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「お~ま~え~~~~~~!!!」
魔対とは別フロアの庁内カフェ。
その窓際のスタンディングスペースで……レイラは、コーヒーの入ったカップを握りつぶした。
それから、鬼の形相で俺につかみかかってきて。
「よくも! よくも! 私の局長と~~~~!」
「いや、お前の局長じゃねぇし。あ、違う、立場的には確かにお前の局長だけど」
「魔力を四割も失くしといて、言葉遊びか!? さすが、同期の想い人を寝取った男の余裕は半端ないな!?」
「バッ、声がでかい! お前は1年目に告白してフラれて、もうそっと見守るだけにしたって言ってただろ!」
慌ててレイラの口を手で塞ぐ。そして周囲を確認。よかった。知っている顔は見当たらない。
そんな俺を見て、ようやくレイラも冷静さを取り戻したようで。
「はぁ……それにしても……まさか局長が略奪なんて……あのいかがわしい噂は本当だったとか……マジか」
深いため息をついて、コーヒーでびしょびしょになった手を拭くレイラ。
同じくコーヒーが滴るテーブルはシカト。仕方なく、俺が処理する。半裸を見せつけてしまった詫びだ。
「俺も信じたくない。でも、それ以外に心当たりがないんだ」
「でもありえなくない? あれだけ優しくて部下想いの人が……部下であり彼氏であるフレンから、略奪なんてする?」
『彼氏』……ギクリとする言葉だ。
このまま流してしまいたいけれど、現状をきちんと理解してもらう為には、否定が必須。
「それがその……付き合ってはいないんだ。なんていうか、それだけの関係で」
「は? セフ〇ってこと? なんで? 告白した時、セ〇レならいいよ、とか言われたの?」
「いや、ええと……実は、告白自体、まだしてなくて」
俺の返事を聞くやいなや、崩壊する美貌。
「なにやってんのあんた!? チキンが過ぎるわ!」
「ちが、俺だって、言おうと思ってたんだよ!」
「お母さんに宿題やりなさいって言われた子供か! 今やろうと思ってたんだよ~! って!? 情けな! んな中途半端な関係をダラダラ続けてるから、魔力を奪われても気付かないんだっつーの!」
同期の容赦ない言葉が、グサグサと刺さる。
「さっきはありえないとか言ってたのに……局長が魔力を奪った事は、もう疑わないんだな……」
「局長の事は信じたいわよ。でも、物事には優先順位がある。今は愛する人の潔白より、チキンなパンイチ同期の命! 魔力を八割失くしたら、命に関わるんだから」
「レイラ……」
じーん……と心が震えようとするのを、端々の侮辱的な言葉が妨げる。もう、ちゃんと服着てるんだけど。
「とりあえず、フレンはなる早で病院行っとけ。もしかしたら、魔力が減るタイプの病気の可能性だってあるわけだし」
「そうだな、どこかで時間を見つけて……」
「私は、なんとかして局長の健診結果を手に入れる。本当にあんたから奪っているとしたら……局長の魔力量は増加してるはずだもん」
「なんとかって……んな超個人情報、無理だろ」
「何言ってんの! ティリアンがいるでしょう?」
そう言われて頭の中に浮かぶ、爽やかな王子様スマイル。
「ティリアンは監査局の主席監察官……警察職員の不正を調査するっていう名目で、動いてもらえばいいのよ」
「ややや、待て待て、それじゃあティリアンにも、俺と局長の事を話さなきゃいけなくなるじゃねぇか」
「それが何よ? 命がかかわってるんだから、恥ずかしいとか言ってる場合じゃないでしょ」
恥ずかしい? 違う。いやそれもあるけど。俺がティリアンに抱いている感情は、もっと複雑で、面倒くさくて。
「無理だっ。なんとか他に、適当な理由をつけられないか?」
「適当って……たとえば、"最近局長は実戦任務続きで、魔力を過剰消費している可能性がある。本人は大丈夫だって誤魔化してるけど、心配だからこっそり調べてくれない?" とか?」
「天才」
お世辞じゃない。心からの賛辞。やっぱりこいつは、
単なる局長バカじゃない。現実社会で活用できる、女性特有の頭の回転の速さがある。
「オッケー! じゃ、さっそくメッセージ入れとくわ」
事態が切迫していると主張しておきながら、慎重さに乏しいノリでスマホを操作するレイラに、少々慌ててしまう。
「ちょ、もーちょい考えてから……っ。考えてみれば、ティリアンはいい奴だけど、同期のためとはいえ、簡単に職権乱用するタイプじゃないぞ」
「そんなんわかってるっつうの。余計な心配せず、私に任せて……あ、返信きた。はや。さすがね。ほら、オッケーだって」
「ええ!? すご……何て言って頼んだんだよ?」
「ふふ。あいつはね、優しそうに見えて、情だけでは流されない、シビアなビジネスマンなのよ。なにせ一流経営者の息子だもん。そんな未来のキャンベル伯爵を落とすためには……ギブアンドテイクしかないっしょ」
驚く俺を嘲るように、厚い唇をにぃっと上げるレイラ。
その角度が、なんだか妙にいやらしくて……嫌な予感しかしない。それが、率直な感想だった。
