42 / 53
42
しおりを挟む
目の前の机に突き刺さるのは……鋭い長剣。
なぜ? 取調室で、剣……? ぼんやりとする頭で、考える。
「きゃ……っ!? なに!?」
小さな悲鳴をあげるレイラ。
「何をするんだ!」
ティリアンは声を荒げて、部屋の隅に居た記録係を睨みつける。
すると視界の隅で……記録係が、黒メガネをゆっくりと外すのが、見えた気がした。
「ふふ……久しぶり。同期の桜」
「「ルーク!」」
ルーク……? 同時にあいつの名前をよぶレイラとティリアン。
二人はすぐに、自身の剣を取り出した。たちまち、狭い取調室の中に多量の魔力が充満する。
「あんた、もしかしなくても……うちの局員に変身してたの!?」
「僕の魔力特性、覚えててくれたんだ? そうだよ。僕の剣はこのメガネ。これをかけると、誰にでも変身できる。僕が知ってる人間なら、誰にでも……ね!」
落ち着いた雰囲気で言いながら、メガネをかけなおす。するとその顔は、カイのそれに代わって。
ガキン!
途端に響く、金属音。
重なっているのは、レイラの刀と……両端に刃を備えた、双頭の槍。
まるで演舞のように躍動的な剣技が得意な……カイの、剣……?
「カイの剣!? どうして……あんたが変身できるのは、容姿だけだったのに!」
「前は、ね。でも……もう知ってるんでしょう? 僕は魔力を貰って、強くなったんだ」
「貰った!? 略奪したの間違いだろう! 変身を繰り返して、あちこちの結婚相談所に登録して……魔力特性を犯罪に使うなんて、恥を知れ!」
変身……ああ、そうだ。だから婚活事件の捜査は難航してた。手口から、同一犯の犯行だとわかっていたけれど……その外見的特徴が、皆バラバラで……。
ガキン! ガキッ! ガキィィンッ!
不規則に響く甲高い音が、空気を震わせる。
レイラの上品な刀身が光る刀も、ティリアンの勇者がもつ聖剣のような剣も、綺麗だ。ぶつかり合うたびに、魔力の火花が散って……。
「ぐ……っ! 嘘でしょ!? こっちは二人がかりなのに、押されてるとか……っ」
「ははっ。信じられない? 86期の中でただ一人、魔剣士じゃなかった落ちこぼれに……エリートの自分達が負けるなんて?」
レイラは壁の方へ勢いよく吹き飛び、鈍い衝撃音が響いた。
「レイラ! くそ……っ、まさかここまでとは……っ」
「次はお前だよティリアン! ぜ~んぶ知った上で、局長とコソコソ動き回ってた、お前!」
まぶたが重い。懸命になって持ち上げていたけれど……もう、限界のようだ。
閉ざされた視界。敏感になった耳を打つのは、再びの金属音と……何かが、何かにぶつかる音。さっき、レイラが視界から消えた時にも、聞こえた……。
「く……っ! やめろルーク! フレンに触るな!」
冷たい手が、俺に触れる。と同時に、俺の体はふわりと浮いた。
「大丈夫だよ。フレンの事は……僕が、楽にしてあげるから」
懐かしく、優しい、声。けれど……どこか、暗く、重い。
自分にも、自分のまわりにも何が起きているのかわからないまま……俺は、自らの意識を手放した。
なぜ? 取調室で、剣……? ぼんやりとする頭で、考える。
「きゃ……っ!? なに!?」
小さな悲鳴をあげるレイラ。
「何をするんだ!」
ティリアンは声を荒げて、部屋の隅に居た記録係を睨みつける。
すると視界の隅で……記録係が、黒メガネをゆっくりと外すのが、見えた気がした。
「ふふ……久しぶり。同期の桜」
「「ルーク!」」
ルーク……? 同時にあいつの名前をよぶレイラとティリアン。
二人はすぐに、自身の剣を取り出した。たちまち、狭い取調室の中に多量の魔力が充満する。
「あんた、もしかしなくても……うちの局員に変身してたの!?」
「僕の魔力特性、覚えててくれたんだ? そうだよ。僕の剣はこのメガネ。これをかけると、誰にでも変身できる。僕が知ってる人間なら、誰にでも……ね!」
落ち着いた雰囲気で言いながら、メガネをかけなおす。するとその顔は、カイのそれに代わって。
ガキン!
途端に響く、金属音。
重なっているのは、レイラの刀と……両端に刃を備えた、双頭の槍。
まるで演舞のように躍動的な剣技が得意な……カイの、剣……?
「カイの剣!? どうして……あんたが変身できるのは、容姿だけだったのに!」
「前は、ね。でも……もう知ってるんでしょう? 僕は魔力を貰って、強くなったんだ」
「貰った!? 略奪したの間違いだろう! 変身を繰り返して、あちこちの結婚相談所に登録して……魔力特性を犯罪に使うなんて、恥を知れ!」
変身……ああ、そうだ。だから婚活事件の捜査は難航してた。手口から、同一犯の犯行だとわかっていたけれど……その外見的特徴が、皆バラバラで……。
ガキン! ガキッ! ガキィィンッ!
