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学園4年生編

sideパスカル

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 気に入らない。

 シャーリィの恋人は俺のはずなのに…どうしてタオフィ先生と手を繋ぎ、楽しそうに笑う君を見送らなきゃいけない?
 ……いや、解ってる。先生は自分の仕事をしただけ。飛行術のサポートの為、シャーリィの手を取っただけの事。
 そう理解していても…嫌なものは嫌なんだ。


「…………(めちゃくちゃパスカルの視線を感じる…)」

 
 俺は自分でも驚く程背が伸びた。逆にシャーリィは全然伸びなかった。
「いやまだ成長期だし?あと50cmは伸びるし!?」と言っていたが、まあ無理だろうな。
 シークレットシューズでかさ増ししているが…それでも俺が見下ろせば、シャーリィの頭頂部がよく見える。その頭を撫で髪をいじると、彼は照れくさそうに笑うのだ。少し気分が落ち着いた。

 とある事件で髪が伸びてから、シャーリィはずっと長いままにしている。その影響かナハトせ…義兄上も伸ばしている。
 それがやけに似合っているもんで、憧れからか最近男でも長髪にする若者が増えているんだ。俺も伸ばしてみようかな…?……似合わなそうだからやめよう。



「ねえルシアン。どうしてパスカル殿は、隙あらば雛鳥のようにセレスにくっ付いて回ってるの?」

「………セレス関係で不安になるとああなるんだ。放っておけば直るが…今日はこのままだろうな」

「へえ……」

 ルシアン殿下とスクナ殿下がこっちを見ながら何か言っているが、どうでもいい。





 今は歴史の授業中。俺は背が高いので、ジスランと一緒に後ろの席に配置された。こういう時ほど己の長身を恨む事は無い。

 ふと前を見れば、一生懸命にノートを取る彼の後ろ姿が。そして…隣に座る姫様と話す姿。…少しだけ、嫉妬する。
 シャーリィの恋愛対象は男性だと聞いているが…それでも、可愛らしい女性と並んでいる姿はお似合いだと思ってしまう。

 そうして授業が終わり、彼の元に向かおうと席を立つが…


「ラウルスペード様!本日ランチをご一緒してもよろしいかしら?」

 女生徒数人に先を越された…。
 シャーリィは結構モテる。元々愛らしいので男女問わず好かれているのだが…公爵子息になってからは、高位貴族とお近付きになりたい生徒も多くいる。
 なので昼食や、放課後なんかもしょっ中お誘いを受けているのだ。


「うーん、ごめんね。可愛い女の子とご一緒したいのは山々だけど…また今度、ね?」

「「「そうですか…」」」

 やんわりと断りを入れるシャーリィ。もちろんスクナ殿下がいる以上、女性を同席させる訳にはいかないが…。
 
 もしもそういう事情が無ければ。君はやっぱり俺みたいな男より…女性を選ぶんじゃないだろうか。彼を信じたいのに、そう考えてしまう…。


「………………」


 というか、そのスクナ殿下の様子がおかしい?
 顔を真っ青にして…体を小刻みに震わせ、大量の汗をかいている…!女性恐怖症が発動してる!?
 ルシアン殿下がさり気なく間に立ったり、姫様はスクナ殿下を連れ出そうとする。女生徒はシャーリィが遠ざける、連携プレーが完成している…じゃなくて!
 最近のシャーリィはこんな風にスクナ殿下に付きっきりになっていて、それを悲しくも思うが…殿下のあの姿を見たら、俺も何か力になりたい…!

 彼らに近付き、俺もルシアン殿下と一緒に壁になる。そして女生徒に一瞥を投げると、彼女らは怯んで逃げて行った。どうやら俺は目付きが悪いらしい…。

「俺の顔、そんなに怖いかな…」

 と思わず呟くと、シャーリィが反応した。

「そんな事無いよ?ほら、あの子達顔赤いじゃない。君が格好いいから…恥ずかしくて逃げちゃっただけだよ。
 ………だから、あんまり……」


 ?彼は途中で言葉を切ってしまった。あんまり、何!?


