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第一章

お風呂にいれられてます②

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 有無を言わせない言い方とやり方は、やっぱり特権階級の人ならではなんだろうか。なんてちょっと失礼なことを考えていると、ハインリヒ様が苦笑する。しまった。ちょっとジト目で睨んでしまっていた。

 今は髪の毛を洗われてて気持ちがいい。かなり丁寧に洗ってくれている。

「俺は戦場暮らしが長かったから、大抵のことは一人でやってしまうんだ」

 意外だ。公爵様ともなれば、身の回りの世話をする人に囲まれて、何から何までやってもらうのが当たり前なんだと思ってた。
 それに、手慣れてる、って思ったのは……
「連れ込んだ女の世話を焼き慣れてて、手際がいいわけではないからな?女の身体を洗うのは初めてだ」
「……ぐ」
 何を考えていたのか、バレてる。

 しばらくシャワーを浴びたあと、ハインリヒ様がまた抱き上げてくれて、湯船のほうに移動してくれる。 
 甲斐甲斐しい美形なんて存在するんだ。この人絶対もてるよねえ…。

 お湯に浸かると、あーやっぱり日本人だなーって思う。
 温度は熱すぎず丁度良かった。

 慣れないのは後ろから抱きしめられていて、ハインリヒ様の脚の間に座らされていることなんだけど。離してくれないので、どうしようもない。


 今なら質問しても答えてくれるだろうか。
 否定するからスイッチが入るんじゃないかな、と思った私は、別方向から質問してみることにした。

「あ、あの…っ。何故私がサラディーヌ…だと思うんですか?今まで会ったことないんですよね?」

 見えないスイッチを警戒しながら問いかけると、ハインリヒ様が身じろぎする。大丈夫だよね、スイッチ触ってないよね?

「カリンメテオール様のご息女サラディーヌ様が、この年、この月、御柱と共に、異世界から転移してくると、公爵家に伝わる予言書に浮かび上がった。予言書の通りの現象が起きて、御柱の元まで行くと、我々とは異なる衣服を身に着けた、カリンメテオール様とそっくりの、特徴的な黒髪の貴女が、魔狼の群れに襲われていたというわけだ」

 この質問の仕方は正解だったようだ。理性的な答えが返ってきた。
 ほー…。予言書なんてこの世界にはあるのね、便利。…じゃなくて、えーっと。

「…っ、でも黒髪なんて珍しくないんじゃないですか?」
 カリンメテオールという名前にどきっとしたのは内緒だ。お母さんの名前は花林だったから……。

「そうでもないんだ。我が国では黒髪はそう多くは無い。この国の王家の象徴色は黒。国名もシュヴァルツ王国という。王族は皆、美しい黒髪で、カリンメテオール様も貴女と同じ、艶やかで真っすぐな髪質だった。特徴的なこの美しい漆黒は、他には見たことが無い」

 そう言って、私の髪を一房持って唇を落とした。うう…普通の人がやったら、なんてキザなんだろう、って思うけど、ハインリヒ様がやると、さまになっていて"こうかはばつぐんだ!"なんですけど…っ。年齢=彼氏いない歴の私には破壊力がありすぎる…。

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