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第一章
名前呼び③
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そんなものがあるのかー。でも魔法の使い方なんてちっとも知らないんですけど…。
「光の防御魔法。ハインリヒ様がご覧になられたと、話はうかがっております。魔狼に対して、光の壁を作り出しておられたとか」
あー。
「あれは…。実はどうやったのかさっぱり分からないんです。確か、こちらの世界に来るきっかけになった小箱があったんですけれど、それを狼の鼻先に向かって投げつけたら、いつの間にか発動していて…」
ハインリヒ様がビクっと身体を震わせた。膝の上に乗せられていたから分かったんだけれど……何か気になることでもあったんだろうか……
私の小さな疑問は続くエリアスの言葉にどのように答えるか悩んでしまって、霧消してしまった。
「サラ様の世界では、魔法はどのような使用方法かは分かりませんが、この世界ですと、基本は魔法陣を用いて、魔法を使用します。小箱…どのようなものですか?表面には何か書かれておりましたか?今は何処に?」
「えっと…向こうの世界には魔法は無かったです。魔法って概念はあるんですけど、実際には小説とか、架空の物語にしか存在してなくて。それと、小箱は寄木細工で、手のひらに乗る大きさでした。からくり箱だと思ったんですが開けられなくて、紋章みたいなのが彫られていて…。投げたときにその紋章みたいなのに触れたら、一瞬光ったのまでは見えたんですが、そのあとの行方は分からないです…」
言った途端、抱きしめられていた腕から私は開放された。恥ずかしかった膝の上からこれで下りられる。
「魔法が無い……。本当に異世界なんですね。紋章…ちょっといくつか描いてみますので、該当するものがあったら教えて下さい」
そう言って、エリアスが杖を出現させた。
わお。ほんとに魔法がある世界なんだな。ゲームとかでよく見る両手杖のように見える。
両手杖を振ると、黒と白の竜が左右に配置された紋章や、黒竜のみが描かれた紋章、蔦のようなものが剣に絡んでいる紋章など、エリアスが空中に描き出した紋章は、結構な数があったが、どれも違うものだった。
「…どれも違うようですね…。うーん…紋章では無く、魔法陣だったのかもしれませんね。魔法を起動させることが出来ない人用のものだったのかも?あらかじめ、魔法を使う当人と波動が合っていれば、他人が描いた魔法陣で魔法を起動させることも可能なのです」
聞けば聞く程、魔法に対して興味が湧いてくる。
「魔法の使い方とか、紋章がたくさん載った本とかはないんですか?図書館とかあったら行ってみたいです」
「魔法研究所に行けたら、いいんですけどね」
またエリアスがちらりとハインリヒ様を窺う。さっきと違って、ジト目になっている。なんでだろう?
ハインリヒ様がどんな表情をしているのか、好奇心が沸き上がった。
見ると、気まずそうなハインリヒ様と目が合ってしまった。なんだろう、この表情……
子供が悪いことをして、大人に叱られたときのような表情になっている。
「…城には書庫があるが……あとで貴族名鑑を持ってこよう。暫くは必要最小限の信頼出来る者にしか、貴女の存在を知られたくない。この部屋以外の出入りは禁じる」
「光の防御魔法。ハインリヒ様がご覧になられたと、話はうかがっております。魔狼に対して、光の壁を作り出しておられたとか」
あー。
「あれは…。実はどうやったのかさっぱり分からないんです。確か、こちらの世界に来るきっかけになった小箱があったんですけれど、それを狼の鼻先に向かって投げつけたら、いつの間にか発動していて…」
ハインリヒ様がビクっと身体を震わせた。膝の上に乗せられていたから分かったんだけれど……何か気になることでもあったんだろうか……
私の小さな疑問は続くエリアスの言葉にどのように答えるか悩んでしまって、霧消してしまった。
「サラ様の世界では、魔法はどのような使用方法かは分かりませんが、この世界ですと、基本は魔法陣を用いて、魔法を使用します。小箱…どのようなものですか?表面には何か書かれておりましたか?今は何処に?」
「えっと…向こうの世界には魔法は無かったです。魔法って概念はあるんですけど、実際には小説とか、架空の物語にしか存在してなくて。それと、小箱は寄木細工で、手のひらに乗る大きさでした。からくり箱だと思ったんですが開けられなくて、紋章みたいなのが彫られていて…。投げたときにその紋章みたいなのに触れたら、一瞬光ったのまでは見えたんですが、そのあとの行方は分からないです…」
言った途端、抱きしめられていた腕から私は開放された。恥ずかしかった膝の上からこれで下りられる。
「魔法が無い……。本当に異世界なんですね。紋章…ちょっといくつか描いてみますので、該当するものがあったら教えて下さい」
そう言って、エリアスが杖を出現させた。
わお。ほんとに魔法がある世界なんだな。ゲームとかでよく見る両手杖のように見える。
両手杖を振ると、黒と白の竜が左右に配置された紋章や、黒竜のみが描かれた紋章、蔦のようなものが剣に絡んでいる紋章など、エリアスが空中に描き出した紋章は、結構な数があったが、どれも違うものだった。
「…どれも違うようですね…。うーん…紋章では無く、魔法陣だったのかもしれませんね。魔法を起動させることが出来ない人用のものだったのかも?あらかじめ、魔法を使う当人と波動が合っていれば、他人が描いた魔法陣で魔法を起動させることも可能なのです」
聞けば聞く程、魔法に対して興味が湧いてくる。
「魔法の使い方とか、紋章がたくさん載った本とかはないんですか?図書館とかあったら行ってみたいです」
「魔法研究所に行けたら、いいんですけどね」
またエリアスがちらりとハインリヒ様を窺う。さっきと違って、ジト目になっている。なんでだろう?
ハインリヒ様がどんな表情をしているのか、好奇心が沸き上がった。
見ると、気まずそうなハインリヒ様と目が合ってしまった。なんだろう、この表情……
子供が悪いことをして、大人に叱られたときのような表情になっている。
「…城には書庫があるが……あとで貴族名鑑を持ってこよう。暫くは必要最小限の信頼出来る者にしか、貴女の存在を知られたくない。この部屋以外の出入りは禁じる」
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