「……………あんまり女の子に愛想を振り撒いて欲しくない、かしら?」

「わーーー!!!言わないでロッティ!!」

 横からロッティがニヤニヤしながら口を出すと、シャーリィは慌ててロッティの口を塞いだ。つまり、嫉妬?


 …………俺の心のモヤモヤが、一瞬でどこかに吹っ飛んで行った気がした。

「(なんか…一瞬パスカル様が、天に召される幻覚が見えたわ…?)」
 




 スクナ殿下はすぐ落ち着いたので、俺達は学食へ移動した。

「皆、ありがとう…助かったよ」

「いいんだよ、好きでやってるんだから!」

 殿下は本当に申し訳なさそうに肩を落としている。でも確かに、あれは厄介だ。
 彼自身もどうにか治したいと思っているらしいし…本格的に対策をするべきだろう。だがルシアン殿下もシャーリィもまだ、踏み込めずにいる。

 何せ殿下の女性恐怖症を治す為には、原因を知る必要がある。彼は過去に女性関係で、トラウマになるほどの出来事があったのだろう。
 2人は、それを聞くのはまだ早いと思っているらしい。まあその辺は、後でスクナ殿下のいない所で話し合うか…。


 あんまりその話ばかりしていてもつまらないだろう。俺達は他愛もない会話を楽しむ事にした。だが…


「セレス、飛白とはうまくやれそう?」

「うん!帰ったら指導してもらうんだー、楽しみい」

 ……カスリ…か…。箏から連れて来た護衛の1人。シャーリィ(とグラス)の剣の師匠になった男。
 彼がどんな人物かよく知らないが…シャーリィが可愛らしい笑顔でカスリ、さんについて語っていると…モヤモヤが復活してしまった。



「(パスカル様、変な顔してるわね…セレスは隣に座っているから気付かないのかしら?あ、椅子を動かして…彼女の横にぴったりくっ付いた…)」

「(あー…また余計な事考えてそうだな。しかし私は暫く忙しいから、対応はエリゼに任せよう)」

「師匠って22歳なんだってねー。19歳のジェイルや27歳のデニスといいトリオになりそうだよ。
 週末には一緒に本邸に帰って、お父様に紹介するんだー」

「そっか。彼は口数が少ない大人しい人物だけど、実力や人柄は保証するよ」

 むう…殿下にそこまで言わせるカスリさんが…シャーリィと一緒に住むなんて…。
 …もしもカスリさんがシャーリィに邪な感情を抱いたら…!?いや、シャーリィがカスリさんに想いを寄せてしまったら…!!?
 

「…?なんかテーブルが震えて…うおっ!?どうしたのパスカル、マナーモードみたいになってるよ!?」

「なななななんんでももも…」

 ただでさえグラスという超危険な人物がラウルスペード家にはいるというのに!!君は一体、どれだけ俺を不安にさせれば気が済むんだ…!




 ※※※




 その日俺は生徒会の仕事中も、シャーリィにぴったりくっ付いて離れなかった。メンバーは暗黙の了解で誰も何もツッコまない。
 だが今日は仕事が終わると…彼はさっさと帰ってしまった。今から師匠に稽古つけてもらうんだー!と言い残して…。


「………………」

「…あのー、副会長。もう鍵閉めるんだけど…」

「…ああ……はぃ……」

 机に突っ伏す俺に声を掛けて来たのは生徒会長だ。最初こそ俺達に距離のあったメンバーは、今は気安い仲になれていると思う。
 会長に促され、のろのろと立ち上がる。しかし歩く気になれない…4年生になってから…シャーリィとの触れ合いが足りないい…。
 


 生徒会室を出て、廊下で壁に寄り掛かり動かずにいたら…セレネが大きくなって俺を背中に乗っけた。
 
「全く…何をしているんだお前は」

「だって……シャーリィ、学園じゃ最近はスクナ殿下に構ってばかりであんまり話せてないし…。今日からは剣の修行するんだ!って張り切ってたし…。
 もう…俺の事なんてどうでもいいのか?って思っちゃうんだよ…」

