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翌朝、俺は準備に準備を重ねて待ち合わせ場所である都会の駅へと向かっていた。
一体、どんな人なんだろう。
相手は、会社にもいない鹿獣人。
鹿について調べれば、臆病で穏やかな性格ということと、セックスの時間も極端に短いということしか出てこなかった。
「鹿の一突き?……えっ、まじで?」
たったの数秒、一突きであっさり終わるとも書かれていた時には、俺はショックで震えていた。
けれど昨夜少しだけ話した内容によると、その人は毛皮も角もなく、唯一あるのは尻尾だけでほぼほぼ人間に近い容姿をしているとも言っていた。
そして、セックスも人間並み。
そのことに安心しながら息を吐くものの、そわそわとする気持ちは抑えきれない。
電車にいる人を眺めても、そこには様々な容姿の獣人のひとがいた。
俺とそう変わらないような人もいれば、角があったりぴこりと動く耳があったり、豊かな毛を蓄えていたり。
人である部分が多い人もいれば、極端に少ない人もいた。
そのどれもが、この世界では当たり前で。そして今日の相手もまた、そのうちの一人なんだ。
俺だって、人間のオスらしいかと聞かれればそうであるとは言えない。
薄っぺらい肉体に、ちんこもそこまで大きくない。
おまけにケツ穴もいじりにいじって、もうほどんど俺の内部はメスだ。
自嘲気味に笑いながら、俺はどんな相手がやってきても受け入れようと思っていた。
少し早く着いてしまったけれど、到着したとメッセージを送れば、相手ももうすぐ着くとのことだった。
茶色の天パであることと、ざっくりとした服装だけを教えていた。
相手もまた、すぐさま服装の写真を送ってくれた。
そのガタイのよさに、俺はうきうきと待っていた。タイプじゃなくても、最悪相手のことをオジカさんだとも思えばいいのだとも。
そして待ち合わせの時間、目の前に現れた人物に俺は戸惑っていた。
なんで、どうして。
「コジマさん……?」
そこには、私服姿のオジカさんがいたのだから。
しかもその服装は、先程写真で送られたものと全く同じだったんだ。
俺はパニックになって、その手を掴んでいた。
「とりあえず、場所……移動しましょうか?」
まず、会社の人に見られたらマズい。
つぎに、興奮でどうにかなりそうだった。
ドキドキしながら、あらかじめ指定していたホテルへと向かう。
オジカさんも、俺と同じゲイだったんだ。
そして、あの自己紹介を思い返す。
バリタチでS。
そして、鹿獣人?
「あれっ、……?」
部屋を選んでエレベーターに乗った瞬間、俺はまじまじとオジカさんの肉体を見つめていた。
「オジカさんって、……鹿獣人?」
「はい。……異動初日に、そう言いましたよ?」
重い扉を閉めて部屋の奥まで進んで、俺は驚きの声をあげていた。
「えーーーーっ!?」
思わずオジカさんが耳を塞ぐほどの、大声で。
「えっ、ちょっと待って……」
どさりとベッドに腰を下ろして、オジカさんを手招いた。
素直に隣に座ったオジカさんは、不思議そうな顔をして俺のことを見つめていた。
「水でも飲みます?」
「いや、いいっす。それより……」
「なんですか、コジマさん」
静かに、俺はいくつか質問を投げかけていた。
「鹿の、獣人?」
「はい」
「ゲイ?」
「はい」
「いま、彼氏は?」
「いません」
「セフレは?」
「いません」
「バリタチS?」
「はい」
「モロ感トロマン好き?」
「……はい」
「いっぱい遊んでるってこと?」
「……昔、それなりに」
「今は?」
「遊んでないですよ」
「コジマさんは?」
「俺も昔はそれなりに遊んでましたけど、今はほんと仕事忙しくて無理です!一人でヤって動画流してるだけの変態ですから!」
「……そうなんですね……」
同時に息を吐いて、俺たちは見つめ合った。
「俺がコジカだって……、もしかして知ってました?」
「いいえ、知りませんでした」
オジカさんはそう言いながら、うつむいた。
けれど、ふうと息を吐いて顔を上げた。
「でも、コジカちゃんがコジマさんでよかった……」
そして、強く俺の身を抱きしめた。
いつもの爽やかな匂いが、ふわりと香った。
「……片想いしてたノンケって、俺のこと?」
そして耳元で囁かれた低い響きに、俺は強く頷いていた。
「俺、オジカさんのことが好きになっちゃったんです……」
そう伝えれば、オジカさんは白い歯を見せて微笑んだ。
嫌な、営業スマイルだった。
「ありがとうございます。ですが、セフレを募集するのはどうかと……」
「だって、……」
「選んだ相手が俺で、よかったですね」
他人行儀に、オジカさんは吐き捨てた。
思わずその手を握って、俺は力の限り叫んでいた。
「嫌だ、セフレだなんて!オジカさんと、……付き合いたいんです……」
素直にそう言えば、オジカさんは口を閉じてにっこりと微笑んだ。
それはいつもの、俺が好きな笑みだった。
「裏垢、消してください。今すぐに」
「……はい!」
俺は慌ててアカウントを消して、画面を見せた。
「動画も。……あと、他に投稿しているような場所は?」
「動画も消しました、あとはありません!俺、ビビリなんで!」
「もう二度と、このようなことはしませんよね?コジマさん」
「はい、オジカさん一筋です!」
そう元気に答えればオジカさんはくるりと跳ねる俺の髪を撫でた。
「……付き合いましょうか」
