菫…BL小説の世界に転生した私。ゲスな攻めから主人公を守ろうと暗躍していたらハイスぺモブαに執着されました。

認認家族

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4-公園で誓う。私は守る存在になると

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私が歩けるようになり、言葉も少しずつ喋れるようになった頃、ダディは仕事の合間をぬって公園に連れて行ってくれた。
そこには同じくらいの年の子どもたちが集まっていて、みんなで転がったり、泥だらけになって遊んでいる。
一回経験している幼少期だけど、前世の私はこのころから入退院を繰り返していた。
だから「今度こそ友達をいっぱい作るんだ!」なんて、密かに意気込んでいた。17才までの記憶もあるけれど、心も多少体に引っ張られるみたいだ
……でも。
こんな幼い社会ですら、すでに性差別があった。

砂場の隅。
きれいな靴を踏みつけられて、泣いている子がいた。
「きったねぇΩ」
輪になって笑っている彼らのバースがどれだけえらいというのか。私には醜いモノにしか映らない。
すすり泣くその声に胸がきゅっと痛んだ。
「……あぁ、やっぱり、ここでもそうなるんだ」


爪弾きにされるΩの子と、目が合った。
赤くなった瞼の奥に、怯えと諦めが混ざっている。
まるで「助けても無駄」とでも言いたげな顔。
──胸が、ざわついた。

この国では小学校に入ったら、全員が「バース検査」を受けさせられる。
αかβか、そして──Ωか。

「……たぶん、私も」

俯いた私の上から、ダディの落ち着いた声が降ってきた。

「君たち。──それ以上はやめなさい」

いじめていた子たちが、一瞬ぎくりと動きを止める。
その声には、叱りつける大人特有の響きと……なにか、もっと静かな強さがあった。

「どうして、その子をいじめたの?」

一瞬の沈黙。
やがて、ひとりの子が口を尖らせて言った。
「……だって、Ωだから。弱いんだもん」

その言葉に、胸がずきりと痛んだ。
そうだ、この国ではそれが“当たり前”になってしまっている。
小さな子どもですら、そう思い込むほどに。

ダディは目を細め、静かに首を横に振った。
「Ωだから──それが理由になるのかい?」

子どもたちは答えられない。
ただ砂をつま先で掻きながら、視線を逸らした。

「弱いと思った相手を笑うことは、強さじゃない。ただの卑怯者だよ」
ダディの声は柔らかいのに、反論を許さないほど力強かった。

しんとした空気の中で、いじめていた子どもたちは互いに顔を見合わせた。
やがて我慢できなくなったのか、一人が声を張り上げた。

「だってΩって、“赤ちゃん産むやつ”なんでしょ!」

別の子も続ける。
「先生が言ってた! 大きくなったら赤ちゃん産むんだって! だから変なんだよ」

その言葉に、私は息をのんだ。
……幼い子どもでさえ、そういう風にΩを捉えている。
“まだ理解もしていないのに”──そう口にしてしまうくらいには、この国全体に刷り込まれているんだ。

ダディは黙って子どもたちを見つめた。
その目は怒りよりも、深い哀しみを帯びていた。

「そんな事でその子の価値が決まるわけじゃない。もし君たちがそう思うなら、それは大人たちが間違ったことを教えているからだね…」

静かな声なのに、砂場全体に広がるような強さがあった。
子どもたちは戸惑い、言葉を失う。
やがて小さな声で「……でも……」とつぶやいてから、バツが悪そうに走り去っていった。

ダディはため息をひとつつき、しゃがみ込んで優しくその子の肩に手を置いた。
「大丈夫だよ。君は、何も悪くない」
世間ではΩは弱い、守られるだけの存在だと決めつけられている。
でも、ダディは違う。
ダディのその背中を見ながら、私は胸の奥で熱いものが込み上げるのを感じた。
Ωだからって諦めない。
Ωでも、誰かを守ることはできるんだ。
私も、ダディみたいになりたい。泣いている子に寄り添える存在に、なるんだ。
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