上 下
25 / 62
蒸し返された過去

25

しおりを挟む

悔しくて手に力が入った。
それを航太は優しく包み込む。

「失敗せずに生きてきたやつなんているのか? そんなやついたら、人生相当イージーモードだな。まさかチートか?」

「先輩も失敗したことある?」

「俺なんて失敗続きだよ。今日だって別にリカちゃんに告白するつもりなかったのにあいつのせいで告白しちまった。失敗したわー」

「失敗だったの?」

「返事貰えてない時点で失敗確定じゃん。当事者が何言ってんだよ」

「あ、そっか」

「でもいいんだ。今こうして一緒に酒を飲んでるんだから。楽しいな」

ニカッと笑う航太はやはり眩しくて、リカはまた胸が締めつけられる。

リカも航太みたいにポジティブに考えることができたらどんなにいいことだろう。
リカは新しくチューハイを開ける。
グビグビと一気に流し込むとアルコールが程よく回っていい気持ちになった。

ポツリ、とリカが呟く。

「私ね、高校生のときに友達に紹介されてあいつとシたんだ。その時はね、何歳で処女を捨てるかって話題で盛り上がっちゃって。それで流されるまま……」

「うん……」

「すごく痛くてつらくて。でも友達との関係も拗らせたくなかったから、よかったフリして過ごして。でもすごく後悔してて……。ちゃんと好きになった人とそういうことしたんだけど、どうしてもあの時のことが頭から離れなくて全然上手くいかなくて……。バカだよね、私。……なんでこんな話しちゃったんだろ。ごめんね、先輩」

リカは淡々と語ったのち、申し訳なさそうに僅かに微笑んだ。
なぜ話そうと思ったのかはわからない。
別に航太に聞いて欲しかったわけじゃない。

アルコールが回って脳がバグを起こしたとしか思えなかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

おじさんと縄

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:17

Fitter / 異世界の神は細部に宿るか

BL / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:38

バタフライ・エフェクト

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

ラグナロクの明くる朝 〜女神よ、みめぐみを垂れたまえ〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:228pt お気に入り:2

桜の下でつまずく 不器用な女子高生の転生物語

青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

かしましくかがやいて

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:13

【第一章完】ミッシングリンク・ディテクティブ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

処理中です...