いじっぱりなシークレットムーン

奏多

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10:Protecting Moon 1

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 遥か天空に浮かぶ月よ。
 運命という名の星を巡り合わせる、道標の光を放つ月よ。

 どうか今一度、愛するひとを守れる力を――。



 ***

  
 リビング――。

 ふたりバスローブ姿で窓の前に座っている。

 朱羽の腕に身体を凭れさせるようにして、朱羽の膝の上で横抱きされているあたしは、朱羽と共に、窓から見える光景に目を細めていた。

――朱羽、夜明けを見よう。

 カーテンを開け放った窓の奥、漆黒の闇夜が明け、葛西臨海公園の遠景を朝日の暖色が染め、天陽が神々しく輝く様は、なんとエネルギーに満ちた活力を見せるのか。

 生命の燃える様を見た気がして、感動した。

 "戦うことに不安がないか"と問われれば、ないと断言は出来ない。朱羽が相手にしているものは、あたしが想像出来ない世界にいるからだ。

 "会社や社員、友達に愛情がないのか"と問われれば、それら以上にすぐに助けたい愛するひとがいるのだと、平謝りをするしかない。

 今、朱羽が茨に身を巻かれる原因となった、苦難の道を選んだ理由が、朱羽があたしに会いに来るためだというのなら、あたしもまたどんなに苦難の道であろうとも、朱羽を……朱羽との愛を守りたいのだ。

 恋に走る愚かな女だと罵られても構わない。

 朱羽と再会するまで、あたしがそんな女だったとは思いもしなかった。

 今まで愛を注いだ会社以上に、社長が築き上げたあたしが帰る大切な場所以上に、あたしは愛する存在を助けたいのだ。

 財閥というものがどんなものかはあたしにはわからない。

 だけど向島専務と杏奈の一件で、向島専務は次期当主の座を手に入れた代償に優しさを捨て、実の妹を虐げるサディストに変貌した。杏奈が恋を諦めるほどの脅威が潜むものであることは、なんとなくでもわかる。
 
 あたしは朱羽を、向島専務のような生き方をさせたくない。たとえ身分違いだと罵られようと、あたしは杏奈のように朱羽の傍から離れたくない。

 ただ――。
 結城と衣里を思うと、たまらない気持ちになる。

 今会社が大変なのになにを突然言い出すかと、あたしが彼らの立場なら、そう言うはずだ。

 だからせめて、結城が社長になったのを見届け、新しいシークレットムーンになるのを確認してから退職しようと思うんだ。

 朱羽に言いたくないことを言わせてしまった感はあるが、朱羽は恐らく、すべての事情をあたしに語っていない気がする。

 きっとまだまだ大変なことがあるのだろう。


 戦おう――。

 この先なにが待ち受けていても、あたしは朱羽を守るために戦う。
 今度はあたしが、朱羽を守り、そして……ずっと、愛し続ける。

 そう誓ったあたしの視線の先には、朝日にきらきらと輝く茶色い瞳があった。

 視線であたしは告げる。

 なにがあっても絶対離れないと。
 朱羽の心を守るためにベストを尽くすと。

 優しげに細められた朱羽の目から、陽光に燦々と煌めく雫が零れ落ちた。幾千もの光の粒子で出来たようなそれは、あたしの手の上にぽとりと落ちる。

「今度は、勝った時に嬉し泣きして? 泣かれたら、あたしの決意って、そこまでありえないと思われていたようで、悲しくなるから」

 笑いながら、朱羽の涙を指で拭う。

「あたしの愛情を、見損なわないでよ。……それとねぇ、謝らせてくれる?」

「謝る?」

 朱羽の茶色い瞳が訝しげに揺れた。

「ん。……このマンションで、あたしは朱羽を好きじゃないと断言してしまった。他にも色々傷つけることを言ってしまったと思う。それを謝りたい。朱羽の事情も知らず、ごめんなさい」

 下げた頭は、すぐに朱羽の手で上に上げられる。
 朱羽の翳っていた顔が、陽光に照らされた。

「よせって。俺は俺の意志で、忍月を利用することを選んだ。それはあなたのせいではない。俺が勝手にあなたを追いかけてきただけで、焦ってしまっていたから、あなたが謝ることは……」

