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「頭……いってぇ……」
「それはこっちの台詞だーーー!!!」
取り調べ室にて。本来俺が座る席とは反対側に座る俺。に、レイラは怒鳴り声をあげた。
昔々の刑事のように、目の前の机を勢いよく叩いて。
「早朝に緊急連絡が入って何かと思えば……! これどーゆー事なのよ!? なんであんたが逮捕されちゃってるわけ!? てか、局長どこ行った!?」
「全部俺が教えてほしいくらいだ。朝起きたら局長はいなくて、魔対局員がゾロゾロ……」
本当に、意味が分からない。わからないのだけど……とにかく、頭痛がひどい。そして、全身がだるくて……思考能力も、制限される。
「おいっ! なにだるそうにしてんのよ! 真面目に取り調べられんかい!」
「や、だるいわけじゃなくて、いや、だるいはだるいんだけど、面倒って意味じゃ……」
言いながら、庇うように頭に手をやって、俯く。そんな俺を前に、レイラはようやく『だるい=不調』だと、気付いてくれたようで。
「ちょっとなによ? 大丈夫? まさか……ついに体にガタが来た? 局長に魔力を貢ぎ過ぎて?」
声のボリュームをしぼりながら、心配そうに俺の顔を覗き込む。
部屋の隅には、記録係の局員が俺達を監視しているから。
「そう……だな。きっとそういう事なんだろうけど……初めてだ。これまで何回しても、こんなに調子が悪くなることなんて、無かったのに」
そう。むしろ、事後はエネルギーがわいてくるようだった。局長との時間が、メンタルに張りを持たせているだけだったのだろうけど。
「何回しても、って……さりげなく自慢ぶっこんで来るな……」
「レイラ、冗談言ってる場合じゃない。俺は……問題にする気はないけど、略奪されていた側だ。なのに、していた側として捕まるなんて……そもそもこの件は誰が主導した? 捜査担当は? 逮捕の決め手になった証拠は……」
「俺だよ」
二人だけの取調室に、思いがけない訪問者。
ノックもなく、ガチャリと開いた扉の向こうから現れたのは……
「「ティリアン!」」
レイラと揃って、その名を呼んでしまう。
俺は鉛のように重い足に精一杯力を込めて、立ち上がった。
「よかった……! 監査のお前を頼りたいと思ってた。これは濡れ衣なんだ。誰かが罪をでっちあげて……」
「待て待てフレン! 今のティリアンの言葉聞こえてた!? こいつ、今、この件を主導したのは自分だって言ったのよ!」
レイラの言葉を受け、ハッとする。
そうだ。確かにそう言ってた気がする。
『気がする』なんて……そんな大切な事を、ぼんやりとしか思い出せない位、今の俺は状態がよくないようだ。
「そう。俺だよ。俺が通報した。魔対局長のクロエ・ブランシェは、補佐役のフレン・カーティスに乱暴されて魔力を奪われた……」
「「な……っ!?」」
またも、俺とレイラの声が重なる。だって……驚かずにはいられない事を、同期の桜が口にするから。言葉の内容とは似つかわしくない、爽やかな笑顔で。
「そうしたら朝一で、逮捕に向かってくれた。流石魔対だよな。仕事が早い。……きちんと証拠を渡しておいたのが、よかったのかも」
「しょ、証拠? なんだよそれ?」
「フレンが机の上に置きっぱなしにしていた……局長の健診結果だよ。魔力量が半分以下にまで減った……ね」
「は……!?」
混乱する。ますます意味がわからない。
「朝、採取したお前の血液からも、局長の魔力が検出された。これでもう、言い逃れは出来ないな」
「違うっ、そんなのおかしい……っ! だって俺は……局長は……!」
ただでさえ痛む頭が、ぐわんぐわんと回って……吐き気までもよおしてきた。
「ちょっと待ってティリアン! フレンの様子がおかしいの!」
「そんな事を言って……医務室に運ぶ途中に逃がすつもりなんじゃないか?」
嫌な角度に口の端を上げ、俺の顔色をチラリとうかがうティリアン。すると……途端に目を大きく開いて。
「……って、え!? うわ! 本当にひどい顔色じゃないか! 大丈夫かフレン!?」
なんだその顔。さっきまでの、黒幕感満載の仄暗い笑顔はどこに行った。
なんて……心の中でツッコむ。もう、言葉にしてツッコミをいれる気力は、残っていない。
俺は、力なく机に突っ伏した。
「フレン! しっかり! ティリアン! 取り調べは中断して、医務室に連れて行こう!?」
「いや、ダメだ! フレンはここから出さない! それが一番安全なんだ! この部屋なら、同じフロアに上級魔法使いの魔対局員が大勢いるから……っ」
「なにそれ意味わかんない! てか、さっきの黒幕キャラどこ行った!? なんだったのアレ!?」
「だって……俺がラスボスみたいな邪悪な感じ出して、心しっかり折っちゃえば、ここで大人しくしてくれてるかなって……っ!」
二人が、何か話している。そこそこ大きい声の筈なのに……遠い。
「ああ~やばいやばい! フレン白目むいちゃってるよ!」
「ああ、全くクロエは……! フレン! 頑張って答えてくれ! クロエは昨日、お前の魔力を奪ったのか!? フリじゃなく本当に!?」
聞こえはしているけれど、内容が入って来ない。レイラとティリアンの顔が……霞む。
「わけわかんない事言ってないで! 運ぶよ! フレン、立てる!? ちょっとだけ頑張れ!」
そう言って、レイラが俺の腕をぐいと掴み上げた時だった。
俺とレイラの間に割って入るように……鋭い『剣』が、突き立てられたのは。
「それはこっちの台詞だーーー!!!」
取り調べ室にて。本来俺が座る席とは反対側に座る俺。に、レイラは怒鳴り声をあげた。
昔々の刑事のように、目の前の机を勢いよく叩いて。
「早朝に緊急連絡が入って何かと思えば……! これどーゆー事なのよ!? なんであんたが逮捕されちゃってるわけ!? てか、局長どこ行った!?」
「全部俺が教えてほしいくらいだ。朝起きたら局長はいなくて、魔対局員がゾロゾロ……」
本当に、意味が分からない。わからないのだけど……とにかく、頭痛がひどい。そして、全身がだるくて……思考能力も、制限される。
「おいっ! なにだるそうにしてんのよ! 真面目に取り調べられんかい!」
「や、だるいわけじゃなくて、いや、だるいはだるいんだけど、面倒って意味じゃ……」
言いながら、庇うように頭に手をやって、俯く。そんな俺を前に、レイラはようやく『だるい=不調』だと、気付いてくれたようで。
「ちょっとなによ? 大丈夫? まさか……ついに体にガタが来た? 局長に魔力を貢ぎ過ぎて?」
声のボリュームをしぼりながら、心配そうに俺の顔を覗き込む。
部屋の隅には、記録係の局員が俺達を監視しているから。
「そう……だな。きっとそういう事なんだろうけど……初めてだ。これまで何回しても、こんなに調子が悪くなることなんて、無かったのに」
そう。むしろ、事後はエネルギーがわいてくるようだった。局長との時間が、メンタルに張りを持たせているだけだったのだろうけど。
「何回しても、って……さりげなく自慢ぶっこんで来るな……」
「レイラ、冗談言ってる場合じゃない。俺は……問題にする気はないけど、略奪されていた側だ。なのに、していた側として捕まるなんて……そもそもこの件は誰が主導した? 捜査担当は? 逮捕の決め手になった証拠は……」
「俺だよ」
二人だけの取調室に、思いがけない訪問者。
ノックもなく、ガチャリと開いた扉の向こうから現れたのは……
「「ティリアン!」」
レイラと揃って、その名を呼んでしまう。
俺は鉛のように重い足に精一杯力を込めて、立ち上がった。
「よかった……! 監査のお前を頼りたいと思ってた。これは濡れ衣なんだ。誰かが罪をでっちあげて……」
「待て待てフレン! 今のティリアンの言葉聞こえてた!? こいつ、今、この件を主導したのは自分だって言ったのよ!」
レイラの言葉を受け、ハッとする。
そうだ。確かにそう言ってた気がする。
『気がする』なんて……そんな大切な事を、ぼんやりとしか思い出せない位、今の俺は状態がよくないようだ。
「そう。俺だよ。俺が通報した。魔対局長のクロエ・ブランシェは、補佐役のフレン・カーティスに乱暴されて魔力を奪われた……」
「「な……っ!?」」
またも、俺とレイラの声が重なる。だって……驚かずにはいられない事を、同期の桜が口にするから。言葉の内容とは似つかわしくない、爽やかな笑顔で。
「そうしたら朝一で、逮捕に向かってくれた。流石魔対だよな。仕事が早い。……きちんと証拠を渡しておいたのが、よかったのかも」
「しょ、証拠? なんだよそれ?」
「フレンが机の上に置きっぱなしにしていた……局長の健診結果だよ。魔力量が半分以下にまで減った……ね」
「は……!?」
混乱する。ますます意味がわからない。
「朝、採取したお前の血液からも、局長の魔力が検出された。これでもう、言い逃れは出来ないな」
「違うっ、そんなのおかしい……っ! だって俺は……局長は……!」
ただでさえ痛む頭が、ぐわんぐわんと回って……吐き気までもよおしてきた。
「ちょっと待ってティリアン! フレンの様子がおかしいの!」
「そんな事を言って……医務室に運ぶ途中に逃がすつもりなんじゃないか?」
嫌な角度に口の端を上げ、俺の顔色をチラリとうかがうティリアン。すると……途端に目を大きく開いて。
「……って、え!? うわ! 本当にひどい顔色じゃないか! 大丈夫かフレン!?」
なんだその顔。さっきまでの、黒幕感満載の仄暗い笑顔はどこに行った。
なんて……心の中でツッコむ。もう、言葉にしてツッコミをいれる気力は、残っていない。
俺は、力なく机に突っ伏した。
「フレン! しっかり! ティリアン! 取り調べは中断して、医務室に連れて行こう!?」
「いや、ダメだ! フレンはここから出さない! それが一番安全なんだ! この部屋なら、同じフロアに上級魔法使いの魔対局員が大勢いるから……っ」
「なにそれ意味わかんない! てか、さっきの黒幕キャラどこ行った!? なんだったのアレ!?」
「だって……俺がラスボスみたいな邪悪な感じ出して、心しっかり折っちゃえば、ここで大人しくしてくれてるかなって……っ!」
二人が、何か話している。そこそこ大きい声の筈なのに……遠い。
「ああ~やばいやばい! フレン白目むいちゃってるよ!」
「ああ、全くクロエは……! フレン! 頑張って答えてくれ! クロエは昨日、お前の魔力を奪ったのか!? フリじゃなく本当に!?」
聞こえはしているけれど、内容が入って来ない。レイラとティリアンの顔が……霞む。
「わけわかんない事言ってないで! 運ぶよ! フレン、立てる!? ちょっとだけ頑張れ!」
そう言って、レイラが俺の腕をぐいと掴み上げた時だった。
俺とレイラの間に割って入るように……鋭い『剣』が、突き立てられたのは。
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