君は僕だけの

アラレ

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5時50分※

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「え、え、え!」


「しー、うるさい」



「やったーー!(小声)」





2年に上がって最初の席は、なんと伊央と隣だった




近くにカナもいるし、最高







「すごくない?去年1回も近くにならなかったのに」





「…俺もうれしいよ、"そこそこ"ね」


「なんだよ可愛くないなぁ!」








でも伊央はこの頃から、よく女の子にもてるようになった




もともと顔がきれいだから、影で噂してる子はいたけど

その話しかけにくい雰囲気から、行動にうつす子はいなかった





のに…





最近やたら積極的じゃない?みんな











「最近もてるね」


「…やっぱり?」



お昼ご飯、いつものようにカナと食べる



ふとカナが口にした言葉が、主語がなくても容易に分かるくらいには私も意識していた




そして言ったそばから





「ねぇねぇ、月島さん」



話しかけてきたのは女の子2人


「ん?」


何の用かと思ったら、やっぱり伊央のことで





「月島さんって、吉高くんと付き合ってるの?」



横の席になったのをいい事に、がんがん話しかけまくっていたので、気づく子には気づかれたようだ





「いや、付き合ってないよ」




「そ、そっかぁ」



私の言葉に心底安心したようなその顔は、


恐らくそういうことだ





「なんか、吉高くんってかっこいいけど話しかけられたくないってオーラが出てて、今まで話したこと無かったんだけど、」

「うんうん、でも月島さんが話しかけてるの見てたら、意外と普通に話してるなって思って…」




「…あー、うん!普通に返してくれるよ!」



さりげなく、後押しをすることなく、この会話を終わらせるにはどうするべきか



無理だよなぁ





「そっか、付き合ってないんだぁ~」





「あーでもね、好きなのこの子、あいつのこと」



「ちょ!カナ!」



止めようとする私に、黙っててという視線を送る


「あ、でもこれ私しか知らないから内緒ね~」





「そ、そっか、好きなんだね」

「応援するよ、が、頑張ってね!」




「…あ、うん、ありがとう!」


心にもないことを言わせてしまったけれど


これでよかったのだろうか



「これでよかったのだろうか、カナさん」



「うん、ああいうのには絶対言っといた方がいい。後からめんどくさくなるから」



協力を頼まれたりするかもしれないし、そもそも敵はできるだけ排除しときたいし、と




「…ありがとう

私だけだったら絶対協力しちゃってた」



「そういうの結希は断れないよね」










伊央がもて始めると、

急に私達の関係が気になりだした




友達以上恋人未満


そういえば聞こえはいいけど



恋人未満って結局友達だし、ほうっておけばどうにかなる訳でもない








「…月島さん」



「なんだい吉高くん」




教室でのこの他人行儀なやりとりも実は割と好きだった






「これ、今先輩からもらったんだけど、女バスにも回しといてって」






友達のままでもいい







だけどもし、伊央が他の誰かと付き合ったら?







私はそれでも友達でいられる?




私は耐えられる?





「…伊央」




私が名前を呼べば、少し慌てて周りを確認する




「…なに」






「…ううん!土曜日、エンゲイグランドスラムあるね(小声)」





それでも私には





壊せない






今はまだ















その日の帰りに聞いてみた



「伊央ってさ、彼女とかつくらないの?」



「…なに、急に」




「いや、最近モテるなーと思って」




「…別に、俺そういうのめんどくさいし」




「…そっか、そうだよね!」




めんどくさいか



たしかに、伊央ならそういうよね







伊央は多分、今の私達の関係を大切にしてくれている




大丈夫、私は伊央の大切なものは壊さないよ















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