 星の王子様は、太陽の王子様に変わる。

「ありがとう、好きになってくれて」

「……っ」

「ありがとう、シークレットムーンに来てくれて」

「陽、菜……っ」

「再会した時、九年前のことを引き摺ってあたしは逃げていた。悪いことをしてしまった罪悪感に。……だけどね、それでも惹かれていた。九年前の快楽が蘇生したのかと思ったけど、過去を忘れるくらい、今のあなたを好きになった。満月のこともあって、素直になれなくてごめんね。ここまでしてくれたのに、簡単に酷いことを言ってしまってごめんね」

 朱羽の匂いが強くなり、朱羽の熱に閉じ込められた。

 抱きしめられたのだ。

「いい。いいんだよ、陽菜」

「ううん、言わせて。最初年下上司、しかも九年前に、満月で関係した……えっちが上手かった中学生が上司なんて、最悪だと思った。……忘れていたなんて、あたしの方が最悪だった」

「はは……」

「営業モードでとにかく線を引こうと残業してて。キス……しそうになったでしょ」

「うん。……したかった」

 心が甘く疼く。

「電話が鳴らなかったら、あたしは拒まなかった」

「………」

「……あの時から、多分あたしは……朱羽に惹き込まれていたんだと思う。仕事と友達が居ればいいって本気で思ってたあたしが、満月でもないのにキスをしようとするのなら、もうそれは……」

 朱羽は優しくあたしの後頭部を撫でる。

「それを認めたくなかった。会ってすぐの九年前に過ちを犯した相手を、そんな対象にするなど。すべては満月のせいだと思うようにしていた。同時に、快楽で惹かれたとも思いたくなかった。だから言ってたわよね。"あたしはそんなに簡単な女"ではないって」

「……うん」

「あれはあたしの戒めでもあったの。その境界は、満月を受け入れてくれた時に、なくなってしまった。防波堤が崩れて、やじまホテルの夜は本当に朱羽が好きで好きで仕方がなくて。……つらいね、好きだと言えない、繋がれないセックスは。初めてあたしは、セックスが愛の営みだという意味がわかったわ。本当にごめんね、あたしがこうだったから色々と我慢させたり無理させたり」

「……こちらの方こそごめん。あなたの心が向くまで待とうとしていたけど、あなたに触れたら、好きが溢れて我慢出来なくなって」

 朱羽はあたしの手に指を絡ませる。

「結城さんの女だと思ってた。忍月に居る時からずっと。どうして同じビル内、こんなに近くにいるのに気づいてくれないのか、どうして俺は会いに行けないのか。普通の男のように気軽にあなたに声をかけることが出来ずに、ずっと片想いをし続けているのが嫌で苛立って。……忍月なんて潰れてしまえと幾度も思った」

「だけどその忍月のおかげで、朱羽は今ここにいる」

 あたしは繋がったその手をきゅっと握った。

「そう。だから複雑」

 朱羽は苦笑した。

「朱羽はなんでそこまで忍月を嫌うの?」

「俺、渉さんと初めて会った時、そこには初めて会うじいさんと義母も居て。勝手に忍月の次期当主の子供だと認知したことを告げられた。俺には母がいるのに、勝手に新しい母だとかいう女を作られて、そんな理不尽なことを、"妾腹なのに忍月に入ることを光栄と思え"と、じいさんに言われてさ、あまりに一方的で腹をたてて……心臓発作を起こしたんだ」

 朱羽も繋げた手を、ぎゅっと握ってくる。

「発作で苦しくてたまらなくて。床に倒れた俺は、薄く目を開いて手を伸ばしたんだ。まだ死にたくない、まだ生きて……行方をくらましたあなたに一度でもいいから会いたい。死ぬ一歩手前で、あなたを思い出して。どうしても死にたくない、助けてくれと必死に願った」

 朱羽はため息をついて言った。

「その手を掴んで引っ張り上げてくれたのは、渉さんだけだった。今でも助けを求めた祖父と義母の冷たい目は記憶に残っている。そしてこう話していたのも」

 "父親譲りで身体が弱いなら、使いものにならない"

「そして祖父は、狼狽して騒ぐ他の兄達を牽制して言った」

 "こんなことくらいで、動じるな"

「酷い……、なにそれ」

 "こんなこと"

 発作で苦しんでいるのが、こんなこと!?