魔対とは別フロアの庁内カフェ。
その窓際のスタンディングスペースで……レイラは、コーヒーの入ったカップを握りつぶした。
それから、鬼の形相で俺につかみかかってきて。
「よくも! よくも! 私の局長と~~~~!」
「いや、お前の局長じゃねぇし。あ、違う、立場的には確かにお前の局長だけど」
「魔力を四割も失くしといて、言葉遊びか!? さすが、同期の想い人を寝取った男の余裕は半端ないな!?」
「バッ、声がでかい! お前は1年目に告白してフラれて、もうそっと見守るだけにしたって言ってただろ!」
慌ててレイラの口を手で塞ぐ。そして周囲を確認。よかった。知っている顔は見当たらない。
そんな俺を見て、ようやくレイラも冷静さを取り戻したようで。
「はぁ……それにしても……まさか局長が略奪なんて……あのいかがわしい噂は本当だったとか……マジか」
深いため息をついて、コーヒーでびしょびしょになった手を拭くレイラ。
同じくコーヒーが滴るテーブルはシカト。仕方なく、俺が処理する。半裸を見せつけてしまった詫びだ。
「俺も信じたくない。でも、それ以外に心当たりがないんだ」
「でもありえなくない? あれだけ優しくて部下想いの人が……部下であり彼氏であるフレンから、略奪なんてする?」
『彼氏』……ギクリとする言葉だ。
このまま流してしまいたいけれど、現状をきちんと理解してもらう為には、否定が必須。
「それがその……付き合ってはいないんだ。なんていうか、それだけの関係で」
「は? セフ〇ってこと? なんで? 告白した時、セ〇レならいいよ、とか言われたの?」
「いや、ええと……実は、告白自体、まだしてなくて」
俺の返事を聞くやいなや、崩壊する美貌。
「なにやってんのあんた!? チキンが過ぎるわ!」
「ちが、俺だって、言おうと思ってたんだよ!」
「お母さんに宿題やりなさいって言われた子供か! 今やろうと思ってたんだよ~! って!? 情けな! んな中途半端な関係をダラダラ続けてるから、魔力を奪われても気付かないんだっつーの!」
同期の容赦ない言葉が、グサグサと刺さる。
「さっきはありえないとか言ってたのに……局長が魔力を奪った事は、もう疑わないんだな……」
「局長の事は信じたいわよ。でも、物事には優先順位がある。今は愛する人の潔白より、チキンなパンイチ同期の命! 魔力を八割失くしたら、命に関わるんだから」
「レイラ……」
じーん……と心が震えようとするのを、端々の侮辱的な言葉が妨げる。もう、ちゃんと服着てるんだけど。
「とりあえず、フレンはなる早で病院行っとけ。もしかしたら、魔力が減るタイプの病気の可能性だってあるわけだし」
「そうだな、どこかで時間を見つけて……」
「私は、なんとかして局長の健診結果を手に入れる。本当にあんたから奪っているとしたら……局長の魔力量は増加してるはずだもん」
「なんとかって……んな超個人情報、無理だろ」
「何言ってんの! ティリアンがいるでしょう?」
そう言われて頭の中に浮かぶ、爽やかな王子様スマイル。
「ティリアンは監査局の主席監察官……警察職員の不正を調査するっていう名目で、動いてもらえばいいのよ」
「ややや、待て待て、それじゃあティリアンにも、俺と局長の事を話さなきゃいけなくなるじゃねぇか」
「それが何よ? 命がかかわってるんだから、恥ずかしいとか言ってる場合じゃないでしょ」
恥ずかしい? 違う。いやそれもあるけど。俺がティリアンに抱いている感情は、もっと複雑で、面倒くさくて。
「無理だっ。なんとか他に、適当な理由をつけられないか?」
「適当って……たとえば、"最近局長は実戦任務続きで、魔力を過剰消費している可能性がある。本人は大丈夫だって誤魔化してるけど、心配だからこっそり調べてくれない?" とか?」
「天才」
お世辞じゃない。心からの賛辞。やっぱりこいつは、
単なる局長バカじゃない。現実社会で活用できる、女性特有の頭の回転の速さがある。
「オッケー! じゃ、さっそくメッセージ入れとくわ」
事態が切迫していると主張しておきながら、慎重さに乏しいノリでスマホを操作するレイラに、少々慌ててしまう。
「ちょ、もーちょい考えてから……っ。考えてみれば、ティリアンはいい奴だけど、同期のためとはいえ、簡単に職権乱用するタイプじゃないぞ」
「そんなんわかってるっつうの。余計な心配せず、私に任せて……あ、返信きた。はや。さすがね。ほら、オッケーだって」
「ええ!? すご……何て言って頼んだんだよ?」
「ふふ。あいつはね、優しそうに見えて、情だけでは流されない、シビアなビジネスマンなのよ。なにせ一流経営者の息子だもん。そんな未来のキャンベル伯爵を落とすためには……ギブアンドテイクしかないっしょ」
驚く俺を嘲るように、厚い唇をにぃっと上げるレイラ。
その角度が、なんだか妙にいやらしくて……嫌な予感しかしない。それが、率直な感想だった。
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