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第1章
23話、和やかな一日
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「ヴィル様、ロブ様。私いつでもお手伝い出来ますわ!どうぞ指示なさってください。」
私は汚れてもいいような動きやすい服に変えて庭に来た。
「お嬢様に指示ですか?それはちょと気が引けますね。」
「私相手に気を遣わないでくださいまし。それにロブ様、敬語なんてお辞めになって。」
「私めは一介の使用人。シルフィ様にそんな大それた口は聞けません。」
「構いませんのに…。」
「はは、ご勘弁を。」
ロブは困ったように頬を掻いた。
ここまで言われて無理強いは良くないだろう。私は早々に諦めて庭の掃き掃除を始めた。
「お嬢。こっちも頼む。」
「今行きますわ。」
ヴィルは台に登り庭木を剪定していた。
その見事に丸く刈りこまれた庭木は素人の目から見ても美しいものだった。
彼の下には切られた葉がそこら中に舞っている。一面に広がるその葉は緑のカーペットの様であった。
「ヴィル様、本当にお上手なんですね。貴方ほどの腕前ならどこの屋敷でも引っ張りだこではなくて?」
「確かに手先は器用な方だがそこまででもない。他の庭師の方がよっぽど腕がいい。」
「ふふ、ご謙遜を。それを言ってしまうと他の方から恨みを買いますよ?ヴィル様お顔もお綺麗ですし余計に。」
ヴィルはくすくすと笑う私を見てそっぽを向いた。
気分でも害してしまったのだろうか?
こわごわ、ヴィルの顔をチラリと見ると、ヴィルは片手を口に当て顔を真っ赤にしていた。
表情は髪で隠れて見えないが怒っているのだろうか??
「ご、ごめんなさい。何か不快にさせてしまったようですね…。」
「違う!か、勘違いするな…僕はお嬢の言葉一つで気分を害するような矮小な男ではない。大体君の一挙一動に感情を起伏させるはず無いだろ。」
「そうですわよね。おかしな事を聞いてしまい申し訳ありませんわ。」
どうやらヴィルは怒っていたようではなかった。それにホッとして私は掃除を再開しようと箒を持ち直した。
どこまで掃けばいいのかヴィルに聞こうとすると、何故か彼は地面に手と膝をつけブツブツと口をせわしなく動かしていた。
(また始まったわ…。)
ヴィルは1日に何回もこの行動を見せる。壁があれば壁に手と額をつけてブツブツと喋るのだ。最初こそ体調が悪いのか、気が触れたのかと驚いたが、ロブにも言われ、気にしないのが一番であると分かった。
「お嬢様~。こちらも掃いて頂けますか~。」
「任してくださいな。」
私は鼻歌交じりに、散らばる葉を集め汗を拭った。
いつも同じことの繰り返しで退屈していたがヴィルが来てから生活が一変した。
兄を見送った後は読書に刺繍、そして作法に勉強。貴族令嬢として当たり前の事ではあるが、それが退屈で仕方なかった。ろくに外にも出れず窓の外から見える風景を眺めては何度ため息をついたことか。
ヴィルは風だ。蜜閉された部屋に吹き込む新鮮な風。
彼と友達になってから見慣れた庭も、色鮮やかな庭園に見えるし、何より眼に映る何もかもが美しく感じる。
どうかこの小さな幸せが続きますように。
いつもの平和な昼時のことである。
私は汚れてもいいような動きやすい服に変えて庭に来た。
「お嬢様に指示ですか?それはちょと気が引けますね。」
「私相手に気を遣わないでくださいまし。それにロブ様、敬語なんてお辞めになって。」
「私めは一介の使用人。シルフィ様にそんな大それた口は聞けません。」
「構いませんのに…。」
「はは、ご勘弁を。」
ロブは困ったように頬を掻いた。
ここまで言われて無理強いは良くないだろう。私は早々に諦めて庭の掃き掃除を始めた。
「お嬢。こっちも頼む。」
「今行きますわ。」
ヴィルは台に登り庭木を剪定していた。
その見事に丸く刈りこまれた庭木は素人の目から見ても美しいものだった。
彼の下には切られた葉がそこら中に舞っている。一面に広がるその葉は緑のカーペットの様であった。
「ヴィル様、本当にお上手なんですね。貴方ほどの腕前ならどこの屋敷でも引っ張りだこではなくて?」
「確かに手先は器用な方だがそこまででもない。他の庭師の方がよっぽど腕がいい。」
「ふふ、ご謙遜を。それを言ってしまうと他の方から恨みを買いますよ?ヴィル様お顔もお綺麗ですし余計に。」
ヴィルはくすくすと笑う私を見てそっぽを向いた。
気分でも害してしまったのだろうか?
こわごわ、ヴィルの顔をチラリと見ると、ヴィルは片手を口に当て顔を真っ赤にしていた。
表情は髪で隠れて見えないが怒っているのだろうか??
「ご、ごめんなさい。何か不快にさせてしまったようですね…。」
「違う!か、勘違いするな…僕はお嬢の言葉一つで気分を害するような矮小な男ではない。大体君の一挙一動に感情を起伏させるはず無いだろ。」
「そうですわよね。おかしな事を聞いてしまい申し訳ありませんわ。」
どうやらヴィルは怒っていたようではなかった。それにホッとして私は掃除を再開しようと箒を持ち直した。
どこまで掃けばいいのかヴィルに聞こうとすると、何故か彼は地面に手と膝をつけブツブツと口をせわしなく動かしていた。
(また始まったわ…。)
ヴィルは1日に何回もこの行動を見せる。壁があれば壁に手と額をつけてブツブツと喋るのだ。最初こそ体調が悪いのか、気が触れたのかと驚いたが、ロブにも言われ、気にしないのが一番であると分かった。
「お嬢様~。こちらも掃いて頂けますか~。」
「任してくださいな。」
私は鼻歌交じりに、散らばる葉を集め汗を拭った。
いつも同じことの繰り返しで退屈していたがヴィルが来てから生活が一変した。
兄を見送った後は読書に刺繍、そして作法に勉強。貴族令嬢として当たり前の事ではあるが、それが退屈で仕方なかった。ろくに外にも出れず窓の外から見える風景を眺めては何度ため息をついたことか。
ヴィルは風だ。蜜閉された部屋に吹き込む新鮮な風。
彼と友達になってから見慣れた庭も、色鮮やかな庭園に見えるし、何より眼に映る何もかもが美しく感じる。
どうかこの小さな幸せが続きますように。
いつもの平和な昼時のことである。
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