「ふふ、一緒に暮らしていた渉さんがされたことに比べれば、まだまだ可愛いものだろうけれど、さすがに死にそうになっている奴が居る時に言う台詞じゃないよね。それを一喝したのが、渉さんだった」

 "あなたが俺の弟として勝手に決めた。ならば俺は、兄としてすべきことをします"

「渉さんも初めてその場で、弟達だと紹介されたみたいでね。赤の他人同然なのに、渉さんは病院に搬送する時も、ひとりでずっと付き添ってくれたんだ。初めて会う俺を心底心配そうに、ずっと手を握っていてくれた。同情して欲しかったわけじゃないけど、あの眼差しは俺、絶対忘れない。あれで俺は、渉さんだけを受け入れた。……俺は兄は、渉さんだけしか認めない」

 朱羽が他の兄達をOSHIZUKIビルで声をかけようとしていないのは、これが尾を引いているのか。
 
「それと……、渉さんが俺の狂った母親を入れた病院。渉さんも知らないうちに勝手に転院されて、渉さんが行方を掴んだ時には、母は既に死んでいたそうだ」

「そんな……っ」

「ろくに食事も与えられず、最期には俺の名前を呼んでいたのだと、渉さんが金を掴ませたら医者はそう語ったらしい」

「それは、現当主の仕業?」

「義母だ。彼女は愛人に容赦ないと、渉さんからも聞いていた。渉さんの母親も彼女に殺されたらしい。渉さんの目の前で」

「目の前で殺された、の?」

 全身から血の気が引く。

 殺人を犯した人間はのうのうと生きていれるのは、財閥だからなのだろうか。財閥とは、そんなに罪を隠蔽できる場所なのだろうか。

 明朗で沙紀さんにべた惚れの宮坂専務からは、そんな過去があったように思えない。専務は本家で恵まれた生活をしていたように思えていたから。

「どんな方法で殺されたのかはわからない。渉さんが詳細を濁すから。だけど逆に言えば、俺に言えないほどの残虐な方法だったんだろう。ただ単にナイフでぐさりなどではなく。……俺の母さんだって、死因は餓死だという。この豊かな日本でっ」

 震える朱羽の手を、反対の手で包むと、その手をさらに朱羽が外側から包み込んだ。力が入っていた。

「あいつらが欲しいのは、渉さんや俺の中にある死んだ父親の血だけだ。だったらすべての血を抜き取って差し出して終わりにしたいよ!!」

「朱羽……」

 垣間見える朱羽の憤怒に、涙が出そうになる。

「渉さんも相当に苦労しているんだ。それを沙紀さんと月代社長が救った。そして俺の生きる力をくれたのは、渉さんと……あなただ」

 朱羽はあたしを胸の中に掻き入れた。
  
「俺も渉さんも、愛するひとを忍月の手に触れさせないように策を練ってきていた。俺も、まだ隣にいないあなたを絶対手に入れたくて、ずっと」

「……っ」

「俺があなたのすべてを守れるとは言い切れない。あなたに苦労をかける部分は必ず出てくる。それでも、俺と戦ってくれる?」

「勿論よ」

 即答すると、朱羽はさらにぎゅっと強く抱きしめてきた。

「ありがとう。次期当主になろうとも、戦うと俺の手を取ってくれたあなたを必ず傍に置く。それは誓うよ」

「うん」

「できるなら俺は、渉さんと共に、忍月を出たいんだ。もしそれがうまくいったら、車もこのマンションも捨てることになるけど……」

 朱羽はあたしを見た。

「そんな俺でもいい? あなたに相応しい男になりたくて、これもオプションにしていたんだけれど」

 そう、苦笑する。

 "あなたに相応しい男になりたくて"

 ハイスペックすぎるから!!