「はい、よろしくお願いします!」
一体、どんな人なんだろう。
相手は、会社にもいない鹿獣人。
鹿について調べれば、臆病で穏やかな性格ということと、セックスの時間も極端に短いということしか出てこなかった。
「鹿の一突き?……えっ、まじで?」
たったの数秒、一突きであっさり終わるとも書かれていた時には、俺はショックで震えていた。
けれど昨夜少しだけ話した内容によると、その人は毛皮も角もなく、唯一あるのは尻尾だけでほぼほぼ人間に近い容姿をしているとも言っていた。
そして、セックスも人間並み。
そのことに安心しながら息を吐くものの、そわそわとする気持ちは抑えきれない。
電車にいる人を眺めても、そこには様々な容姿の獣人のひとがいた。
俺とそう変わらないような人もいれば、角があったりぴこりと動く耳があったり、豊かな毛を蓄えていたり。
人である部分が多い人もいれば、極端に少ない人もいた。
そのどれもが、この世界では当たり前で。そして今日の相手もまた、そのうちの一人なんだ。
俺だって、人間のオスらしいかと聞かれればそうであるとは言えない。
薄っぺらい肉体に、ちんこもそこまで大きくない。
おまけにケツ穴もいじりにいじって、もうほどんど俺の内部はメスだ。
自嘲気味に笑いながら、俺はどんな相手がやってきても受け入れようと思っていた。
少し早く着いてしまったけれど、到着したとメッセージを送れば、相手ももうすぐ着くとのことだった。
茶色の天パであることと、ざっくりとした服装だけを教えていた。
相手もまた、すぐさま服装の写真を送ってくれた。
そのガタイのよさに、俺はうきうきと待っていた。タイプじゃなくても、最悪相手のことをオジカさんだとも思えばいいのだとも。
そして待ち合わせの時間、目の前に現れた人物に俺は戸惑っていた。
なんで、どうして。
「コジマさん……?」
そこには、私服姿のオジカさんがいたのだから。
しかもその服装は、先程写真で送られたものと全く同じだったんだ。
俺はパニックになって、その手を掴んでいた。
「とりあえず、場所……移動しましょうか?」
まず、会社の人に見られたらマズい。
つぎに、興奮でどうにかなりそうだった。
ドキドキしながら、あらかじめ指定していたホテルへと向かう。
オジカさんも、俺と同じゲイだったんだ。
そして、あの自己紹介を思い返す。
バリタチでS。
そして、鹿獣人?
「あれっ、……?」
部屋を選んでエレベーターに乗った瞬間、俺はまじまじとオジカさんの肉体を見つめていた。
「オジカさんって、……鹿獣人?」
「はい。……異動初日に、そう言いましたよ?」
重い扉を閉めて部屋の奥まで進んで、俺は驚きの声をあげていた。
「えーーーーっ!?」
思わずオジカさんが耳を塞ぐほどの、大声で。
「えっ、ちょっと待って……」
どさりとベッドに腰を下ろして、オジカさんを手招いた。
素直に隣に座ったオジカさんは、不思議そうな顔をして俺のことを見つめていた。
「水でも飲みます?」
「いや、いいっす。それより……」
「なんですか、コジマさん」
静かに、俺はいくつか質問を投げかけていた。
「鹿の、獣人?」
「はい」
「ゲイ?」
「はい」
「いま、彼氏は?」
「いません」
「セフレは?」
「いません」
「バリタチS?」
「はい」
「モロ感トロマン好き?」
「……はい」
「いっぱい遊んでるってこと?」
「……昔、それなりに」
「今は?」
「遊んでないですよ」
「コジマさんは?」
「俺も昔はそれなりに遊んでましたけど、今はほんと仕事忙しくて無理です!一人でヤって動画流してるだけの変態ですから!」
「……そうなんですね……」
同時に息を吐いて、俺たちは見つめ合った。
「俺がコジカだって……、もしかして知ってました?」
「いいえ、知りませんでした」
オジカさんはそう言いながら、うつむいた。
けれど、ふうと息を吐いて顔を上げた。
「でも、コジカちゃんがコジマさんでよかった……」
そして、強く俺の身を抱きしめた。
いつもの爽やかな匂いが、ふわりと香った。
「……片想いしてたノンケって、俺のこと?」
そして耳元で囁かれた低い響きに、俺は強く頷いていた。
「俺、オジカさんのことが好きになっちゃったんです……」
そう伝えれば、オジカさんは白い歯を見せて微笑んだ。
嫌な、営業スマイルだった。
「ありがとうございます。ですが、セフレを募集するのはどうかと……」
「だって、……」
「選んだ相手が俺で、よかったですね」
他人行儀に、オジカさんは吐き捨てた。
思わずその手を握って、俺は力の限り叫んでいた。
「嫌だ、セフレだなんて!オジカさんと、……付き合いたいんです……」
素直にそう言えば、オジカさんは口を閉じてにっこりと微笑んだ。
それはいつもの、俺が好きな笑みだった。
「裏垢、消してください。今すぐに」
「……はい!」
俺は慌ててアカウントを消して、画面を見せた。
「動画も。……あと、他に投稿しているような場所は?」
「動画も消しました、あとはありません!俺、ビビリなんで!」
「もう二度と、このようなことはしませんよね?コジマさん」
「はい、オジカさん一筋です!」
そう元気に答えればオジカさんはくるりと跳ねる俺の髪を撫でた。
「……付き合いましょうか」
「はい、よろしくお願いします!」
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