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勧誘②
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透がRUJの真木に電話をかけている間、瀬名と佑、フィーアの3人はああでもないこうでもない……とベッドのそばの丸椅子を占領して意見を出しあっていた。だが、うまくまとまらない様子で見かねた透が通話を終えてから加わる。出ている意見を整理すると今のところこんなかんじだった。
① フィーアとグラウの分の証明書を地下層の闇業者に依頼して偽造する
② 証明書はフィーアのみで、グラウは布などで隠して物として扱い通過する
③フィーアとグラウをRUJ職員に変装させる
①はリスクが非常に高いため一旦保留し、②はグラウが地上層と地下層を結ぶ門のセンサーに異物とみなされる場合があるということで③の案を採用することになった。
「そういえば真木博士は今回の件なんておっしゃってました?」
『開口一番でそれは無謀だと言われたよ。グラウくんは目立つから当分自宅に隠すと言ったら渋々承知してくれたがね』
「でしょうね……。僕も今まとまった案でうまくいくのか不安しかないですから」
瀬名がそう言うとフィーアが椅子に腰かけたまま、うんうんと無言でうなずく。そこで再び透の携帯電話の呼び出し音が鳴った。
『……すまない、ちょっと出てくるよ』
「あ、はい。どうぞ。僕らはもう少し議論してますね」
透は瀬名たちに断りを入れると立ち上がり、少し離れた場所に移動する。携帯を耳にあてると相手は妻の亜紀だった。
『ねえ、今どこにいるの。そろそろ家に帰ってくる?今夜はあなたの好きな料理を作るから何か食べたいものがあったら遠慮なく言って』
『連絡が遅くなってすまない。夕食までには帰るから待っててくれるかい。何か必要な食材があれば帰り際に買っていこうか?』
地上層にある図書館で司書として働く亜紀は毎日帰りが遅くなる。ここしばらくは20時をすぎることがほとんどだ。だから夕食は基本的に佑と透の2人だけで摂ることが増えていた。
『じゃあお願いできるかしら、今地下層にいるなら手に入ると思うから。財布は持ってる?地下層は硬貨とか紙幣しか使えない店が多いから』
亜紀は今夜の夕食で使う予定の食材を挙げていく。何を作ろうとしているかを推測するのはそう難しくなかった。ミントの入ったポテトサラダ、ツナと玉ねぎのみじん切りをはさんだサンドイッチは透の大好物だ。
『……わかった。私は財布は常に携帯と連動させてるからもしかすると使えないかもしれないね。しまったな、いつもは予備の財布を持ってるんだが』
『そう。なら買えるものだけでいいからお願い。佑は近くにいる?よかったら何か食べたいものはあるか聞いてくれないかしら』
透はうなずき、携帯を耳から離して佑を呼ぶ。
「何、父さん。電話は誰から?」
『母さんからだ。今夜何か食べたいものはあるかい』
透に問われた佑はうーん、と少しの間考えていたがやがて「ケーキかな。ほら、この前父さん食べれなかったでしょ」と返した。
『そうだな。なら地下層で食材とケーキを買って帰ろう。母さんに伝えておくよ』
透は再び携帯を耳にあて、亜紀になるべく早く帰ると重ねて伝えてから通話を終了した。
《別の用事ができたようですなあ。私とグラウはいつでもいいですし、博物館の奥のあの森にいますから、どうぞご家族との約束を優先させてください》
『こちらから申し出たのにすみません……必ず迎えに来ますから待っていてください』
透の様子を見ていたフィーアが近づいてきて小声で言った。透がうなずき、謝罪するとフィーアはいいんですというように首をふった。
《さ、もう行ってください。今日は地上層の方といろいろと話せて楽しかったですよ》
① フィーアとグラウの分の証明書を地下層の闇業者に依頼して偽造する
② 証明書はフィーアのみで、グラウは布などで隠して物として扱い通過する
③フィーアとグラウをRUJ職員に変装させる
①はリスクが非常に高いため一旦保留し、②はグラウが地上層と地下層を結ぶ門のセンサーに異物とみなされる場合があるということで③の案を採用することになった。
「そういえば真木博士は今回の件なんておっしゃってました?」
『開口一番でそれは無謀だと言われたよ。グラウくんは目立つから当分自宅に隠すと言ったら渋々承知してくれたがね』
「でしょうね……。僕も今まとまった案でうまくいくのか不安しかないですから」
瀬名がそう言うとフィーアが椅子に腰かけたまま、うんうんと無言でうなずく。そこで再び透の携帯電話の呼び出し音が鳴った。
『……すまない、ちょっと出てくるよ』
「あ、はい。どうぞ。僕らはもう少し議論してますね」
透は瀬名たちに断りを入れると立ち上がり、少し離れた場所に移動する。携帯を耳にあてると相手は妻の亜紀だった。
『ねえ、今どこにいるの。そろそろ家に帰ってくる?今夜はあなたの好きな料理を作るから何か食べたいものがあったら遠慮なく言って』
『連絡が遅くなってすまない。夕食までには帰るから待っててくれるかい。何か必要な食材があれば帰り際に買っていこうか?』
地上層にある図書館で司書として働く亜紀は毎日帰りが遅くなる。ここしばらくは20時をすぎることがほとんどだ。だから夕食は基本的に佑と透の2人だけで摂ることが増えていた。
『じゃあお願いできるかしら、今地下層にいるなら手に入ると思うから。財布は持ってる?地下層は硬貨とか紙幣しか使えない店が多いから』
亜紀は今夜の夕食で使う予定の食材を挙げていく。何を作ろうとしているかを推測するのはそう難しくなかった。ミントの入ったポテトサラダ、ツナと玉ねぎのみじん切りをはさんだサンドイッチは透の大好物だ。
『……わかった。私は財布は常に携帯と連動させてるからもしかすると使えないかもしれないね。しまったな、いつもは予備の財布を持ってるんだが』
『そう。なら買えるものだけでいいからお願い。佑は近くにいる?よかったら何か食べたいものはあるか聞いてくれないかしら』
透はうなずき、携帯を耳から離して佑を呼ぶ。
「何、父さん。電話は誰から?」
『母さんからだ。今夜何か食べたいものはあるかい』
透に問われた佑はうーん、と少しの間考えていたがやがて「ケーキかな。ほら、この前父さん食べれなかったでしょ」と返した。
『そうだな。なら地下層で食材とケーキを買って帰ろう。母さんに伝えておくよ』
透は再び携帯を耳にあて、亜紀になるべく早く帰ると重ねて伝えてから通話を終了した。
《別の用事ができたようですなあ。私とグラウはいつでもいいですし、博物館の奥のあの森にいますから、どうぞご家族との約束を優先させてください》
『こちらから申し出たのにすみません……必ず迎えに来ますから待っていてください』
透の様子を見ていたフィーアが近づいてきて小声で言った。透がうなずき、謝罪するとフィーアはいいんですというように首をふった。
《さ、もう行ってください。今日は地上層の方といろいろと話せて楽しかったですよ》
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