「はあ…人間めんどくさ…」

 俺って重い男だろうか?彼を束縛したくは無いが…奔放すぎて不安になる。
 少しエリゼに愚痴を聞いてもらおう…とか考えていたら、前方から誰かがズダダダダと走って来るのが見えた。そして俺達の前でキキーっと止まったと思ったら…
 

「はーーーーーっ!!!もしやそちら、光の精霊殿の真体でいらっしゃいますか!?普段の毛玉様も麗しくあらせられますが、雄々しく神々しい今のお姿も素敵ですね!!!」

「お、おう…セレネはすごいんだぞ」

「はあうっっっ!!!」

 タオフィ先生だった…。そうか、先生はセレネの狼の姿を見るの初めてか。
 彼、たまにハイテンションになるんだよなあ。精霊関係で。

 以前、義兄上に忠告された事があった。タオフィ先生はテノーに、俺とシャーリィを連れて行こうとしているのかもしれないと。
 シャーリィは「いやー、無いでしょー」と言っていたが、確かにちょっと怖い。今も開眼してセレネを観察しまくってるし…。


「…おや?王、何か元気が無いようですが」

「あ…いえ、なんでも…」

「…?」

 くそう…先生の顔を見ていると、昼間の授業を思い出す。まるで先生がシャーリィをエスコートするように手を……ムカつく!!!

「もう帰ります!!先生さようなら!!!」

「?????はい、さようなら…?」

 これ以上先生の顔を見ていたら、余計な事を言ってしまいそうだ…。急いでこの場を去る。
 ………俺、格好悪いな…。
 

 
 その後エリゼを探すも、今日はもう帰ったらしい。部屋に突撃するのもなんだしなあ…帰るか。
 寮に着くと、寮監の先生に呼び止められた。俺宛てに荷物?…ま さ か。


「…………はああぁぁ…」


 予想的中。大量の見合い写真だった……!
 サルマン令嬢との婚約は白紙になりはしたが、お祖父様はまだ諦めていない。侯爵夫人に相応しいという令嬢の写真がこんなに…うぅ…。

「おいパル。セレネはシャーリィ以外の嫁は認めんぞ」

「俺だって!いっそ好きな人がいると言ってしまおうか…でもなあ…」

 
 いくつかの写真に目を通し、大きくため息をつく。着替えてベッドの上に横になった。
 俺は家族にシャーリィを友人としてなら紹介したが、彼の願いで想い人とは言っていない。

 それは彼自身が、男同士だという事に後ろ暗さを感じているからだろう。
 俺も…今でこそ公表してシャーリィを独り占めしたい!と思っているけれど。最初は世間の反応が怖くて、自分の感情に蓋をしようとした。
 だからこそ、親しい友人にしか言ってな…友人、しか?

 俺はガバッと起き上がる。そのせいで腹の上に乗っていたセレネが転がった。


「なんだイキナリ!?」

「セレネ。シャーリィは…公爵家には報告したんだよな?」

「ああ…そうだぞ」

 だよな。不思議と今まで気にして無かったが…つまり公爵家は、俺を認めている…?男なのに?
 アイシャ…子供の頃会った事のある、シャーリィの母君だと思っていた女性。彼女も俺がシャーリィと相思相愛だと言ったら…目に涙を浮かべて祝福してくれた。


「公爵家は、その辺に偏見は無いのか…?まさか…!」

「(気付いたか…!?)」



 嘘だろう、まさか…!!




