【完結】畑暮らしのΩ王子、20年越しに“番”が現れました

兎沢にこり

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畑の王子と王国外交官

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(エリオス……ヴァルデンハイト王国レオンハルト・ヴァルシュタイン第一王子の元へ嫁げ)

頭の中では未だに、セレノスの言葉が回っている。
歳が離れていた分、セレノスは末弟のエリオスをとくに可愛がっていた。
だからこそ……突き放すように下された王命が胸に深く刺さった。

「おい、ったく……おいったら!」
力なく垂れた腕を掴まれて、意識が外へ引き戻される。

「エリオス!」

名を呼ばれ、項垂れたままだった顔をようやく上げた。
瞬けば、雫がひとつ、頬を伝って落ちる。
ぼやけていた視界が、ようやくクリアになる。

国王が立ち去った謁見の間には、動揺が漂っていた。
躾られたメイド達でさえ、ざわついている。

無理もない。
あんな一方的な王命は、前代未聞だ。
何処かの国のように血統と伝統を重んじる家ではない。
ソルグラン王家は、いつも愛に溢れた家だった。

「ゼフィ兄」

掴まれた腕が少しだけ痛い。

焦った表情で顔を覗かせるのは、四男のゼフィルだ。
今日は他国視察に出ていた筈だ。
なのに、今。目の前で不安そうにエリオスを見ている。

肩まで伸びた焦げ茶の髪は、後ろで一つに束ねられている。
胸元のボタンは気取って、二つ三つとあいている。
チャコールグレーののフロックコートは、ワインレッドの差し色が覗く。
その出で立ちは、華やかなゼフィルに良く似合っている。
急ぎ足で来た事を物語る、少し乱れたその呼吸さえ、色気の漏れる男だ。

「ここじゃあ目立つ。場所を変えるぞ」

潜めるような声で囁くと、ゼフィルは迷うこと無く腕を引いて、謁見の間を後にする。




連れて来られたのは、城内にいくつもある応接間の一つ。
壁にはソルグラン出身の著名な画家による絵画が並び、至る所に豪華な調度品が飾られている。
他にも客人をもてなすための部屋……だが、今この場に漂うのは、重たい沈黙だけだった。

重厚なソファに腰を下ろすと、鏡のように磨かれたテーブルを挟んでゼフィルが座る。
あの陽気で軽薄な節すらある兄が、今は黙って考え込んでいた。
二人きりにされた部屋の静けさが、逆に気まずくて仕方がない。

耐えきれなくなって、エリオスは不格好な笑みを浮かべる。

「いやぁー、まいったよ。俺、この歳で嫁に行けだってさ」

自嘲まじりの言葉に、ゼフィルが深々とため息を吐く。
肘掛けに肘をつき、頬をのせたその姿すら、いちいち絵になる。
試すように目元を細め、探るように男を見つめてきた。

「おいおい。お前、嫁ぐ気無いんだろ?……それとも、本音はちょっと嬉しかったり?」
「喜んでるわけない!全っ然ない!」

即答した言葉に、「だよなぁ」と苦笑いしながらゼフィルが頷く。
だが王命が下った今、このまま何もしなければ、あっという間に輿入れだ。
どうにか回避できないものか……そう考えていた時、ふと、そこで浮かぶことがあった。

「ゼフィ兄。俺から……Ωの匂い、してる?」

セレノスが言っていた事が、もし本当なら。
自分から漏れたフェロモンが、兄を通して……"運命"だと言う隣国の王子に届いた?
そんなの、ありえない。いや、あってたまるか。
何かの間違いに決まってる。