「オプションなんていらないわ、あたしは朱羽だけが居ればいい」

「ありがとう……」

 朱羽の声が嗚咽混じりになる。

 愛おしい――。

 朱羽が愛おしくてたまらない。
 胸が苦しくて、切なくて……泣きそうになる。

「もしここを出ることになったら、あなたの家に泊めてくれる?」

 朱羽は泣きながら笑う。

 その顔に、突然心臓がドキドキして苦しくなった。

「も、勿論! いつでもおいで? 狭いけど」

 変調を隠すように笑ったが、心拍数が凄い。口から心臓が出てきそうだ。

「壁が薄くても、声、我慢してね? 俺、手加減しないから」

「え? しゅ……んんっ」

 朱羽に唇を奪われる。

 触れあった柔らかな唇の感触に、全身がざわざわと粟立つ。
 ちゅるりと音をたてて口の中に舌が忍ぶと、腰のあたりがもやもやして秘部が疼いてたまらない。

「……陽菜?」

 あたしの様子を見ていただろう朱羽が、怪訝な顔を寄越す。

「……っ」

 窓から光が差し込み、麗しい朱羽を際立たせた。

 やばい、やばい。

 ドキドキが止まらない。

 なに、これ。

「陽菜……」

 朱羽が俯くあたしの顎を手に取り、上に上げた。

 朱羽の顔が近づくだけで、発熱と発汗がひどい。
 握ったままの手を外そうとしても、朱羽の手が離れない。

 僅かに戦慄くあたしの唇。
 顔が紅潮して、髪が汗にべたつく。

 目も涙目になってしまって、朱羽が少しぼやけている。

「……誘ってる?」

「は?」

「すごく、俺が好きで仕方がないって顔してるけど」

「え、好きだよ?」

「……今まで以上に」

 朱羽の手が頬に当てられると、びくんと身体が跳ねた。

 なにか身体がおかしい。
 脈拍が半端なく上昇して、息苦しい。

「そんな顔されると、凄く愛されているって思っちゃうよ?」

「今までも凄く愛しているよ?」

「今まで以上に、陽菜の全部が、俺を好きって叫んでいる」

「え!?」


「……また俺に惚れた?」


 優しげな微笑みに、心臓がまた早くなる。
 ああ、きっと正解だ。朱羽に二度目の恋をした気がする。

「あたし、心臓病移ったのかも」

 知られたくなくて、目をそらしながらそう言った。

「移らないし、俺はもう治ってる」

「だ、だけど……顔をそんなに近づけさせないで!!」

「なんで? 今まで中まで繋げて、溶けるように密着していたじゃないか」

「……っ」

「そんなに蕩けるほど好き? 俺のこと」

 至近距離から朱羽に囁かれる。

「離れ……っ、心臓が苦しいっ」

「凄く好きなの、俺のこと」

「朱羽っ」

「答えて。厄介な問題を抱える俺を、今まで以上に好きになったの?」

 許してくれそうにもなく、あたしは沸騰した顔で頷いた。

 すると朱羽が、ふわりと……嬉しそうに笑った。

「ありがとう。その顔もっと見せて? もっと蕩けて?」

「見ないで、もう恥ずかしいっ」

「なんで恥ずかしいんだよ」

 朱羽が間近であたしの顔を覗き込んだ。
 ああ、蕩けているのは朱羽の瞳じゃないか。

「たまらない……」

 朱羽の唇が、軽く跳ねるようにあたしの唇に触れる。

「凄く可愛い。あなたのすべてが可愛すぎて、おかしくなりそう」

 何度も、何度も、キスをしてくる。

「俺と戦おうとしてくれるあなたが、愛おしくてたまらない」

 触れる時間は長くなる。

「俺は十年、何度も何度もあなたに恋をしてるよ?」

 やるせなさそうな熱い息が顔にかかる。

「俺を見てればわかるだろう? 俺を見てたら、俺の全身から、俺の言葉から、あなたが好きでたまらないって、わかるだろう?」

 舌が入ってくる。
 舌が触れあうだけで、腰のあたりからざわざわと快感が波打つ。
 
「もっと……俺に惚れろ、陽、菜っ」

「……っ」

 朱羽の舌に酔い痴れると同時に、じっとあたしを見て深いキスをする朱羽の目の強さに、快感が全身に広がっていく。

「……は、ぁっ……」

 朱羽の唇が首筋に落ちると、ぶるりと身震いをしてしまった。

 朱羽とは沢山セックスをしているのに、初めてするような緊張に身が強張る。肌に唇を当てられる度に、あたしは甘い声を漏らしながら、身体を震わせた。
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