインコートは防げるか?また緑スライム自身のスライム液も黄スライム同様に何か効果があるのか?

これは今回も検証が必要だな。
とりあえず俺は緑スライムの動きをしっかり観察することにした。
移動手段は転がると跳躍に2種類
距離が離れている場合は転がり向かってくる。そして、距離が近づくと跳躍して一気に距離を縮めようとしてくる。
また攻撃手段は通常スライム同様に体当たりと液体を吐いてくる攻撃。
動きについては特段気をつける事はないな。
それよりも表面のコケで核が見えない。
これでは核がどこにあるか分からない。

だがやりようはある。

離れすぎると緑液を放たれる為、数メートルの距離を保ちつつ、一気に【移動】で接近、緑液の跳ね返りに対応できるようにumbrellaを構え、【飛ぶ斬撃】を放つ。
すぐに【移動】で距離をとり、スライム液の跳ね返りに供える。

放った斬撃は緑スライムを真っ二つに切り裂く。
断面から核の位置が見えた。

スライム液の跳ね返りが落ち着いた瞬間を狙い、再び【移動】で接近。2連続の【飛ぶ斬撃】を飛ばし、核を破壊した。
緑スライムの身体が粒子化し、その場に緑の魔石が落ちる。

倒せた。案外いけるもんだな。
結局、緑液の正体は分からないままだが一旦帰るとしよう。


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