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二章 吸血鬼の花嫁

2night

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「騎士団長様!いかがしましたか?」
騎士団長は、一介のの騎士である俺たちにも話しかけてくれる。休日なため部屋でゆっくりとしていれば、ノックされた。扉を開けると珍しく、何人かを取り巻きのようにつれてきた騎士団長様は、こちらをみて笑った。
(あ、この人笑うとこんなに凶悪な顔してるんだな。)
「お前のルームメイトたちもいるか。少々土産があってな。……ああ、使用人ならさらにいい。もう、あとはお前だけだからな。」
お前だけ、の意味が最初わからなかったが、すぐに土産を渡すのがという意味だとさとる。
「本当ですか!さすがお優しい騎士団長様!すぐつれてきますね!!」
騎士団長様が土産をくれるという話をすると、すぐさまベットでごろごろしていた奴らは飛び上がった。急かしながら着替えを催促し終える。
着替え終わった奴らをしっかり目覚めさせ、お待たせしました、と扉を開ける。
「お前たち。」
その瞬間、取り巻きのような先輩騎士たちは、俺たちを拘束した。
「っ!?なんですか、これ!!」
「さぁ……これをみろ。」
騎士団長様がそう命じると、先輩騎士たちは、各々どこから出したのか、紫色の宝石のついた、首飾りやら耳飾りやらを取り出し俺たちの目の前に焚き付けた。それをみていると、なんだか不思議な……嫌な気持ちに……。
(なんだ、これ……意識が遠退く……。)
それとともに、目の前のかたは王なのだと認識する。とてつもなく、立場が上で、俺たちはこのかたに従うべきなのだと細胞に刻まれた。
「……ヴィンス陛下、万歳。」

ヴィンス陛下、ヴィンス陛下……とルームメイトたちも俺とともに呟く。先輩騎士たちと同じように、俺も首飾りをつけた。ルームメイトは、耳飾りや髪飾りだったみたいだ。
「お前たちで騎士団の者は最後だ。他のものたちにもこの素晴らしいものを広め、身に着けさせろ。」
「はい。」
俺たちの瞳は、宝石の色と同じ色に光っていた。





一日目。
「すまない、聞きたいことがあるのだが……。」
「……。」
アーサー殿とダニエル殿は、一週間後の月曜日まで帰らないそうだ。それまでは安心だと眠。、朝起きると城がおかしくなっていた。どの使用人に話しかけても、騎士さえも、反応しない。ふと目についた首飾りを誉めてみる。
「その首飾りは素晴らしいな、ところで……。」
誉めて話させようとしたが、これも反応しない。昨日までは、皆話をしていたと記憶にあるのだが。急に仕事熱心になり私語を話さないようになったのだろうか。
(それにしても、みんなこの色の飾りを着けているな……この国の伝統かなにかか?)
不思議に思いながらも、この国についてはそこまで詳しくない私はそういうものかと納得していた。

二日目。
大臣たちも話さなくなっていた。
アーサー殿たちが帰るまであと六日。
ヴィンス殿も見当たらず、不気味な雰囲気が城には漂っていた。

3日目
あと五日。さすがにおかしい。しかしどうしたらいいのだろうか。城下の民たちも話さなくなってきている。商品を買うことはできるが、そこに会話はない。値切りなどもっての他である。

