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それはまるで、乾いた大地に恵の雨が降り注ぐような。
「ん……」
急速に命が潤っていくのを感じながら……俺は、目を覚ました。
「フレン……? 気が付きましたか?」
「……あれ……局長……裸じゃないんですね……」
起き抜けに率直な質問をぶつけると……俺の上司は、少し恥ずかしそうに、苦笑いをした。
「……裸でしたよ。救急隊が、来るまでは」
それから、ほっとしたような顔で、俺の手を握る。
周囲にはいくつもの機械と、管。そして……狭いソファーの上、肩を寄せ合いながら眠る、ティリアン、レイラ、カイ。三人の同期達。
「ここは……」
「病院です。私が魔力を供与した後、すぐに救急隊が到着して……ふふ。三人も、フレンが目を覚ますまで傍にいるって言ってたんですけど。三日三晩寝ないのは、さすがに無理だったようです」
「俺……三日も……じゃ、局長も」
「局長も、三日も寝てないんですか? 俺の事はいいから、早く休んでください……ですか? ふふ。気にしなくて大丈夫です」
俺の心の声をまるごと代弁して、優しく微笑む局長。三日ぶりの発声は、声がかすれて、スムーズに喋れないから……ありがたくはあるのだけれど。
「……ルークは……」
「……逮捕されました。あなたに呪いをかけた容疑と……婚活事件の重要参考人として」
局長は少しだけ眉間に皺を寄せてそう言いながら……冷たい手で、俺の頬を撫でた。
「局長……すいませんでした。局長は……俺にずっと、魔力を供与してくれてたんですね。俺が呪いで……死なないように」
「隠していて、ごめんなさい……」
俯く上司。俺はゆっくりと、首を左右に動かした。
「同期に呪われたなんて……俺が、傷付くと思って、言えなかったんでしょう? 俺なんか……守ってくれなくてよかったのに……。やっぱりあいつは俺を恨んでた……俺が……あんな嘘をついたから」
「それは原因じゃありません。前にも言ったでしょう? ……落ち着いたら、あなたにもきちんと説明を」
「俺……ルークに嘘をついたんです。局長補佐に正式に就任するのは、俺だって。局長本人から聞いたから、間違いないって……」
当時の事を思い返し……己の愚かさに、握りこぶしに力を込めてしまう。……といっても、三日眠り続けた体には、うまく力が入らず……指と手の平の間には、情け無いくらいに隙間が出来ているけれど。
「そう……だったんですね……」
「俺……悔しかったんです。局長はいつもルークを見てて……補佐に選ばれるのは、あいつだと思ってた。だから……」
険しい表情で独白する。局長は、『ばかですね』と笑ってから、俺の胸に、頬を寄せた。
「これも、何度も言わせないでください。あなたを選んだのは私……ルークがいなくなったからじゃない。あなたがいいから、あなたにしたんです」
「……ありがとうございます……俺、補佐役になれて本当によかったです……」
局長と出会えて、一番近くにいられて……本当に幸せだった。
ルークにさらわれた時も、デタラメな話を聞かされた時も、猜疑心に飲み込まれずに済んだのは……それほどに大きな信頼感を与えてくれた、この人のおかげ。
俺は、局長の頭を撫でた。ゆっくりと、繰り返し。
感謝と愛おしさが溢れて……この人に、触れられずにはいられなかったから。
「そんな風に言って貰えて、嬉しいです。……でも……私はもう、あなたの局長ではいられません。警察庁も、辞めます」
「どうして……俺に、魔力を与えたから……ですか? 大丈夫です、回復しだい、ちゃんと返す」
「ティリアンと、結婚するんです」
その言葉に……セミロングヘアを撫でていた手が、ぴたりと止まった。
今までBGMに過ぎなかった機械の音が、音量をあげたかのように、病室に響き渡る。
「…………え……?」
「だから……今だけ……。…………今だけ……」
囁くようにそう言うと、局長は飼い主にじゃれる猫のように、俺の胸に鼻を寄せ、顔をうずめた。
俺は何も言わずに……再び、愛おしい最強魔剣士の頭を、撫で続けた。