運命の番は、生涯でたったひとり。
出会えるかどうかさえ、運次第の、夢物語のような存在だ。

眉唾だと思っていたその物語を、本当に信じてしまうのは、αとΩに生まれた者だけ。

ヒートでもないのに、本能で互いに惹かれ合い、焦がれて、ただその人だけを求めてしまう。

エリオスはかつて。
その運命を見つけてしまった。

だから知ってる。
あの人の子どもは、絶対に、自分の運命なんかじゃない。

エリオスが飲んでいるのは、かなり強い抑制剤だ。
もう手の届かない、運命を誘わないように。
そしてなにより、またあの香りに焦がれてしまわないように。

小さな声で尋ねれば、ゼフィルは神妙な顔つきで部屋の空気を嗅ぐ。
事情をよく知っているからこその反応だ。
だが、すぐにしっかり首を振る。

「正直分からん。どちらかと言うと、俺から出てるはずだぞ。少し気が立ってるから」

エリオスも鼻を鳴らし、辺りを入念に嗅ぐが、やっぱり何の匂いもしない。
もうずっと、兄弟のフェロモンでさえ感じなくなっていた。

「というか、また飲んだんだろ。いい加減やめろ。鼻が曲がるぞ」
「曲がってくれた方がいい」
「あのなぁ~」

ちょうど説教が始まりそうになった、その時――。
応接間の扉が、控えめにノックされた。

「入ってくれ」

ゼフィルがそう言うと、入ってきたのはワゴンを押したジョスであった。

「お茶をお持ちいたしました。こちらもお召し上がりください」
「相変わらず気が利くな。国境から飛ばしてきたから、もう腹が減って」

目の前に、綺麗な花模様が描かれた大皿がサーブされる。
その上には、取りやすいよう一口大にカットされたサンドイッチが並べられている。
エリオスが、農夫らと共に食べていた物と同じものである。
畑でかぶりついて食べていたサンドイッチも、ここでは可愛らしいピンが付いている。
手を汚さないようにと、メイドたちのささやかな気遣いであろう。

「ゼフィル様ほど、早く馬を走らせるお方を、私は存じません」
「セレノス兄様の王命には間に合わなかったんだ、カッコがつかねぇーよ」

ゼフィルはサンドイッチのピンを、片手で二本摘むと、一口でそれを頬張る。
大柄な兄だから出来ることである。
ジョスは丸みを帯びた陶器のティーポットから、香りのいいハーブティーを注ぐ。

「エリオス様も、お食事の途中でございましたから、農場の民達が届けてくれたのですよ」

エリオスは促されるまま、ハーブティーで喉を潤し、サンドイッチを手に取った。
口に入れた瞬間、お腹がグゥとなる。
空腹だったらしい。
変わらず美味しい味がした。

けれども……エリオスはふいに黙り込んで窓の外へ視線を向けた。

そこからは庭師がいつも手入れをしている見事な庭園と、その少し先にある城門が見渡せた。
街並みはこの場所からは見えない。
けれど、そのずっと向こう——農場はだけは遠くにしっかりと見える。
「畑に帰りたい」……その言葉はサンドイッチを飲み込めば、消えてしまった。



気がつけば、殆どゼフィルがサンドイッチを平らげていたようで、皿の上はピンだけが転がっている。
ジョスは給仕終えると、横に控えた。
一息ついているゼフィルに、エリオスは探るように詰め寄る。

「ゼフィ兄は、ジョスが向かわせた遣いから話を聞いたの?」
「あぁそうだ。……まぁ俺も、まさかセレノス兄様があんなに早く動くとはな」

優雅にティーカップを操り、それを飲み干すと、テーブルの端に置く。
胸元に指を入れて、折り畳まれた紙をテーブルの真ん中に拡げた。

ゼフィルはソルグラン王国に指をおく。

「ここが、ソルグラン王国。俺達の国だ」

指が北へと進む。

「ヴァルデンハイト王国、セラトリア共和国………んでその先。川を挟んでザルミアン帝国だ」

ザルミアンを指先で叩いてから、ゼフィルは続く。

「少し前に、ヴァルデンハイト王国騎士団が、援軍として派遣されたのを覚えてるか」

ヴァルデンハイト王国騎士団。
その名を知らぬものはいない。
大陸一の強さと清き騎士道精神を備えた、白の守護者と呼ばれている。
汚れのない、白色の鎧。
その背を見たならば、必ずの勝利を。
目の前に白の鎧と対峙したならば、瞬く間もなく自国は同じような白旗を振ることになる。

