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外伝 王太子殿下と男装ヒロイン  

第1話 父上、求婚の許可を下さい。

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 「父上、欲しい女の子がいるんです」

 俺はそう言って執務室で書類に向かう父上に言った。欲しいっていうと何かアレだけど、ようは結婚したい相手って意味だ。まぁ、当人にはまだ求婚してない。
 そもそも、不利な状況だから求婚しても受けてくれるか自身も無い。けれど、俺は彼女を妻にしたいと思い、そう出来るように動く事に決めたから――……。
 まずは、父上に求婚の許可を貰う事にしたんだよね。王太子の婚姻は、まぁ、いい加減な事は出来ないので。

 「誰だ?――血が求めた相手なのか?」

 父上が、チラリを目線を上げて俺を見た。
 血が求めた――と言うのは、自分の中の竜の血が欲した番いかどうかって意味だ。俺はだから頷いた。初めて彼女と目が合った時のその感情を俺はまだ色鮮やかに覚えているから――。
 俺みたいに峻烈に出会った瞬間に自覚する者もいれば、父上のように気が付いたら執着していたという場合もあるから、番いの自覚は人様々だ。
 しかし番いだからと言って、相手にこの気持ちを無理矢理押し付けたりは出来ない。俺は竜の血を引いてるだけで人であるし、彼女は竜の事など知らないのだから。

 だから、彼女に振られたら俺は一生独身だと思う。

 血が求めた相手だと告げたから、父上は少し嬉しそうに「そうか」と言った。お前もそんな年になったんだなぁと感慨深げだ。
 今年で16歳になった俺だけれど、他の国の王太子と比べれば婚約者がいない異常な状況。それは先祖返りの俺や弟妹がその辺自由にさせて貰っているからに他ならない。
 婚約を結んでも、番いが後から出て来たら意味無くなるからね。
 俺は、大きく深呼吸をした。今からちゃんと言わないといけない事がある――それは――……
 
 「――相手は、父上の続きのゲームのヒロインです……――」

 「――はぁっ?!」

 そう言った瞬間――父上は叫ぶようにそう言うと、手にしていた万年筆をブチ折った。
 続きのゲーム……。俺の父上は転生者と言うヤツだ。それを聞いたのは、大分前だけれど母上や弟妹は知らないらしい。知った切っ掛けは、父上がこの世界には無い言葉をポロリと零したから。
 それで、俺の想い人は父上が処刑される『ゲーム』の続編、そのヒロインらしいのだ。

 「ちょっと待ちなさい――ヒロインって生き物をちゃんと分かって言ってるのかな??」

 頭を抱えた父上に、そう聞かれて俺は頷いた。
 ヒロイン――それは時に魔女と呼ばれる転生者の事。『災厄の魔女』『誘惑の魔女』が良く知られているけれど、得てして自分を中心にして世界が回っていると思い込む傍迷惑な人種が多い。
 自分勝手で自己中心的なトラブルメーカー……それがヒロインというイキモノに対しての俺の認識だ。

 「……魅了魔法?」

 魅了されたのか??と心配そうな顔をして言う父上。
 俺としては、寧ろその方が嬉しかったくらいだけれど、彼女はそう言うのがキライなタイプだ。

 「まさか。俺は正気だしシラフですよ?」

 「じゃあ、何故と聞いても??」

 俺は、父上にそう問われ、彼女との出会いを語る事にした――。
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 外伝はじめました!
 『王太子殿下と男装ヒロイン』『変わり者の王子と竜』『鱗姫と狂犬の騎士』を各々4話程度で完結を目指しています。
 先に連載を開始した作品の方を優先的に書いて行くので、こちらの更新は不定期になってしまいますが、気長にお付き合い頂けたら嬉しいです。

 宜しくお願い致しますm(_ _)m
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