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3章:葛藤
8話
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蒼空とバチバチしたあの日以降、愁の過保護さが更に増した。
より蒼空を意識するようになり、私はアルバイトへ行くのが気が重くなっていた。
バイトは楽しいけど、愁が蒼空を気にしているという板挟み。
精神的に疲れていた。どうするのが正解なのか、私は悩んでいた。
答えが出せないままバイトに行き、愁の様子も窺いながら、今まで通りに頑張った。
もう限界だった。何もかも上手くいっているとばかり思っていた。
でも、本当は違った。ずっと抱えていた胸のモヤモヤの正体が、ようやく分かった。それは…。
「大平さん、今日もお疲れ様」
小林さんといつも通り話していた。
その時、ふと思った。私は心の中のどこかで愁の優しさが重いと感じていると…。
暗い夜道を一人で帰るのは怖いので、正直助かってはいるが、たまには一人にしてほしい。
私にだって、私の時間がある。ずっと一緒はしんどい。
それに、せっかく新しいお友達ができたから、そのお友達ともっと仲良くなりたい。
なのに、常に愁が傍に居たら、お友達と仲良くなる機会を奪われてしまう。
私は地元を離れて生活しているため、地元の友達がいない。
大学の友達以外、他に友達がいないため、このチャンスを逃したくない。
その上、恋愛絡みで新たな問題が発生した。
もう恋愛でのトラブルはしんどい。帰り道だけの話なら、すぐに言えるのに…。
ここにきて蒼空の問題も…となると、言いづらい。迎えに来ないでと言ったら、愁が変に誤解しそうで怖い。
どう切り出したらいいのか分からない。なるべく愁を刺激しないように、小林さんと仲良くしつつ、蒼空との距離感も考えながら、バイトを続けたい。
私にはどうしたらいいのか分からず、愁をよく知る人物を招集し、相談に乗ってもらった。
*
「大平さんが俺達に相談したいなんて連絡してくるの、珍しいね」
私は藁にも縋る気持ちで、中山くんと愁の元カノであり、現在は中山くんの彼女の幸保さんを呼んだ。
「二人共、お忙しい中、呼び出してごめんね」
本当は中山くんにだけ相談したかったが、彼女がいる人を単体で呼び出したら、彼女側としては嫌なので、幸保さんにも一緒に来てもらった。
「全然大丈夫だよ。で、俺達に相談したいことって、もしかして…」
中山くんは私が話を持ちかけた時点で、気づいていたみたいだ。
そりゃそうか。私と中山くんの間にある共通点は、愁しかないのだから。
「うん。そのもしかしてです。実は…」
幸保さんは話を聞いて、複雑な気持ちになるかもしれない。
それでも私は、切羽詰まっていた。二人に相談しなくてはいけないくらい、追い詰められていた。
だから私は、正直に全部話した。二人は優しく受け止めてくれた。
その瞬間、少しだけ心が軽くなった気がした。
「なるほど。話してくれてありがとう」
やっぱり中山くんは、とても理性的だなと思った。
だから、こうして相談したくなるのかもしれない。話をちゃんと最後まで聞いてくれるから。
愁が全く話を聞いてくれないとは言わない。ただ、今は良い関係を築き上げているからこそ、この関係性を壊したくないという気持ちが大きくて。上手く切り出せずにいる。
このままじゃまずい。早くこの状況を打破し、早く元通りの幸せな時間に戻りたい。
今の私は自分の幸せを守るために必死で。周りが上手く見えていなかった。
「愁の気持ちも分からなくもないけど、大平さんの気持ちも分かる。
そのバイトを紹介してくれた人に対して、ライバル視するのは分かるけど、大平さんにも大平さんの時間があって。そこでしか築き上げられない関係性もあるから、ある程度お互いに自由の時間も必要だと俺は思う」
中山くんが私の気持ちを分かってくれて嬉しかった。
それと同時に中山くんの言葉に、私はとても共感した。
「そうなの。私にも私の居場所があって。なるべく長くそこで働きたいから、自分の居場所を大事にしたいの」
自分の悲痛な想いを一生懸命、訴えた。
この時、初めて自分が今までずっと抱えていた不満に直面した。
「大平さん。俺達に話したように、愁に本当の想いを話した方が良いと思う」
冷静に中山くんに諭されて、胸の奥がギュッと掴まれたような気がした。
「あの…。私もそう思います。ずっと一緒に居たいのなら尚更です」