「そりゃ覚えてるよ。支援物資の手配をしたの俺だし」
「そうだよな」
「でも準備をしている間に、終わっちまったから備蓄庫に戻す方が大変だった」

押されていた国が、白の騎士団の到着であっという間の快進撃だったそうだ。

「………さて、そもそもあの小競り合いは何が理由だか知ってるか?」
「………それと、俺の婚姻、何が関係あるの」
「大ありすぎる」

「まず、ここ」とゼフィルはセラトリア共和国を指でぐるりと囲った。
古くから続く森林と豊富な水量ある川が流れる、知恵と薬学研究が盛んな国である。

何でも、ここでしか自生しない植物もあるらしいが、その区域は中央薬政官の許可がなければ入れない……らしい。
王立農業使として働くエリオスとしては、一度は行ってみたい場所である。
だがしかし、セラトリア共和国に向かうには、ヴァルデンハイト王国を抜けなければならない。
入る勇気など無いのだから、夢のまた夢であった。

「今回、狙われたのはセラトリア共和国だった。んで、先に吹っかけたのは、隣国のザルミアン帝国。理由はなんだと思う?」
「ザルミアン帝国って、いい噂一個もないじゃん」

ザルミアン帝国。
栄華を極めた時代も過去にはあったようだが、今は見る影もない。
前王が酒池肉林と大盤振る舞いして、他界した後、お世継ぎ騒動の白羽の矢は出奔していた息子に当たった。

「息子は帝王学を学ぶどころか、触れもしていなかったせいで、まさにお飾りの王だ」
「それはまた、随分な大役だな」
「でも、王様なら何かしなきゃって思うだろ?だけど、自分は王様のなり方なんて知らない……さて、どうする?」

エリオスは顎に手を当て、これしかないと口を開いた。
「はーーん。お飾王に、何か言った奴がいるな」

ニヤリと口の端をあげたゼフィルは、ソファに背を預けて、脱力した。

「俺は外に行くのが仕事だからな。ここの噂はよく耳にする」
「にしたって、セラトリア共和国をどうしたかったんだよ。まさか、間を流れてる水源の取り合いでもあるまいし」

うーん、と考え込むエリオスを他所に、ゼフィルは続ける。
「セラトリア共和国にいる、Ωが欲しいって求婚したけど、きっぱり振られたんだと」
「はぁ!??なんだそれ!!?」

国家間の戦争の始まりにしては、あまりにも低俗すぎる。
エリオスはハッとした顔で、確信に迫る。

「もしかして、それでセレ兄っ俺に嫁げなんて!?白の騎士団とウチじゃあ完敗ぼろ負けサヨウナラだ!」
「おいおいおい、ウチの騎士団が泣くだろうが!っこら。ジョスも笑ってないでコイツ止めてくれよ」

肩を揺らして笑いを堪えるジョスに、エリオスはムッとした顔を向ける。本人は本気なのだから仕方がない。
しかし、それすらもツボに入るのか絶妙な咳払いでそれを散らしていた。

「レオンハルトはそんな奴じゃねぇーから、な?」
ゼフィルのそれは、会ったことがある口ぶりである。
「運命じゃないのにそうだって断言してる時点で、信用ならない」

ムムっと顔を作るエリオスにため息を吐いて「話を戻すが」と、続ける。

「"表向き"はそれだ」
「"表向き"」
「セラトリア共和国には、薬師の専門家が揃っているのは知ってるな?」

ゼフィルの真面目な顔つきに、こくりと頷く。

「エリオスが乱用している、Ωの抑制剤も、セラトリア共和国で作られている。これは周知の事実だ」
「俺が飲んでいるのは特に強い奴だから、門外不出なんだよね?」

通常の抑制剤ならば街にあるもので、充分こと足りる。
だが、エリオスのように、フェロモンを出したくもないし、感じたくもないなんて言うΩには問診と検査を経て、特別に処方されるものだ。

「そう。その門外不出の抑制剤を、研究し、管理しているのが中央薬政官だ」
「セラトリア共和国で作られる薬の決定権がある人、だっけ?」
「そうだ。その人が、エリオスの服用してる抑制剤の製法についても管理してる」

