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オフショルダーの、ロングドレス。
グラデーションがかった紫色のシフォン生地には、細かなラメがちりばめられていて。まるで、星雲を抱く小宇宙のよう。
サラサラの髪の毛は後頭部でまとめられ、そのふもとには真っ白なうなじ。
いつもより濃い目、太目にひかれたアイラインは、目尻の所で挑発的に跳ね上がっていて……これは、やばい。
「……レン。フレンっ。聞いていますか?」
「っは……! あ、え、すいませんっ」
完全に見惚れていて、聞いてませんでした。なんて言えるはずもない俺は、とりあえず平謝り。
売春婦……としてダンスの輪に加わっていた俺の上司は、華麗なステップを踏みながらため息を吐いた。
「どうしてあなたがこんな所にいるんです」
「俺達はその……というか、局長こそこんな所でなにを?」
「仕事に決まっているでしょう? 男あさりに来ているとでも思いましたか? 最近は、胸鎖乳突筋の美しい部下が、ちっとも相手をしてくれないから?」
ギクリ。思わず、絡めた手に力が入ってしまう。
「なに言ってるんですか。俺は別に」
「とぼけるの下手すぎ選手権があったら優勝ですね。あなたはここ数日、私を避けている。仕事中もよそよそしいし、誘っても予定があるからと断って……気付いていないとでも思いましたか?」
おっしゃる通り……魔力の減少が発覚したあの日……局長からの略奪を疑ったあの日以来、俺は局長を避けている。気付かれている事も、気付いていた。でも……
「どうでもいいでしょうそんな事。俺に避けられようが、何されようが、局長はノーダメージの筈です」
そう思ったから、避け続けた。自分の魔力を……心を、守る為に。
「私が何か気に障る事をしましたか? きちんと言ってくれなければわからな」
言い終えるのを待たずに変わる、曲調。
一つ横にずれて、踊る相手を変えて下さいという、合図だ。
「交代の時間なんで……」
「私が嫌になったんですか? フレン……っ」
振り払うようにして、絡めた手をほどいた。名前を呼ばれても、返事もせず。
「はじめまして~。私、大抵のプレイはNG出さないですよ? 50Mでどうです?」
次のダンスパートナーの言葉が、右から左に抜けていく。
見たら負け。見たら負け。
そう自分に言い聞かせているのに……つい目で追ってしまうのは、流れて行った、小宇宙。
そして局長もまた、他の男とダンスをしながら、俺を見つめていた。
その表情は、明るい曲調に似合わず、とても悲し気。
嫌になったんじゃない。なるわけない。なれないから、辛いのに。
本当は、避けるなんてださいマネをせずに、聞きたいんだ。
あなたは俺から魔力を奪っていたんですか。
そのために俺に近付いたんですか。
あなたにとって、俺は一体何――
「あの……あなた、前にどこかでお会いした事ないです?」
「……へ!?」
ハッと我に返り、視線を目の前の女性に向ける。そこにいたのは、あのバーテン女性。今回が俺が吊り上げなければならない、ターゲット。
いつの間にか再び曲が代わり、ダンスパートナーが交代していたのだ。
「あ、そ、や……っ」
まずい。やっちまった。
局長に気を取られて、かんっぜんに彼女の事を忘れていた。どうしよう、微塵も見つめていない。『君にロックオンしてるよ』という意志を、全くアピールできていない。つまり、ゼロからの交渉スタート。
これは……控えめに言って、大ピンチ。
なんて、思っていたのに。
「あ! この前バーに来てくれたお客様だ! 嬉しい! 素敵な人だなぁって思ってたんですよ!」
「は……? あ、そ、そうなんですか……」
青天の霹靂。真っ黒な曇り空に、一筋の光が射した。
「ふふ……お客様、私のタイプだからサービスしちゃいます。お店への口止め料もあるし……10Mで、どうですか?」
グラデーションがかった紫色のシフォン生地には、細かなラメがちりばめられていて。まるで、星雲を抱く小宇宙のよう。
サラサラの髪の毛は後頭部でまとめられ、そのふもとには真っ白なうなじ。
いつもより濃い目、太目にひかれたアイラインは、目尻の所で挑発的に跳ね上がっていて……これは、やばい。
「……レン。フレンっ。聞いていますか?」
「っは……! あ、え、すいませんっ」
完全に見惚れていて、聞いてませんでした。なんて言えるはずもない俺は、とりあえず平謝り。
売春婦……としてダンスの輪に加わっていた俺の上司は、華麗なステップを踏みながらため息を吐いた。
「どうしてあなたがこんな所にいるんです」
「俺達はその……というか、局長こそこんな所でなにを?」
「仕事に決まっているでしょう? 男あさりに来ているとでも思いましたか? 最近は、胸鎖乳突筋の美しい部下が、ちっとも相手をしてくれないから?」
ギクリ。思わず、絡めた手に力が入ってしまう。
「なに言ってるんですか。俺は別に」
「とぼけるの下手すぎ選手権があったら優勝ですね。あなたはここ数日、私を避けている。仕事中もよそよそしいし、誘っても予定があるからと断って……気付いていないとでも思いましたか?」
おっしゃる通り……魔力の減少が発覚したあの日……局長からの略奪を疑ったあの日以来、俺は局長を避けている。気付かれている事も、気付いていた。でも……
「どうでもいいでしょうそんな事。俺に避けられようが、何されようが、局長はノーダメージの筈です」
そう思ったから、避け続けた。自分の魔力を……心を、守る為に。
「私が何か気に障る事をしましたか? きちんと言ってくれなければわからな」
言い終えるのを待たずに変わる、曲調。
一つ横にずれて、踊る相手を変えて下さいという、合図だ。
「交代の時間なんで……」
「私が嫌になったんですか? フレン……っ」
振り払うようにして、絡めた手をほどいた。名前を呼ばれても、返事もせず。
「はじめまして~。私、大抵のプレイはNG出さないですよ? 50Mでどうです?」
次のダンスパートナーの言葉が、右から左に抜けていく。
見たら負け。見たら負け。
そう自分に言い聞かせているのに……つい目で追ってしまうのは、流れて行った、小宇宙。
そして局長もまた、他の男とダンスをしながら、俺を見つめていた。
その表情は、明るい曲調に似合わず、とても悲し気。
嫌になったんじゃない。なるわけない。なれないから、辛いのに。
本当は、避けるなんてださいマネをせずに、聞きたいんだ。
あなたは俺から魔力を奪っていたんですか。
そのために俺に近付いたんですか。
あなたにとって、俺は一体何――
「あの……あなた、前にどこかでお会いした事ないです?」
「……へ!?」
ハッと我に返り、視線を目の前の女性に向ける。そこにいたのは、あのバーテン女性。今回が俺が吊り上げなければならない、ターゲット。
いつの間にか再び曲が代わり、ダンスパートナーが交代していたのだ。
「あ、そ、や……っ」
まずい。やっちまった。
局長に気を取られて、かんっぜんに彼女の事を忘れていた。どうしよう、微塵も見つめていない。『君にロックオンしてるよ』という意志を、全くアピールできていない。つまり、ゼロからの交渉スタート。
これは……控えめに言って、大ピンチ。
なんて、思っていたのに。
「あ! この前バーに来てくれたお客様だ! 嬉しい! 素敵な人だなぁって思ってたんですよ!」
「は……? あ、そ、そうなんですか……」
青天の霹靂。真っ黒な曇り空に、一筋の光が射した。
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