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第1章
25話、婚約と社交界
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私は父の待つ書斎部屋をノックした。
「入れ。」
「失礼致します。」
踏ん反り返るようにして椅子に腰掛ける父は後ろの兄を見て片眉を潜めた。
「なぜヴィンセントがいる…。お前は呼んでおらん。」
「いいえ、お呼びになりましたとも。シルフィを呼んだのなら俺を呼んだも同然です。それとも何か、俺がいては都合が悪いようなお話なのでしょうか?」
(相変わらず挑発的ですわね、お兄様…。)
父は冷たく兄を睨みつけるが、兄は全く動じるそぶりを見せない。むしろ好戦的な目つきで父を睨み返している。
「好きにしろ。」
父は兄から私に目を移した。
「お前を呼んだのは、婚約と社交界の件についてだ。」
(お兄様の確信がやはり的中ですわね…。)
後ろから冷たい空気が当たる。それが肌に触れ寒気でブルリと震えた。
「お前、婚約についてハーフォード公爵家に申し立てに行ったそうだな。」
それはバレますわよね…。
「は、はい…。少し不安がありまして…。その…。」
「言い訳は無用だ。お前は少し勝手がすぎるようだな。今回は保留で収まったようだが、不満があるならハーフォード家より高位の子息でも捕まえてこい。」
「それは社交界で、ということでしょうか?」
「それ以外に何がある?当日のエスコートはヴィンセントにでもさせろ。」
間髪の入れない返しに息がつまる。
しかし、私のような取り柄のない小娘など社交界に出ても壁の花と化するに違いない。ましてや話しかける殿方など…。
「口を挟むようですが、シルフィは社交界には不慣れです。それをそこらのぼんくらを捕まえろなど無理難題がすぎるようですが?大体こんなに可愛いシルフィが男を誘えばどんな目に合うか!!」
(お兄様…。横槍を入れてくれたことには非常に助けられましたが、恥ずかしいのでやめて下さい…。)
「では、シルフィにあてがう婚約者はどうする。」
「そんなもの必要ですか??」
「話にならん。」
父はスッと立ち上がると書類を積み上げ始めた。
「これは決定事項だ。ネヴィル・ハーフォードとの婚約が不満なら、家の体面を落とさない程度の男でも社交界で見繕え。婚約に何の理想を描いているのかは知らないが我が家に生まれたものの義務だ。」
積み上げた書類を使用人に持たせた父は、書斎から出て行った。
きっと王宮の方にでも戻るのだろう。
「クソジジイが…。」
(お兄様、お顔に似合わない暴言が出ておりますわ。)
「シル、何も心配しなくていいんだ。婚約したくないなら俺と2人で未踏の地へでも逃げよう!」
兄はそう言って私の頭を強く抱き寄せた。
流石に呆れてしまいます…。私も出来ることなら全てを投げ出してお兄様と逃げ出してしまいたいところですが、生憎この家に生まれた者としての義務は忘れてはおりませんし、ちゃんと果たしたいところですので…。
私は一呼吸を置いて兄の胸を押し返した。
「お兄様、これはチャンスなのです。」
「なんのだ?」
「私、婚約や結婚に理想を持っているわけではないので相手があの方でなければ誰でも良いのです!ですので、家の体面を損なわない程度のお方さえ探してその方に私を拾っていただければ万々歳というもの。まあ、私のような者を拾う変わった方がいればの話ですが…。」
「お前ならそういうと思ったよ…。そこだけは貴族らしいな…。その考えを撤回する予定は?」
「ないですわ。」
「分かった…。苦渋だが、当日のエスコートは俺が任されよう。」
「任せますわ。信頼しておりますお兄様。」
「入れ。」
「失礼致します。」
踏ん反り返るようにして椅子に腰掛ける父は後ろの兄を見て片眉を潜めた。
「なぜヴィンセントがいる…。お前は呼んでおらん。」
「いいえ、お呼びになりましたとも。シルフィを呼んだのなら俺を呼んだも同然です。それとも何か、俺がいては都合が悪いようなお話なのでしょうか?」
(相変わらず挑発的ですわね、お兄様…。)
父は冷たく兄を睨みつけるが、兄は全く動じるそぶりを見せない。むしろ好戦的な目つきで父を睨み返している。
「好きにしろ。」
父は兄から私に目を移した。
「お前を呼んだのは、婚約と社交界の件についてだ。」
(お兄様の確信がやはり的中ですわね…。)
後ろから冷たい空気が当たる。それが肌に触れ寒気でブルリと震えた。
「お前、婚約についてハーフォード公爵家に申し立てに行ったそうだな。」
それはバレますわよね…。
「は、はい…。少し不安がありまして…。その…。」
「言い訳は無用だ。お前は少し勝手がすぎるようだな。今回は保留で収まったようだが、不満があるならハーフォード家より高位の子息でも捕まえてこい。」
「それは社交界で、ということでしょうか?」
「それ以外に何がある?当日のエスコートはヴィンセントにでもさせろ。」
間髪の入れない返しに息がつまる。
しかし、私のような取り柄のない小娘など社交界に出ても壁の花と化するに違いない。ましてや話しかける殿方など…。
「口を挟むようですが、シルフィは社交界には不慣れです。それをそこらのぼんくらを捕まえろなど無理難題がすぎるようですが?大体こんなに可愛いシルフィが男を誘えばどんな目に合うか!!」
(お兄様…。横槍を入れてくれたことには非常に助けられましたが、恥ずかしいのでやめて下さい…。)
「では、シルフィにあてがう婚約者はどうする。」
「そんなもの必要ですか??」
「話にならん。」
父はスッと立ち上がると書類を積み上げ始めた。
「これは決定事項だ。ネヴィル・ハーフォードとの婚約が不満なら、家の体面を落とさない程度の男でも社交界で見繕え。婚約に何の理想を描いているのかは知らないが我が家に生まれたものの義務だ。」
積み上げた書類を使用人に持たせた父は、書斎から出て行った。
きっと王宮の方にでも戻るのだろう。
「クソジジイが…。」
(お兄様、お顔に似合わない暴言が出ておりますわ。)
「シル、何も心配しなくていいんだ。婚約したくないなら俺と2人で未踏の地へでも逃げよう!」
兄はそう言って私の頭を強く抱き寄せた。
流石に呆れてしまいます…。私も出来ることなら全てを投げ出してお兄様と逃げ出してしまいたいところですが、生憎この家に生まれた者としての義務は忘れてはおりませんし、ちゃんと果たしたいところですので…。
私は一呼吸を置いて兄の胸を押し返した。
「お兄様、これはチャンスなのです。」
「なんのだ?」
「私、婚約や結婚に理想を持っているわけではないので相手があの方でなければ誰でも良いのです!ですので、家の体面を損なわない程度のお方さえ探してその方に私を拾っていただければ万々歳というもの。まあ、私のような者を拾う変わった方がいればの話ですが…。」
「お前ならそういうと思ったよ…。そこだけは貴族らしいな…。その考えを撤回する予定は?」
「ないですわ。」
「分かった…。苦渋だが、当日のエスコートは俺が任されよう。」
「任せますわ。信頼しておりますお兄様。」
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