エロゲ世界に転生したが、俺は平凡な青春を過ごしたい。

蜜りんご

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1部:1年生

第23話

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冬休みが明け、少し。ついに、音楽祭の練習が始まった。俺は、指揮者をやってみたくて立候補したところ、2人しかやりたい人がおらず俺は無事に自由曲の担当となった。別に自由曲でもなんでもよかったけど、相手の子が課題曲やりたいとなったので俺は自由曲担当だ。

ちなみに嬉しいことに、自由曲の伴奏者はなんとすみれちゃんだ。あんなに可愛いのに、さらにピアノも弾けるのかなんて思ってしまった。俺の中でもすみれちゃん萌えポイントが上がった瞬間だった。

こんなところですみれちゃんと関わり合えるなんて思ってなかったから、超嬉しい。指揮は、俺なりに工夫してゆっくりするところだったり、強弱をつけるところをオーバーにやってみている。

こうした方が、歌ってる側からしたら見やすいかななんて鏡の前とかで練習してみている。すみれちゃんは、ピアノじゃなく指揮者である俺を見続けるので最初ちょっと戸惑った。好きな子に真剣な表情だけどガン見されるのはちょっと恥ずかしかったし。

「田中くん、ここのラスサビの前のところ楽譜には無いんだけどちょっと溜める感じをだしたいんだけどどうかな」

「あー、その方がいいかも!皆にも聞いてみるね」

こうして各パートのリーダーに伝えに行ったりしたりで、この1ヶ月間すみれちゃんとも距離を近づけられたと思う。田中君(他人行儀)から田中君(クラスメイト)に変わった感じあるし。俺の中ではすみれちゃんとだいぶ関係が進行したと思っている。


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音楽祭当日。これまでなんども練習を重ねてきて、着実に成長していると思っている俺は割と緊張せずにこの当日を迎えた。ただ1番手に決まったということもあり、本番が近づくにつれて手が震えてきてしまった。

(いや、これ以上に緊張するプレゼンとか就職面接とか色々乗り越えてきただろ、俺。普通にビビるな…!!)

声出しを兼ねた校歌斉唱を終え、出番を迎える。

「それでは1番、1年6組お願いします」

「西野さん、頑張ろうね!」

「、うん」

壇上に並んだ俺達1年6組は、特に何のミスもなく課題曲を終わらすことができた。次はいよいよ俺が指揮をとる、自由曲だ。指揮台に上がり、会場に礼をする。そして、すみれちゃんと見つめあって息を吸いすみれちゃんの滑らかな伴奏が始まる。

まずはテノールだけのパートから入り、そこから全員が合わせて一つの音となる。すみれちゃんやクラスの皆1番、2番が終わりラスサビへと盛り上がるパートへと向かっていく。俺の指揮にも熱が入り、最後は伴奏なしだから俺が結んで曲が終わる。

歌い終わり一呼吸おき、会場からは拍手が巻き上がる。俺達は礼をして、無事ミスというミスをせずに終わることができた。その後はもう割とお楽しみモードで鑑賞した。なんか、若い子達が頑張ってんなぁって思ってしまいちょっと泣きそうになってしまった。

「それでは、学年ごとの最優秀賞、優秀賞、指揮者賞、伴奏者賞の発表をしたいと思います。呼ばれたクラスの音楽祭実行委員は壇上に上がってください」

全学年の発表も終わり、審査員による審査が終わり最優秀賞と優秀賞のクラスが発表される。

「1年生優秀賞、1年3組」

『きゃー!!!!』

3組かぁ。確かに上手かったよな。自由曲の指揮者の子もなんか動きがすごかったし。こう滑らかさが俺とは比べもんにならない動きしてたよな。

「1年最優秀賞、1年7組」

『わぁぁぁ!!!』

あー7組ね。伴奏も超うまかったところだ。それから指揮者賞、伴奏者賞の発表があったが、俺の名前もすみれちゃんの名前も呼ばれなかった。決してすみれちゃんが下手なわけでは無い。

「西野さ、」

ん、賞取れなかったけど、そんな落ち込まないでね。って言おうと思って隣を見て目を疑った。

「賞取れなかった…」

小声で泣きそうな顔で、目を潤ませているすみれちゃんがいた。けど、俺に話しかけられたことに気づいて、急いで目をぱちぱちさせてた。可愛い。心臓が痛い。なんでこんなにも可愛いんだ。

「ごめん田中君何?」

「賞とれなかったけど、すみれちゃんのせいじゃないし落ち込まないでねって言いたかった。すみれちゃんの演奏めっちゃ良かったし」

「そ、う?ありがとう。そっか、でもちょっと悲しいな」

はにかみ笑いするすみれちゃんを見て、俺の脳内すみれちゃんフォルダが潤っていく。何か賞を取れたわけではないが、胸の中には何か言葉にしがたい達成感のようなものを皆感じているだろう。こうして俺達1年6組の音楽祭は幕を閉じたのだった。
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