表向きと本音。
エリオスはその強い抑制剤の効果を、身をもって知っている。
己のフェロモンも、相手のフェロモンも感じなくなる。
それがもし、よからぬ事へ使われたら。
門外不出の理由は何か。
知識のある者を手元に置く。
違う薬を研究する材料にも、なり得るのではないか。

「ゼフィ兄……もしかして、その人」
「Ωだ。番のいない、な」

エリオスは口を紡ぐ。

「その中央薬政官が、貴族の企みに気づいてな。アスレイ兄さんに助けを求めたんだ」
「アス兄に?」

三男のアスレイ。
母の髪色を受け継いだブルーグレイの長髪に、
陽の光を当たらない為、家族の中で一番、ひょろりとしていて肌は白い。
その身を白衣で隠し、長い足を書庫の中で闊歩させては、国の頭脳としてセレノスを支えている。
様々な学問に精通しており、本人も趣味で研究なんかもする。

「何時もお前の薬を仕入れてるの、誰だと思ってんだ」
「アス兄様です」
「よろしい。そこで国の中で動けない中央薬政官の代わりに、セレノス兄さんを通して、セラトリア共和国に、白の騎士団を派遣するよう頼んだんだ」

成程、戦争の意味と集結は理解した。
だが、薬の危機を救ったのと、エリオスの婚姻。その関係は未知数だ。

ゼフィルはテーブルにあった地図を巻きとって、胸元に仕舞う。
ジョスにもう一杯とハーブティーを入れてもらって、カップの中を見つめた。

「そこで、……直々にセレノス兄さんが、一応お忍びで。俺とヴァルデンハイト王国に行ったんだよ」

アスレイ兄さんとの交友関係もあった事から、直接国王であるセレノスが出向いたのか。
家族にΩがいる。それも関係していたのかもしれない。

「凄かったぞ」
「何が?って聞くのも怖いんだけど」

エリオスは耳を塞ぐ仕草である。
ゼフィルはそんなエリオスを気にすることなく、身震いして見せて、自身を両腕で抱きしめた。

「応接間で、ジークハルト様とレオンハルトと対面した時、手土産を渡したんだよ。……エリオスにいつも頼んでいるつ」
「あぁ、贈答用のネクタリン」

ネクタリンはこの時期の贈答品に、よく用いられている。
果皮は赤いツルツルとしたもので、果肉は分厚く綺麗な橙色をしている。そのまま齧っても甘くて美味いし、ジャムやコンポートにしてもいい果物だ。

それは、エリオスが管理する、農場内の果樹園で採れたものである。

国王からの贈答品となれば、特に良いものでなければ格好がつかない。
王立農業使として、確り選定した、一等いいネクタリンを、エリオスが箱に包んだのだ。

「メイドを介して、渡そうとしたんだが、突然、黙ったままのレオンハルトが寄ってきて」

ゼフィルは自身の手で、何も無い所に箱を作る。

「まだ、セレノス兄さんが持ったままの箱に、直接鼻を押し当てて」

獣のような動き。
ぎらりとした視線をゼフィルが作る。

「『貴方のところに、私の運命がいますね?』」

想像するだけで怖い。
いや、化け物を見たかのような反応を、ゼフィルがするもんだから、余計に恐ろしく見える。

残り香を感じ取った?
兄にもしないと言われた、フェロモンを?

まぁ、それはそうとして。
エリオスは、『運命』の言葉に、断固として首を振る。

「いーや、誰か別のΩの匂いでも拾ったんじゃないの?」
「あっちに住んでるΩは、もう全員番持ちだ。んで、俺達の国でセレノス兄さんと関係あるフリーのΩは、エリオスだけ」

