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第1章
22話、師匠と弟子
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あの日からと言うものヴィルは毎日家に訪ねてくるようになった。
一人で訪ねてくる訳でもなく、ヴィルの師匠だと言うロブと言う庭師も一緒にだ。
ロブは弟子をとるには若めの男であるが、話し上手で手先も器用であった。師匠であるのも頷ける。
ヴィルに、いい師匠をお持ちですねと、にこやかに話したのだがその時は苦い顔をされた。
そして今日も真昼間から二人は侯爵邸にやってきたのである。
「ヴィル様、ロブ様こんにちわ。今日もお仕事?」
「あ、ああ。忙しくて。」
「休日も与えられないなんて大変ですわね…私がお二人に休暇を与えるようにお父様に交渉に行きましょうか?」
「いえいえ、我々好きでやっているもんですから、お嬢様はお気に召さらず。ね、ヴィル。」
「そうだな…。」
妙に歯切れ悪く答えるヴィルは不服そうにロブに応じる。どうしたのかと言いかけたところ、ロブがヴィルの背中をバンっと叩いた。
「さてヴィル、今日もお仕事頑張りましょうか。」
「お前後で覚えとけよ…。」
「さあ、仕事仕事~。」
師弟同士の仲の良い談話に自然と顔も緩む。
「ねえ、ヴィル様。私も庭のお手伝いしてもいいかしら。」
「…好きにしろ。」
「ええ、好きにしますわ、いつも私の我儘を聞いてくれてありがとう。」
私はこの期間でヴィルについて分かった事がたくさんある。
彼は言葉こそぶっきらぼうで冷たいが、とても優しい人なのだ。
嫌がるそぶりは体に染み付いたものの様で、本音ではない。なんて不器用な人なのかと笑ってしまうのだがそれがヴィルなのだと納得もしてしまう。
後は自分のことを名前で呼んでくれれば完璧なのだが、一向に言ってくれはしない。友人になったからもっと遠慮しなくていいのに…。
ヴィルは私の事をお嬢と言うのだ。
「お嬢様。お手伝いはいいのですが、あの柱の陰から睨みを効かせたメイドの許可とかとってきてもらっていいですか?」
柱の陰?私は後ろを振り向くとコレッタが確かに柱の陰からこちらを見守っていた。睨んでいるようには見えないが…
私は手招きしてコレッタをこちらに呼び寄せた。
「紹介しますわ。私の侍女、コレッタです。」
「コレッタです…。こう毎日飽きもせず来るなんてよっぽど暇なんですね…」
コレッタの終りかけの言葉は小さく、聞き取れなかったが、きっと出迎えの言葉であろう。
コレッタを見つめる二人は引きつった顔で挨拶を返す。それに対してコレッタは、挨拶はしっかり返しなさいと鋭く二人を睨みつけた。
日頃コレッタがみせる他の使用人達への対応とは少し違う気がした。なんと言うのだろう、慣れ親しんだ感じ…?
「コレッタ、私もお庭のお手伝いしてもいい?二人の邪魔はしないから…。」
「仕方ありません、しかし服は汚れますので一度着替え直しましょう。」
「やった!コレッタ好きよ!」
私は嬉しくなりコレッタに抱きついた。そんな私をコレッタは引き剥がし、お部屋に参りましょうと先導して歩いて行った。
「ヴィル様もロブ様も先にお仕事に入られて!私も後からそちらに行きます!」
私は小走りでコレッタの後を追いかけた。
一人で訪ねてくる訳でもなく、ヴィルの師匠だと言うロブと言う庭師も一緒にだ。
ロブは弟子をとるには若めの男であるが、話し上手で手先も器用であった。師匠であるのも頷ける。
ヴィルに、いい師匠をお持ちですねと、にこやかに話したのだがその時は苦い顔をされた。
そして今日も真昼間から二人は侯爵邸にやってきたのである。
「ヴィル様、ロブ様こんにちわ。今日もお仕事?」
「あ、ああ。忙しくて。」
「休日も与えられないなんて大変ですわね…私がお二人に休暇を与えるようにお父様に交渉に行きましょうか?」
「いえいえ、我々好きでやっているもんですから、お嬢様はお気に召さらず。ね、ヴィル。」
「そうだな…。」
妙に歯切れ悪く答えるヴィルは不服そうにロブに応じる。どうしたのかと言いかけたところ、ロブがヴィルの背中をバンっと叩いた。
「さてヴィル、今日もお仕事頑張りましょうか。」
「お前後で覚えとけよ…。」
「さあ、仕事仕事~。」
師弟同士の仲の良い談話に自然と顔も緩む。
「ねえ、ヴィル様。私も庭のお手伝いしてもいいかしら。」
「…好きにしろ。」
「ええ、好きにしますわ、いつも私の我儘を聞いてくれてありがとう。」
私はこの期間でヴィルについて分かった事がたくさんある。
彼は言葉こそぶっきらぼうで冷たいが、とても優しい人なのだ。
嫌がるそぶりは体に染み付いたものの様で、本音ではない。なんて不器用な人なのかと笑ってしまうのだがそれがヴィルなのだと納得もしてしまう。
後は自分のことを名前で呼んでくれれば完璧なのだが、一向に言ってくれはしない。友人になったからもっと遠慮しなくていいのに…。
ヴィルは私の事をお嬢と言うのだ。
「お嬢様。お手伝いはいいのですが、あの柱の陰から睨みを効かせたメイドの許可とかとってきてもらっていいですか?」
柱の陰?私は後ろを振り向くとコレッタが確かに柱の陰からこちらを見守っていた。睨んでいるようには見えないが…
私は手招きしてコレッタをこちらに呼び寄せた。
「紹介しますわ。私の侍女、コレッタです。」
「コレッタです…。こう毎日飽きもせず来るなんてよっぽど暇なんですね…」
コレッタの終りかけの言葉は小さく、聞き取れなかったが、きっと出迎えの言葉であろう。
コレッタを見つめる二人は引きつった顔で挨拶を返す。それに対してコレッタは、挨拶はしっかり返しなさいと鋭く二人を睨みつけた。
日頃コレッタがみせる他の使用人達への対応とは少し違う気がした。なんと言うのだろう、慣れ親しんだ感じ…?
「コレッタ、私もお庭のお手伝いしてもいい?二人の邪魔はしないから…。」
「仕方ありません、しかし服は汚れますので一度着替え直しましょう。」
「やった!コレッタ好きよ!」
私は嬉しくなりコレッタに抱きついた。そんな私をコレッタは引き剥がし、お部屋に参りましょうと先導して歩いて行った。
「ヴィル様もロブ様も先にお仕事に入られて!私も後からそちらに行きます!」
私は小走りでコレッタの後を追いかけた。
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