「ゲルシェ先生とファロ殿が恋人同士だという噂は事実だったのか…!!?」



 という俺の発言に、セレネは盛大にスライディングした。




 いや、あくまで噂だけども。先生が皇弟で、奥方を病で亡くしているというのは今や周知の事実。
 そして奥方を深く愛していたからこそ、公爵となっても再婚はしていない。だが、そんな彼の側には…ファルギエール辺境伯家出身で、幼馴染でもあるファロ殿がいる。


「メロディ姉上(長女・既婚者)がこう言っていたんだ。

『公爵様はともかく、ファロ様は一度も結婚歴が無いのよ。お年は40近くいらっしゃるけれど、あの妖しい美しさに惹かれる女性は数多くいるわ。
 数々の女性と浮名を流しつつも、特定の誰かを選ばない…。それは、幼馴染である公爵様を幼い頃から愛していたからではないのかしら!?
 しかし閣下は未だ奥方を愛していらっしゃる。でもお側にいれば…いつか、閣下が振り向いてくださると…願っているのでは…!?と噂されているのよ!』

 と!所詮噂と思っていたが、そうであれば説明がつく。2人がすでに通じ合っているからこそ、息子に彼氏が出来ても疑問に思わないのでは!?」


 名推理!!と思いセレネに視線を向けるも、亀のようにひっくり返ったまま動かない。



「………………なんでそうなっちゃったん、だぞ……?」

「それならよし!!シャーリィが俺の家族に秘密にする理由は分からないが…何か考えがあるんだろう!
 うーん…メロディ姉上は話に強いし…やっぱり姉上達にだけ、シャーリィの事を相談しておこう」

 いそいそと机に向かい、2人の姉に手紙を送った。
 俺は見合いをやたら勧められているが、好きな人がいる事。ただ相手は男性だから…両親、何より祖父には言えないと。その他色々。
 それをメロディ姉上とレティシア姉上(次女・既婚者)に送った。

 すると…すぐにメロ姉から返事が。何々…シャーリィに会いたい?ふむ。メロ姉は首都に住んでいるから、会おうと思えばいつでも会える。
 おっと、次はレティ姉から。先生の噂に関しては、ちゃんと本人達に確認をとりなさいと。よし!!

 今週末、公爵家に遊びに行こう。そこで義父上に、どうして俺の事を認めてくれているのか、噂は真実なのか聞こう。


「なんにせよ、公爵家は心配いらないな!それに俺の両親は、お祖父様の決定には大体従う。つまり、お祖父様を説得する材料さえあればいい!!」



 ようし、かなり気分が明るくなってきた!あれ、俺は何を不安に思っていたんだっけ…?まあいいか!

 

 

 ※※※





「気色悪い誤解してんじゃねええーーー!!!!!」

「あだーーー!!?」


 週末、公爵家に乗り込み答え合わせをすれば…俺は先生に特大の拳骨を落とされた。セレネは今シャーリィと一緒にいる。現在地は先生の執務室、ここには俺、先生、ファロ殿しかいない。


「いてて…」

「いててじゃねえ!!うっ、鳥肌が…!まさか社交界では、そんな噂が飛び交ってんのか…!?」

「いや、メロね…姉上の話によれば、一部界隈で噂だと。ガセなんですか?」

 頭をさすりながら聞けば、間髪入れず「当たり前だ!!!」と返って来た。
 ファロ殿は右手で顔を覆っていて表情は見えないが…微妙に震えている。

「その姉にちゃんっっっと否定しておけよ!!俺が再婚しないのは、したいと思える女性と出会っていないからだ!!」

 名推理だと思ったのに…。

「じゃあ、なんで俺を認めてくれてるんですか?息子の好きな人が男なんですよ?俺はありがたいけど…」

 と聞くと、先生は言葉に詰まった。
 ……もしかして、シャーリィの「秘密」とやらが関係している…?

