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「あ……雪……」
病院の救急出口からこっそりと抜け出して。タクシー乗り場で一人、待っていると……暗い空を舞う白に、気が付いた。
「どうりで冷えるわけですね……」
震える肩を、抱きしめるようにさする。気が付いた時には病院だったけれど……どうやらあの補佐役は、私のコートまでは救急車に乗せてくれなかったようで。
『わ~……クロエちゃんと見る、初めての雪。嬉しいです』
冷え切った耳の奥で響く、優しい声。
「んー……まずいですね」
『後悔? した事無いです。私はクロエちゃんを産んだ時、ああ、私はこの子に会う為に生まれてきたんだなぁって、思ったので』
次から次へと。切ないほどに温かな言葉がこだまして……涙腺を刺激する。
『だから、ぜ~んぜん気にしないでください。あなたのためなら、魔力なんて惜しくないです』
「あ……ダメ。本当に……泣いちゃダメです、泣いちゃだめです……」
皆が穏やかな笑顔に戻ったのを確認して、こっそり抜け出て来てしまった。
そのうち、私を探しに来るかもしれない。その時に私が泣いていたら……また心配をかけてしまう。
フレンもカイも、アリシアさんも、大変な状況で。
レイラとティリアンは、忙しい中駆け付けてくれて。
その上、上司である私が、これ以上心配をかけるわけにはいかない。
「ひっこめひっこめ……」
目を全開にして、手の平でパタパタとあおぐ。昔、泣きたくなったらこうしなさいと、教わった方法。
『泣きたくなったらね、こうするんです。そうすると……目が乾いて、もっと涙が出て来るので! ふふ……泣きたい時はね、泣けばいいんですよ』
「あっ……間違えました……っ」
「何してるんですか?」
ハッとして、仰ぐ手を止めたタイミングで……突然聞こえて来た、よく知っている声。
我ながら珍しく、ちょっと跳ね上がりそうな程に、驚いてしまう。
「え……フレン? どうして」
隣を見ると、そこにいたのは私の補佐役。
「どうしてはこっちの台詞ですよっ。いつの間に……一人で帰るつもりだったんですか? まったく……倒れた後に、こんな薄着で……」
白い息を荒く吐きながら、ジャケットを脱ぎ、私の肩にかけてくれる。どうやら……彼は、自分のコートも持たず、救急車に乗り込んだようだ。
「今日は流石にタクシーですか? 送って行きます」
「……いい、ですよ。流石のタクシーなので、一人で帰れます。厄介な事に雪が降ってるみたいですし……交通事情が大変になる前に、フレンも帰って下さい」
精一杯強がって、気を遣って、そう言ってみたのだけれど。
「雪? ああ……別に厄介じゃないでしょう。俺は……なんか嬉しいです。局長と初めて一緒に見る……雪……」
私の補佐役はそう言って、空を仰いだ。
舞い踊る粉雪を見つめながら……冷たい宙に白い吐息を溶かす……綺麗な横顔。
それを瞬きもせずに見つめていたら……私の中で、何かが決壊して。
「あ、すみません、局長は体調不良なのに、嬉しいとか不謹慎」
「も……ダメです」
「え!?」
私は、泣いた。
優しい補佐役の胸に、タックルせんばかりの勢いで飛び込んで……泣いた。
「局長? え? なんで? どうしました?」
戸惑いの声をあげる補佐役を無視して、泣き続けた。
雪が降る程に凍える夜でも……この場所にいれば、心は凍り付いたりしない。そう思って。
病院の救急出口からこっそりと抜け出して。タクシー乗り場で一人、待っていると……暗い空を舞う白に、気が付いた。
「どうりで冷えるわけですね……」
震える肩を、抱きしめるようにさする。気が付いた時には病院だったけれど……どうやらあの補佐役は、私のコートまでは救急車に乗せてくれなかったようで。
『わ~……クロエちゃんと見る、初めての雪。嬉しいです』
冷え切った耳の奥で響く、優しい声。
「んー……まずいですね」
『後悔? した事無いです。私はクロエちゃんを産んだ時、ああ、私はこの子に会う為に生まれてきたんだなぁって、思ったので』
次から次へと。切ないほどに温かな言葉がこだまして……涙腺を刺激する。
『だから、ぜ~んぜん気にしないでください。あなたのためなら、魔力なんて惜しくないです』
「あ……ダメ。本当に……泣いちゃダメです、泣いちゃだめです……」
皆が穏やかな笑顔に戻ったのを確認して、こっそり抜け出て来てしまった。
そのうち、私を探しに来るかもしれない。その時に私が泣いていたら……また心配をかけてしまう。
フレンもカイも、アリシアさんも、大変な状況で。
レイラとティリアンは、忙しい中駆け付けてくれて。
その上、上司である私が、これ以上心配をかけるわけにはいかない。
「ひっこめひっこめ……」
目を全開にして、手の平でパタパタとあおぐ。昔、泣きたくなったらこうしなさいと、教わった方法。
『泣きたくなったらね、こうするんです。そうすると……目が乾いて、もっと涙が出て来るので! ふふ……泣きたい時はね、泣けばいいんですよ』
「あっ……間違えました……っ」
「何してるんですか?」
ハッとして、仰ぐ手を止めたタイミングで……突然聞こえて来た、よく知っている声。
我ながら珍しく、ちょっと跳ね上がりそうな程に、驚いてしまう。
「え……フレン? どうして」
隣を見ると、そこにいたのは私の補佐役。
「どうしてはこっちの台詞ですよっ。いつの間に……一人で帰るつもりだったんですか? まったく……倒れた後に、こんな薄着で……」
白い息を荒く吐きながら、ジャケットを脱ぎ、私の肩にかけてくれる。どうやら……彼は、自分のコートも持たず、救急車に乗り込んだようだ。
「今日は流石にタクシーですか? 送って行きます」
「……いい、ですよ。流石のタクシーなので、一人で帰れます。厄介な事に雪が降ってるみたいですし……交通事情が大変になる前に、フレンも帰って下さい」
精一杯強がって、気を遣って、そう言ってみたのだけれど。
「雪? ああ……別に厄介じゃないでしょう。俺は……なんか嬉しいです。局長と初めて一緒に見る……雪……」
私の補佐役はそう言って、空を仰いだ。
舞い踊る粉雪を見つめながら……冷たい宙に白い吐息を溶かす……綺麗な横顔。
それを瞬きもせずに見つめていたら……私の中で、何かが決壊して。
「あ、すみません、局長は体調不良なのに、嬉しいとか不謹慎」
「も……ダメです」
「え!?」
私は、泣いた。
優しい補佐役の胸に、タックルせんばかりの勢いで飛び込んで……泣いた。
「局長? え? なんで? どうしました?」
戸惑いの声をあげる補佐役を無視して、泣き続けた。
雪が降る程に凍える夜でも……この場所にいれば、心は凍り付いたりしない。そう思って。
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