本当にその通りだ。ずっと黙って話を聞いていた幸保さんにも優しく諭され、私はようやく決心した。
より蒼空を意識するようになり、私はアルバイトへ行くのが気が重くなっていた。
バイトは楽しいけど、愁が蒼空を気にしているという板挟み。
精神的に疲れていた。どうするのが正解なのか、私は悩んでいた。
答えが出せないままバイトに行き、愁の様子も窺いながら、今まで通りに頑張った。
もう限界だった。何もかも上手くいっているとばかり思っていた。
でも、本当は違った。ずっと抱えていた胸のモヤモヤの正体が、ようやく分かった。それは…。
「大平さん、今日もお疲れ様」
小林さんといつも通り話していた。
その時、ふと思った。私は心の中のどこかで愁の優しさが重いと感じていると…。
暗い夜道を一人で帰るのは怖いので、正直助かってはいるが、たまには一人にしてほしい。
私にだって、私の時間がある。ずっと一緒はしんどい。
それに、せっかく新しいお友達ができたから、そのお友達ともっと仲良くなりたい。
なのに、常に愁が傍に居たら、お友達と仲良くなる機会を奪われてしまう。
私は地元を離れて生活しているため、地元の友達がいない。
大学の友達以外、他に友達がいないため、このチャンスを逃したくない。
その上、恋愛絡みで新たな問題が発生した。
もう恋愛でのトラブルはしんどい。帰り道だけの話なら、すぐに言えるのに…。
ここにきて蒼空の問題も…となると、言いづらい。迎えに来ないでと言ったら、愁が変に誤解しそうで怖い。
どう切り出したらいいのか分からない。なるべく愁を刺激しないように、小林さんと仲良くしつつ、蒼空との距離感も考えながら、バイトを続けたい。
私にはどうしたらいいのか分からず、愁をよく知る人物を招集し、相談に乗ってもらった。
*
「大平さんが俺達に相談したいなんて連絡してくるの、珍しいね」
私は藁にも縋る気持ちで、中山くんと愁の元カノであり、現在は中山くんの彼女の幸保さんを呼んだ。
「二人共、お忙しい中、呼び出してごめんね」
本当は中山くんにだけ相談したかったが、彼女がいる人を単体で呼び出したら、彼女側としては嫌なので、幸保さんにも一緒に来てもらった。
「全然大丈夫だよ。で、俺達に相談したいことって、もしかして…」
中山くんは私が話を持ちかけた時点で、気づいていたみたいだ。
そりゃそうか。私と中山くんの間にある共通点は、愁しかないのだから。
「うん。そのもしかしてです。実は…」
幸保さんは話を聞いて、複雑な気持ちになるかもしれない。
それでも私は、切羽詰まっていた。二人に相談しなくてはいけないくらい、追い詰められていた。
だから私は、正直に全部話した。二人は優しく受け止めてくれた。
その瞬間、少しだけ心が軽くなった気がした。
「なるほど。話してくれてありがとう」
やっぱり中山くんは、とても理性的だなと思った。
だから、こうして相談したくなるのかもしれない。話をちゃんと最後まで聞いてくれるから。
愁が全く話を聞いてくれないとは言わない。ただ、今は良い関係を築き上げているからこそ、この関係性を壊したくないという気持ちが大きくて。上手く切り出せずにいる。
このままじゃまずい。早くこの状況を打破し、早く元通りの幸せな時間に戻りたい。
今の私は自分の幸せを守るために必死で。周りが上手く見えていなかった。
「愁の気持ちも分からなくもないけど、大平さんの気持ちも分かる。
そのバイトを紹介してくれた人に対して、ライバル視するのは分かるけど、大平さんにも大平さんの時間があって。そこでしか築き上げられない関係性もあるから、ある程度お互いに自由の時間も必要だと俺は思う」
中山くんが私の気持ちを分かってくれて嬉しかった。
それと同時に中山くんの言葉に、私はとても共感した。
「そうなの。私にも私の居場所があって。なるべく長くそこで働きたいから、自分の居場所を大事にしたいの」
自分の悲痛な想いを一生懸命、訴えた。
この時、初めて自分が今までずっと抱えていた不満に直面した。
「大平さん。俺達に話したように、愁に本当の想いを話した方が良いと思う」
冷静に中山くんに諭されて、胸の奥がギュッと掴まれたような気がした。
「あの…。私もそう思います。ずっと一緒に居たいのなら尚更です」
本当にその通りだ。ずっと黙って話を聞いていた幸保さんにも優しく諭され、私はようやく決心した。
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