ゆっくりと、優しく……ただ、ひたすらに。
「ん……」
急速に命が潤っていくのを感じながら……俺は、目を覚ました。
「フレン……? 気が付きましたか?」
「……あれ……局長……裸じゃないんですね……」
起き抜けに率直な質問をぶつけると……俺の上司は、少し恥ずかしそうに、苦笑いをした。
「……裸でしたよ。救急隊が、来るまでは」
それから、ほっとしたような顔で、俺の手を握る。
周囲にはいくつもの機械と、管。そして……狭いソファーの上、肩を寄せ合いながら眠る、ティリアン、レイラ、カイ。三人の同期達。
「ここは……」
「病院です。私が魔力を供与した後、すぐに救急隊が到着して……ふふ。三人も、フレンが目を覚ますまで傍にいるって言ってたんですけど。三日三晩寝ないのは、さすがに無理だったようです」
「俺……三日も……じゃ、局長も」
「局長も、三日も寝てないんですか? 俺の事はいいから、早く休んでください……ですか? ふふ。気にしなくて大丈夫です」
俺の心の声をまるごと代弁して、優しく微笑む局長。三日ぶりの発声は、声がかすれて、スムーズに喋れないから……ありがたくはあるのだけれど。
「……ルークは……」
「……逮捕されました。あなたに呪いをかけた容疑と……婚活事件の重要参考人として」
局長は少しだけ眉間に皺を寄せてそう言いながら……冷たい手で、俺の頬を撫でた。
「局長……すいませんでした。局長は……俺にずっと、魔力を供与してくれてたんですね。俺が呪いで……死なないように」
「隠していて、ごめんなさい……」
俯く上司。俺はゆっくりと、首を左右に動かした。
「同期に呪われたなんて……俺が、傷付くと思って、言えなかったんでしょう? 俺なんか……守ってくれなくてよかったのに……。やっぱりあいつは俺を恨んでた……俺が……あんな嘘をついたから」
「それは原因じゃありません。前にも言ったでしょう? ……落ち着いたら、あなたにもきちんと説明を」
「俺……ルークに嘘をついたんです。局長補佐に正式に就任するのは、俺だって。局長本人から聞いたから、間違いないって……」
当時の事を思い返し……己の愚かさに、握りこぶしに力を込めてしまう。……といっても、三日眠り続けた体には、うまく力が入らず……指と手の平の間には、情け無いくらいに隙間が出来ているけれど。
「そう……だったんですね……」
「俺……悔しかったんです。局長はいつもルークを見てて……補佐に選ばれるのは、あいつだと思ってた。だから……」
険しい表情で独白する。局長は、『ばかですね』と笑ってから、俺の胸に、頬を寄せた。
「これも、何度も言わせないでください。あなたを選んだのは私……ルークがいなくなったからじゃない。あなたがいいから、あなたにしたんです」
「……ありがとうございます……俺、補佐役になれて本当によかったです……」
局長と出会えて、一番近くにいられて……本当に幸せだった。
ルークにさらわれた時も、デタラメな話を聞かされた時も、猜疑心に飲み込まれずに済んだのは……それほどに大きな信頼感を与えてくれた、この人のおかげ。
俺は、局長の頭を撫でた。ゆっくりと、繰り返し。
感謝と愛おしさが溢れて……この人に、触れられずにはいられなかったから。
「そんな風に言って貰えて、嬉しいです。……でも……私はもう、あなたの局長ではいられません。警察庁も、辞めます」
「どうして……俺に、魔力を与えたから……ですか? 大丈夫です、回復しだい、ちゃんと返す」
「ティリアンと、結婚するんです」
その言葉に……セミロングヘアを撫でていた手が、ぴたりと止まった。
今までBGMに過ぎなかった機械の音が、音量をあげたかのように、病室に響き渡る。
「…………え……?」
「だから……今だけ……。…………今だけ……」
囁くようにそう言うと、局長は飼い主にじゃれる猫のように、俺の胸に鼻を寄せ、顔をうずめた。
俺は何も言わずに……再び、愛おしい最強魔剣士の頭を、撫で続けた。
ゆっくりと、優しく……ただ、ひたすらに。
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