不規則に響く甲高い音が、空気を震わせる。
レイラの上品な刀身が光る刀も、ティリアンの勇者がもつ聖剣のような剣も、綺麗だ。ぶつかり合うたびに、魔力の火花が散って……。
「ぐ……っ! 嘘でしょ!? こっちは二人がかりなのに、押されてるとか……っ」
「ははっ。信じられない? 86期の中でただ一人、魔剣士じゃなかった落ちこぼれに……エリートの自分達が負けるなんて?」
レイラは壁の方へ勢いよく吹き飛び、鈍い衝撃音が響いた。
「レイラ! くそ……っ、まさかここまでとは……っ」
「次はお前だよティリアン! ぜ~んぶ知った上で、局長とコソコソ動き回ってた、お前!」
まぶたが重い。懸命になって持ち上げていたけれど……もう、限界のようだ。
閉ざされた視界。敏感になった耳を打つのは、再びの金属音と……何かが、何かにぶつかる音。さっき、レイラが視界から消えた時にも、聞こえた……。
「く……っ! やめろルーク! フレンに触るな!」
冷たい手が、俺に触れる。と同時に、俺の体はふわりと浮いた。
「大丈夫だよ。フレンの事は……僕が、楽にしてあげるから」
懐かしく、優しい、声。けれど……どこか、暗く、重い。
自分にも、自分のまわりにも何が起きているのかわからないまま……俺は、自らの意識を手放した。
0
あなたにおすすめの小説
聖銀竜に喰われる夜――冷酷な宰相閣下は、禁書庫の司書を執愛の檻に囚える
真守 輪
恋愛
「逃がさない。その賢しい口も、奥の震えも――すべて、私のものだ」
王宮で「禁書庫の未亡人」と揶揄される地味な司書・ルネ。
その正体は、好奇心旺盛でちょっぴり無作法な、本を愛する伯爵令嬢。
彼女には、誰にも言えない秘密があった。
それは、冷酷非道と恐れられる王弟・ゼファール宰相に、夜の禁書庫で秘密に抱かれていること。
聖銀竜の血を引き、興奮すると強靭な鱗と尾が顕れる彼。
人外の剛腕に抱き潰され、甘美な絶望に呑み込まれる夜。
「ただの愛人」と割り切っていたはずなのに、彼の孤独な熱に触れるたび、ルネの心は無防備に暴かれていく。
しかし、ルネは知らなかった。
彼が近づいた真の目的は、彼女が守る「禁書」――王国を揺るがす禁断の真実にあったことを。
「君は、私のものだ。禁書も、その魂も、すべてな」
嘘から始まった関係が、執着に変わる。
竜の情欲と宮廷の陰謀が絡み合う、背徳のインモラル・ロマンス。
同期の姫は、あなどれない
青砥アヲ
恋愛
社会人4年目を迎えたゆきのは、忙しいながらも充実した日々を送っていたが、遠距離恋愛中の彼氏とはすれ違いが続いていた。
ある日、電話での大喧嘩を機に一方的に連絡を拒否され、音信不通となってしまう。
落ち込むゆきのにアプローチしてきたのは『同期の姫』だった。
「…姫って、付き合ったら意彼女に尽くすタイプ?」
「さぁ、、試してみる?」
クールで他人に興味がないと思っていた同期からの、思いがけないアプローチ。動揺を隠せないゆきのは、今まで知らなかった一面に翻弄されていくことにーーー
【登場人物】
早瀬ゆきの(はやせゆきの)・・・R&Sソリューションズ開発部第三課 所属 25歳
姫元樹(ひめもといつき)・・・R&Sソリューションズ開発部第一課 所属 25歳
◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。
◆他にエブリスタ様にも掲載してます。
婚約破棄された元聖女、魔王の息子に攫われて溺愛されています
百合川八千花
恋愛
魔王を討伐し、十年にわたる戦いを終えた聖女アルティア。
帰還した王国で待っていたのは、王太子からの婚約破棄と――その子供だった。
絶望の中、現れたのはかつて共に戦った魔王の息子、ヴェルグ。
「君はもう自由だ。だったら僕が攫うよ」
突然の求婚(という名の略奪)と共に、アルティアは隣国・アシュフォード帝国へ連れ去られる。
辺境伯となったヴェルグの領地で始まるのは、
「君のために用意してた」
と語られる豪華すぎる“同棲部屋”、
壁一面に飾られた聖女の肖像画コレクション、
そして、「僕のもの」発言が止まらない溺愛×執着ラブ生活!
しかしその頃、聖女を失った王国では、魔王の呪いによる異変が始まっていて――
これは、運命に選ばれ続けた聖女と、ただ彼女だけを愛した元魔王の息子の、
甘くて狂おしい、世界と愛の再構築ラブファンタジー。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。
その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。
婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。
孤独な結婚生活を送る中。
ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。
始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。
他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。
そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。
だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。
それから一年ほどたった冬の夜。
カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。
そこには彼の想いが書かれてあった。
月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。
カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。
※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。
※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。
稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
「愛想がなく可愛くない」と捨てられた私、最強の竜騎士に拾われる。「その美しさに僕だけが狂わされたい」と、愛の重さでベッドから下ろしてくれない
唯崎りいち
恋愛
夜会の最中、王子に「愛想がなくて可愛くない」と婚約破棄された無表情令嬢。
だが彼女の美しさに一目惚れした隣国最強の竜騎士に連れ去られ、
「君はもう僕のものだ」
と毎晩愛の重さでベッドから下ろしてくれない生活が始まる——。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる