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一章 出会いと魔女の本領発揮『憤怒』
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「あ、師匠……あの、兄上の姿が見える気がするんだけど……。僕の幻覚だよな?そうだよな……?」
「現実逃避したい気持ちはすごーくわかるよ、イスハーク。でもね、現実なんだ。現実に君のお兄さんファルークがいるよ。」
「僕は師匠に聞いたんだ!貴様に聞いていない!」
「おっとぉ……。貴様呼びは酷いだろ。ずいぶん猫被ってたんだね。まぁ、それはそれとして。君を捕まえに来たんじゃないよ。逆だよ逆。」
二人して逆?と顔を見合わせる。すると旅人さんが、私に粗品だが…と茶菓子でも入ってそうな包みを私に渡してくる。
「あ、ご丁寧にどうも……。」
私は包みを持つ。すると大工さんが、ここからは男の会話だからと言い、なんだか危なそうな空気じゃないため私はイスハークくんを残し部屋に引っ込んだ。まぁ、心配だからジェイさんをさりげなく魔法で呼びつけて、何かあったらすぐにでれるようにしておく。
「師匠!そうじゃないだろ!まって、僕を置いてかないで!!
兄上、あのへんな包み渡すなんて、どういうつもりだ!」
「お前が世話になるんだ、保護者として当然だろう。」
「は……?」
意味がわからないというように兄上を二度見する。
「まぁ、お前を処分するのは忍びないからな。どうあがいても、お前は私の弟だ。弟を殺すほど、私は血に飢えていない。」
「え、僕を……殺さないのか?」
王族にしては珍しく、私欲でなく命を尊んだ。いや、もしや……。
「うん、どうやらそうみたいだね。俺はせめて牢屋にでも、って進言したんだけど、そのあとファルーク王に言われて気づいたんだよね。君いるなら魔女さんとこにいき放題じゃないか?って。」
「やっぱりそれが目的かぁぁぁ!!命は惜しいけど、納得いかないだろ!!」
「命があるからいいだろう。お前は命があり私たちは彼女に会う口実ができる。」
そういいながら、兄上は僕の手になにかをはめた。
「……?」
「ダニエル殿に作ってもらった、彼女に欲情したら電気が走る機械とやらだ。これでお前は彼女に必要以上接触できん。」
「……は?はぁぁぁ!?ふっざけんなよ糞兄貴!なんてもんつけてくれてんだ!!?」
「恨むなら羨ましい立場の自分を恨めよー?俺だって羨ましいんだからねー?」
まさかの、いやわかりきっていたが、アーサー殿下もグルらしい。
「……はっ、だけど毎日顔を会わせる僕の方が有利だからな!」
「それはどうですかね?」
誇らしげに胸を張れば、いつの間にか近くにいた金髪の美丈夫……。
「うわぁっ!?びっくりしたなぁ……!?あ、君は……あのときの精霊か!」
「ええ、私もこの城……屋敷?人間はなんと言うか知りませんが、ここに同棲しておりますので、こんなガキに彼女を近づけさせるわけありませんよ。」
「それは安心だな……夫としての余裕と考えると癪だが。」
ちなみに、精霊たちは夫でなく師匠は完全にフリーである。しかし僕たちがそれを知るのはまだであるため、全力で悔しがっていた。
だから、忘れていたのだ。彼女にも、僕らにも警戒される必要のない、精霊王のことを……精霊王は夜な夜な、彼女に呪いをかけていた。ひとつは、彼にメロメロになる呪い。もうひとつは……彼女にかけられている、呪いの解呪であった。
『なんでや、なんで解けないんや……このままじゃ、このこは……このこは、誰か知らんが呪いの持ち主の花嫁になってまう!!!』
「……ふ、あと少しだな。待ち遠しい。」
耳の鋭くとがった、まるで吸血鬼のような男は、ワインを片手に、机の上に置かれたランプを手に取り擦る。そのランプは、潰されたはずだがどういうわけか新品のようだった。
「願いは……」
「あと二つ、だろう?だがそれは本当に正しいかな?」
魔神は、訝しげに炎の眉を寄せた。
「どうしてもほしい女がいてな。
俺が新しく呪いを施した。主人には歯向かえず、一生そのランプのなかで過ごすと言う呪いだ。」
魔神は怒り狂い俺を殺そうと炎を飛ばしてきた。しかし、俺に届く前にそれは蒸発し消え失せる。
「わかっただろう?お前は俺に逆らえない。しかし、俺に手を貸すならお前が自由にしてやるかもしれない。」
希望を見いだしたような魔神は、願いを言え、と何度も言う。
「まぁ、そう焦るな。まずはこの国を乗っ取ってからだ。時期が来ればあの女の方からやってくる。そのための舞台作りは大切だろう?」
魔神は、頷く。俺はやつに呪いを施し、姿を虎に変えさせた。
「どうだ、久しぶりの地面は。ああ、逃げようと考えるな。」
首にある鎖に気づいたようだ。じゃら、と音がするその鎖は、俺の腕に巻き付いている。
「魔神の力は残してある。お前には、期待しているぞ。」
そう呟けば、ドンドン、と扉を叩かれる。男の耳は丸くなり、グレーの髪は短くなった。
「ヴィンス!イマスカ!アーサーが魔女さんの家を特定したそうデス……なんですか、そのタイガーは……。」
「ああ、拾ったんだ。なかなか可愛いから、飼うことにした。」
「昔から動物によく好かれますネー。」
ニタリ、とらしからぬ笑みを浮かべるその目は、赤く怪しい光を放つ。
「……?ヴィンス、アナタ、そんな色してましたカ?」
「ははは、なにを言ってるんだ?認知症にもうなったのか。俺の瞳は元々この色だ。」
「認知症なんて失礼デスネ!まぁ、いいデス!あとでファルーク王交えて彼女への口説き文句大会開くんですから!」
バタン、と扉は閉じた。
「現実逃避したい気持ちはすごーくわかるよ、イスハーク。でもね、現実なんだ。現実に君のお兄さんファルークがいるよ。」
「僕は師匠に聞いたんだ!貴様に聞いていない!」
「おっとぉ……。貴様呼びは酷いだろ。ずいぶん猫被ってたんだね。まぁ、それはそれとして。君を捕まえに来たんじゃないよ。逆だよ逆。」
二人して逆?と顔を見合わせる。すると旅人さんが、私に粗品だが…と茶菓子でも入ってそうな包みを私に渡してくる。
「あ、ご丁寧にどうも……。」
私は包みを持つ。すると大工さんが、ここからは男の会話だからと言い、なんだか危なそうな空気じゃないため私はイスハークくんを残し部屋に引っ込んだ。まぁ、心配だからジェイさんをさりげなく魔法で呼びつけて、何かあったらすぐにでれるようにしておく。
「師匠!そうじゃないだろ!まって、僕を置いてかないで!!
兄上、あのへんな包み渡すなんて、どういうつもりだ!」
「お前が世話になるんだ、保護者として当然だろう。」
「は……?」
意味がわからないというように兄上を二度見する。
「まぁ、お前を処分するのは忍びないからな。どうあがいても、お前は私の弟だ。弟を殺すほど、私は血に飢えていない。」
「え、僕を……殺さないのか?」
王族にしては珍しく、私欲でなく命を尊んだ。いや、もしや……。
「うん、どうやらそうみたいだね。俺はせめて牢屋にでも、って進言したんだけど、そのあとファルーク王に言われて気づいたんだよね。君いるなら魔女さんとこにいき放題じゃないか?って。」
「やっぱりそれが目的かぁぁぁ!!命は惜しいけど、納得いかないだろ!!」
「命があるからいいだろう。お前は命があり私たちは彼女に会う口実ができる。」
そういいながら、兄上は僕の手になにかをはめた。
「……?」
「ダニエル殿に作ってもらった、彼女に欲情したら電気が走る機械とやらだ。これでお前は彼女に必要以上接触できん。」
「……は?はぁぁぁ!?ふっざけんなよ糞兄貴!なんてもんつけてくれてんだ!!?」
「恨むなら羨ましい立場の自分を恨めよー?俺だって羨ましいんだからねー?」
まさかの、いやわかりきっていたが、アーサー殿下もグルらしい。
「……はっ、だけど毎日顔を会わせる僕の方が有利だからな!」
「それはどうですかね?」
誇らしげに胸を張れば、いつの間にか近くにいた金髪の美丈夫……。
「うわぁっ!?びっくりしたなぁ……!?あ、君は……あのときの精霊か!」
「ええ、私もこの城……屋敷?人間はなんと言うか知りませんが、ここに同棲しておりますので、こんなガキに彼女を近づけさせるわけありませんよ。」
「それは安心だな……夫としての余裕と考えると癪だが。」
ちなみに、精霊たちは夫でなく師匠は完全にフリーである。しかし僕たちがそれを知るのはまだであるため、全力で悔しがっていた。
だから、忘れていたのだ。彼女にも、僕らにも警戒される必要のない、精霊王のことを……精霊王は夜な夜な、彼女に呪いをかけていた。ひとつは、彼にメロメロになる呪い。もうひとつは……彼女にかけられている、呪いの解呪であった。
『なんでや、なんで解けないんや……このままじゃ、このこは……このこは、誰か知らんが呪いの持ち主の花嫁になってまう!!!』
「……ふ、あと少しだな。待ち遠しい。」
耳の鋭くとがった、まるで吸血鬼のような男は、ワインを片手に、机の上に置かれたランプを手に取り擦る。そのランプは、潰されたはずだがどういうわけか新品のようだった。
「願いは……」
「あと二つ、だろう?だがそれは本当に正しいかな?」
魔神は、訝しげに炎の眉を寄せた。
「どうしてもほしい女がいてな。
俺が新しく呪いを施した。主人には歯向かえず、一生そのランプのなかで過ごすと言う呪いだ。」
魔神は怒り狂い俺を殺そうと炎を飛ばしてきた。しかし、俺に届く前にそれは蒸発し消え失せる。
「わかっただろう?お前は俺に逆らえない。しかし、俺に手を貸すならお前が自由にしてやるかもしれない。」
希望を見いだしたような魔神は、願いを言え、と何度も言う。
「まぁ、そう焦るな。まずはこの国を乗っ取ってからだ。時期が来ればあの女の方からやってくる。そのための舞台作りは大切だろう?」
魔神は、頷く。俺はやつに呪いを施し、姿を虎に変えさせた。
「どうだ、久しぶりの地面は。ああ、逃げようと考えるな。」
首にある鎖に気づいたようだ。じゃら、と音がするその鎖は、俺の腕に巻き付いている。
「魔神の力は残してある。お前には、期待しているぞ。」
そう呟けば、ドンドン、と扉を叩かれる。男の耳は丸くなり、グレーの髪は短くなった。
「ヴィンス!イマスカ!アーサーが魔女さんの家を特定したそうデス……なんですか、そのタイガーは……。」
「ああ、拾ったんだ。なかなか可愛いから、飼うことにした。」
「昔から動物によく好かれますネー。」
ニタリ、とらしからぬ笑みを浮かべるその目は、赤く怪しい光を放つ。
「……?ヴィンス、アナタ、そんな色してましたカ?」
「ははは、なにを言ってるんだ?認知症にもうなったのか。俺の瞳は元々この色だ。」
「認知症なんて失礼デスネ!まぁ、いいデス!あとでファルーク王交えて彼女への口説き文句大会開くんですから!」
バタン、と扉は閉じた。
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