四日目。
「……ヴィンス陛下、万歳……。」
「いま、話したか……!?まて、それはどういう……。」
城をみて回っていれば、使用人がそう呟くのが聞こえた。
(ヴィンス陛下……だと?)
この国の王はまだ空席で王位継承者を選んでいる最中のはずだが、とモヤモヤとした思いを抱え歩く。良く耳を澄ましていれば、騎士たちも使用人たちも、城下の民もみなヴィンス陛下万歳、と呟き始めていた。
「なんだ……!?これは……っ!?」
状況が、異常となりつつあることに今さら気づき、私はジェイ殿に伝え、対策を練ろうと馬を城に迎えにいく。
「よし、いいこだ……。」
馬を撫でながら、乗ろうとしたとき。
「どこへいくんだ?」と声がした。それは正真正銘、二人きりになるなと忠告されたヴィンス殿の声だ。ヴィンス殿は、騎士たちだろう、がたいのよい彼らを引き連れ近づいてきた。
「ヴィンス、殿……。少し野暮用があってな……。」
声が震えてるのは気づかれてないだろうか。以前あったときとは違う、恐ろしいものを目の前にしたときのような、恐怖の感情に支配される。これが、魔物の気配なのだろうか。
「ファルーク王、探したぞ?まさか何日も捕まえることはおろか、見つけることをできないとは。ここのものたちは無能なのか、天がファルーク王に味方したのか。……まぁいい。お前たち、この者を捕らえよ。」
「っ!?」
馬を囲うようにしてたち、次の瞬間強く引っ張られ、引き摺りおとされた。
「さぁ、お前も俺の配下となれ……ッ!?」
紫の宝石のついた耳飾りを目の前に出され、それが諸悪の源古だと察する。ここまでか、とせめてもの抵抗で目をつぶれば、ヴィンス殿の叫び声が聞こえた。
「……これは……!」
女神殿と砂漠で出会い、帰り際に彼女が遣わせたであろう蝶が変化した腕輪が、光り輝いている。それは私を守るように、薄く光り輝く幕を張っていた。どうやら、彼らは私に近づけないようだ。
(感謝する、女神殿!!)
今のうちに、と馬に乗り女神殿の屋敷に向かう。すぐさまジェイ殿はいるかと玄関で叫び、助けてくれと伝えた。
「なんです……?私は今お嬢様とたのしい雪遊びの最中だというのに。」
「今は秋ではなかったか……?いや、きっと女神殿のお力なのだろうな……、そんなことよりも、グランド王国が……!」
ヴィンス殿が、乗っ取っていると伝えると、クーデター最近起きすぎでは?と人間たちの醜さについて嫌悪された。
「おや、でもあなたは素面っぽいですね。」
「女神殿のお陰だ……。」
腕輪を掲げる。
「ああ……、あのときの……お嬢様が心配そうにしていた旅人こいつでしたか……。お嬢様の意図を汲んで宝具を授けるのではありませんでした……。……いえ、こちらの話です。そんなまさか、無事でよかったなんて思ってるわけないじゃないですか。」
「なぜそんなに人間嫌いなのか気になるところだが……このままでは、女神殿が町に出ることが難しくなる。」
「なんですって!?……ふむ、それもいいですね……お嬢様にはずっと籠の中のとりとして……。」
「町デートができなくなるぞ。」
「すぐさまヴィンス殿に取り憑いている魔物を追っ払いましょう!ええ、作戦会議です!最近おかしなことは?」
やはり彼女のことではどんな男も魅了され手のひらくるくるになるのだな……ふっ、と笑いながら、近況を説明し、あと二日でアーサー殿が戻ってきてしまうと伝える。
「まぁ、私たちとしましては王がどうなろうと構わないのですが……その腕輪を見せなさい。それには魔力を解析することができます。」
腕輪をはずし差し出すと、なにかに気がついたように眉を寄せた。
「まさか、この時代まで残っていたなんて……。誰です、魔神やら魔物やら……
この頃いろんな封印解き放ってるのは。」
「魔物の正体が分かったのか!?」
「ええ……王となろうとし、人間たちに目論見を見破られ、精霊たちに封印された……残虐な、吸血鬼の魂です。しかし、どうにも不思議なのは……乗っ取ろうにも、やつの血を取り込む必要があります。もうやつの体は朽ち果てているため無理だと思うのですが……やつの名字はたしか……シャミレットという名に聞き覚えは?」
「……ないな。」
「ならば本当に謎ですね……。」
二人で頭を悩ましていれば、ぎぃ、と音がなる。そこから顔を出したのは、アーサー殿とダニエル殿だ。
「えっ、あー……盗み聞きじゃないんだよ?ただ早めに帰れそうだったからこっちに顔出したら……なんか君たちの声が聞こえてて……国乗っ取られてるって、ほんとに??」
「というか、シャミレットって……ヴィンスのお父様の名字デスヨ……!!」



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