そう、ゼフィルは断言する。

「……なんで、それで、婚姻にまでなるの。王命までして」

謁見の間での、突き放すような声。
セレノスから告げられた王命が、苦しかった。
お前なんかどっか行け、と言われているような気がして。

ゼフィルは人の機微に聡い。
すぐ様立ち上がり、エリオスの横へ腰を降ろす。
小さい時によくしていた、かき混ぜるみたいな撫で方で、エリオスを慰める。

「セレノス兄さん、お前の事ずっと心配してたから。奇跡に縋りたくなっちまったんじゃないかな。……お前の事情も知ってるんだから、流石に突然降って湧いた奴と、婚姻させるのは何考えてんだっ!って……思ったけど」
「心配かけてるのは、分かってるんだ。でも、こんなっ、突然過ぎて、何が何だか」

困惑した気持ちのままだと、素直に零すエリオス。
ゼフィルはしっかりとその叫びを聞きながら、エリオスの背を撫でた。

「農場だって!俺の居場所なのに……ずっと、ずっと兄さん達に並べるように、俺もセレノス兄さんの役に立ちたいって」
「分かってる。お前のおかげで、収穫率も他国への輸出量だって上がった。父様の代よりはるかにこの国は豊かになっている。何より民との距離だって縮まった。お前が民と王との架け橋になってくれたからだ」

ゼフィルの声は、エリオスのささくれだった心に染みた。
口をまごつかせ、言いづらそうに、逡巡した後、意を決してゼフィルは口を開く。

「セレノス兄さんさ、お前が、ずっと薬で本能押さえ込んでるの見るの、もう歳だし堪えんのよ。

末弟を思う長兄の心。
特に上の兄達は、年の離れたエリオスを可愛がっていたのもある。
それが突然、初めての社交界デビューである十五の時から、Ωの性に翻弄された。
もう自身の前に現れる事のない番に。怯えるエリオスを、慰める事しか出来ない。
とは言っても、皆αの兄達だ。Ωの本心を確実に捉えるのも難しかった。
正しい使い方でない、もはや精神の安定剤のように常飲している薬を、止めきれる術もなく。

そしてそこに突然、弟を運命だと、訴える者が現れたのならば。
藁にもすがる思いではないか。


「さて、エリオス。お前に残されてるのはこの二つ」

居住まいを正し、向かい合いったゼフィルとエリオス。
ゼフィルが、人差し指を立てた。

「一つ、潔く結婚する」
「絶対、嫌だ」
「今なら運命の番だった人、が、姑父に付くぞ」
「どんな気持ちで、そこにいればいいんだよ!無し!」

二本目の中指が立つ。

「二つ、一度会って、運命じゃないって、言ってキッパリ振ってやるかだ」
「……手紙でいい?」
「そんなん通じる相手じゃねぇーと思うぞ」
「それ、どっちも会うことになるじゃん!」
「こればっかりは、会わねぇとわからないだろうが。」
「俺薬飲んでるから、フェロモン分からないよ。自分からも出ないし」
「出ないなら……行けるだろ?さっき、薬効いてるって分かったじゃねぇーか」

「いやぁ!よかった」なんて。
ゼフィルは言質を取った、と言わんばかりに立ち上がる。
「お前が、嫌な思いするのも最後かもしれないぞ」
「会うのは嫌なんだけど」
「おいおい、これで運命じゃないって分かったら、ずっといられる。皆一緒だ。何も変わらない。お前は畑にいられるんだぞ」

家族皆、変わらず共に。

「セレノス兄様は王命として言っちまった分、引き下がれねぇ。ここでレオンハルトに会って、振ってもらえばいい」
「だけど、どうやって会うんだよ。振られる前提でも嫁入り準備とか絶対に嫌だ」

エリオスの主張に不敵な笑みを作るゼフィル。
鷹揚に立ち上がり、色気ある胸に手を当てる。

「このゼフィル兄様を、誰だと思ってるんだ……王国外交官だぞ?」

人の良い表情を引っ込めて、エリオスに指を指す。
秘められていた王子の品格を、思う存分放出させた。

「--ソルグラン王国第四王子ゼフィル・ソルグランが命じる。エリオス・ソルグラン王立農業使は、王立外交官に同行し、ヴァルデンハイト王国自慢の特産品を調査せよ--」
「そんなんアリかよ!!?」


エリオスの絶叫に、またもジョスは肩を震わせた。
本人を差し置いて、事は次第に大きくなって行くのだ。

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