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第3章:歯車は動き出す
100話
しおりを挟む「…あいつ…っ」
おれを脅してるつもりなのか?
それに…地下を爆発をしたのがおれだという事も、芹名たちがおれの下についてるのも、なぜ知っている?
爆発実行の際、痕跡は一切残していないし、メディアにも報道はされていなかった。
あれだけ徹底的に痕跡を消したのになぜ――…?
「…相変わらず読めない奴だ、一体どこまで知っているのか。…芹名、朋也の所にはおれだけで行く。」
「なっ…!龍司様!トモの言う事に従うおつもりですか!?」
「――おれ1人で来いと書いてある」
「ですが!!トモがなにを考えているのかわかりません!!龍司様を陥れるための罠かもしれません!!」
龍司の言葉に凄まじい勢いで芹名が詰め寄ってくる。
普段感情をあまり表に出さないだけに少し驚きつつも、落ち着かせようと芹名の肩に手を置いた。
「―芹名、おれなら大丈夫だ。…もし隠れて護衛でもして、それが朋也に見つかってみろ。爆発の事も、お前らがおれの護衛をして下についてる事も、ヤツにはなぜか筒抜けなんだ。護衛がばれたら、百合亜姉さんと湊になにがあるかわからない…。」
「龍司様、でも…!!」
「―芹名。…護衛はいらない。…ただ、24時間経ってもおれが戻って来なかったらその時は動いてくれ」
「ッ!!!」
頼んだぞ。と言って肩をポンポンと叩けば、不安そうな表情のまま視線を落とす芹名に苦笑する。
全く…芹那は心配しすぎだ。
ハンガーにかけていた薄手のジャケットを羽織ると、財布と携帯をポケットに入れる。
不安気に龍司を見る芹名の視線が、痛いほど感じる。
龍司はその視線に気づかないふりをして、小さく「頼むぞ。」と言うと、部屋を出ていった。
零達の護衛がないという事は、最悪の場合どうなってしまうのか…自分では分かっているつもりだった。
あの時、洸太郎に依頼された殺し屋が龍司の部屋に来た時も、その後洸太郎の会社へ行った時も零達が来なければ確実に死んでいた。
今、ここにこうやって存在する事は出来なかった。
龍司は家を出るとスマートフォンを取り出し、操作する。
着信履歴のページを表示し、下へとスクロールすれば一番下に現れたタクシー会社の電話番号をタップした。
「龍司様。専用ドライバーの私がいるのに、タクシーをお呼びになるのですか?」
突如かけられた声に、反射的に顔を上げる。
「――っ!…と、驫木…」
直ぐ近くに立っていた驫木は、悲しそうな表情で龍司を見つめていた。
なんで驫木が今、ここにいる?
いるとは思っていなかった驫木の姿に、落としそうになったスマートフォンを握りしめた。
視線は驫木から逸らさないまま、龍司は繋がった状態のままの受話器を耳に当てる。
「久良地区高芝4丁目、天水公園まで―…至急お願いします。」
表情を変えずに見てくる驫木から先に視線を逸らしたのは、龍司の方だった。
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