「……その質問に答える前に、俺も聞きたい事がある。お前の恋愛対象は男なのか?」

「いえ?俺は女性が好きですが。でもセレスタンは…そういうのを関係無しに愛しています。男だから、という理由では諦められないほどに…」


 改めて言うと照れるな…。頭を掻きながら答えれば、先生とファロ殿は渋い顔をした。

「じゃあ…なんでセレスには「男が好きだ!」なんて宣言したんだ?」

 そこまで話してるのか…!!それに関しては、シャーリィが男同士というのを気にしてそうだったから…咄嗟に。


「あの、嘘はいけなかったと思っていますが!あの時の彼は…不安そうに俺を見つめるものだから。安心させたくて…!」

「「………………」」

 今度は2人共、手で顔を覆った。


「………今は理由は言えんが、俺は…お前を認めている。お前の気持ちが変わらなきゃな」

「変わりません!例え勘当されてでも、セレスタンだけを愛していますから!」

 心外だ!こちとら10年前から愛しているというのに!!
 最悪侯爵家はアロイス(弟・2歳)に任せる。とか考えていたら、先生がふっと笑った。


「そうかい。じゃ、今はあの子を信じて待ってやってくれ」

 その言葉と共に俺は追い出された。そんな風に言われたら…待つしかないじゃないか。
 帰る前にシャーリィ達に挨拶に行こうっと。彼の部屋に足を向け…


「……そういえば。ファロ殿が結婚しない理由は聞けなかったなー…」




 ※




 パスカルが出た後の執務室にて。


「おいバティスト…お前は噂、知ってたよな…?」

「ぶふ…っ、あったり前だろー?このあたしの情報網、まだまだ衰えちゃいねえぜ。まさか真正面から確認されるとは思わんかったけど…」

 その返答に、オーバンは頭を抱えた。そしてどうか兄にだけはその噂が届きませんように。絶対揶揄われるから…!と祈った。
 彼らは書類仕事を再開しながら、パスカルとセレスタンの将来について語り始めた。


「んでさー、結局シャルティエラお嬢様がマクロン家に内緒にしてんのってなんで?」

「そりゃ…向こうは男同士だって認識するからだろう。女の子だと公表してから、改めて挨拶に行くっつってた」

 2人は書類から目を離さず会話を続ける。


「ほーん…でもさー…パスカル君のお祖父様って大臣だよな?」

「財務大臣だな」

 パラ…パラ…

「国の重鎮って、全員お嬢様の事情聞かされてるよな?」

「やたら声のデカい魔術師総団長以外はな」

 サラサラ…

「大臣も当然、知ってるよな?」

「言ってやるな……」

 ぴた…
 その時2人は手を止め、揃って遠い目をした。
 


 つまり…パスカルの悩みの種である祖父は、セレスタン(男)=シャルティエラ(女)だと知っている。もちろん公爵令嬢だとも。
 パスカルがそれを知る由は無いし、セレスタンはそこまで考えが至っていないのだが。

 祖父はパスカルとセレスタンが恋人同士だと知れば、当然祝福するだろう。彼は厳しい人物ではあるが、人の心が無い訳ではない。
 家の事を第一に考えてはいるけども、孫に対する愛情は少なからずある。結婚だって政略性と恋慕の情、両方揃っている相手がいるならそれに越した事はない。



「まーお嬢様は騎士になりたいらしいから、侯爵夫人にゃなれないけどな~」

「その場合、パスカルが文官とか宮勤めでもすりゃ解決だがな。折角弟生まれたんだし」

「あのじーさんも、公爵家と繋がりが持てりゃ跡継ぎが長男でも次男でも構うまいな」

「だろうよ。それにシャーリィは素行も成績も人柄も功績も申し分ねえしな」

「(親バカ入ってる…)」

 
 完全にすれ違いまくっているセレスタンとパスカル。
 誤解を解いてやりたくも、複雑な事情が絡み合って下手に口出しを出来ない。


「でもま…大臣にゃこっそり伝えとくか…。流石に2人が可哀想だし…バティスト」

「あいよっ。『ウチのシャルティエラお嬢様とお孫さんは愛し合っているから、見合い話はやめたげて』でいいな?」

「頼む。それ以上は…当人同士に頑張ってもらうしかねーな」




 ※




 なんか知らんが、お祖父様がぱったりと見合い話を持って来なくなった。
 しかも俺と顔を合わすと…笑顔で「良くやった」とか言ってくる。
 
 祖父が何を考えてるかさっぱりだが。シャーリィについてどう説得すればいいのか…俺は今日も考えるのであった。
 
 

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