侯爵令嬢は婚約者(仮)がお嫌い

ハシモト

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第1章

27話、ガイウス

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「久し振りですと目がチカチカしますわね…。」

「はは、久し振りでなくてもチカチカするさ。」

そのなんと煌びやかなことか。辺り一面が金ピカで落ち着かない。
しかし、落ち着かないと言えば、会場より視線の方だ。私達が足を踏み入れた瞬間から賑やかさが一気に減り、皆の白い顔がこちらに向けられているようなのだ。
大方、兄の麗しさが原因なのだろう。とは言え老若男女問わず虜にしてしまうとは異常である。

「皆んなシルに釘付けだな…。」

「へ?」

「もしかしたらシルの事を俺の婚約者だと考えている奴もいるかも知れん。お前はあまり顔が知られてないからな。」

「そうですと、視線が集まるのは当然ですね。見目麗しいお兄様の婚約者なんて注目の的でしょうし。」

「いや、主な理由はシルの美しさにあってだな、」

「おっ!ヴィンセント、お前も来てたのか。珍しいな。」

突然上がった声に振り向けば、兄に手を振りながら早足でこちらに向かってくる男性が一人。

「ガイウスか。お前こそ珍しい、こんな場は嫌いかと思ったが。」

「まぁな、親父に言われて仕方なくだ。しっかし、たまに来て見ると悪くねぇ。王宮で開かれるだけあって美女が多いからな。」

「お前はそろそろ身を固めたらどうだ?親父さんもいつお前が不祥事を起こすか気が気じゃ無いだろう。気苦労が知れるな。」

「ははっ、遊べるうちに遊ばねぇとなぁ。」

兄の騎士仲間だろうか?親しげな様子からそこそこの間柄であることは察せる。
健康そうな少し焦げた肌に琥珀色の髪をしたガイウスと言った男は少し野生的で兄と並ぶと細身の兄と比べガッチリとしており対称的である。
それにしても彼の着崩した服装はどうしたことか。彼はとにかく色気が凄い。

そっと観察眼を使っていると彼の顔が迫って来た。
ちょっ!顔を寄せないでください!

「お嬢ちゃん、人間か??」

「はい??」

彼は口頭一番になにを言っているのだろうか。

「ガイウス、シルに顔を近づけるな。後、貴族として最低限度の礼儀は取るべきだろ。」

「ああ、それは失礼。ガイウス・セントレンだ。以後お見知り置きを。」

ガイウス・セントレンと言った男は貴族らしく、しなやかに私の手の甲に軽いキスを落とした。
少しドキリとしてしまうが挨拶の一環であると心を落ち着かせる。
しかしセントレンと言えば騎士団持ちの公爵家のことでは無いだろうか?
貴族情報を頭の中でぐるぐるとさせながら私も失礼がないようにあいさつを取る。

「シルフィ・キャメロットでございます。社交界には不馴れなものですが、どうぞご容赦下さいませ。」

下げていた頭を上げれば、ガイウス様は鳩が豆鉄砲を食ったような顔を見せていた。

「驚いた。キャメロットって事はお嬢ちゃんはヴィンセントの妹か。婚約者と聞いていたんだがな。」

「周りの噂に過ぎないさ。シルの顔はあまり知られていないからな。」

「通りすがりの令嬢達はお前が婚約者を連れて来てると聞いてバタバタと倒れていたな。かと思えば婚約者はどんな顔してんだって二人を血眼で探してる令嬢もいた。」

(うそ…。誤解だけど、私すっごく恨みを買ったのでは無いかしら…。せめてみっともないとか見すぼ らしいとか思われてなければ良いのだけれど。)

「まぁ、お嬢ちゃんを見れば皆んな意気消沈ってものだろ。」

「俺のシルは超絶天使で可愛いからな!令嬢達も比べる相手が違う。」

(お兄様失言です!訂正を、恥ずかしいですわ!可愛らしいのなら兎も角、微塵も可愛くない私に!)

「お前のシスコンはかねがね聞いていたが、やべぇ領域だな。」

「なにを言われようが結構。それよりさっきから男どもがシルをチラチラと見ていて不快だな。消すか。」

「おいおい、後始末が大変だろ。まあ、妹がこんなに綺麗なら心配になるのも分からんでもないが。」

「ガイウス、シルに手を出したらお前でも承知しないぞ。」

「おっかねぇなぁ、安心しろ嬢ちゃんは俺の好みじゃねぇ。こうもっと清らかな感じじゃなくて、危険で扇情的な女が、ぐがっつ!!何しがる!」

「シルに穢れが移る。俺らは挨拶回りに行ってくるよ。じゃあな。」

行こう、シル。と兄が私の両肩を優しく押す。そこで静止が後ろから掛かる。

「ちょいまて、ヴィンセントに嬢ちゃん、一つ忠告だ。今回の社交界、第三王子を見かけたと噂を聞いた。」

「なに?」

第三王子と言えばあまりいい噂は聞かないものだ。
ガイウス様は声を潜める。

「あくまで噂だがな。だが居たらいたらで公に顔を出すものなんだが姿が見えない。しかし、あのバカ王子は俺以上に下品な奴だ。嬢ちゃんなんて見つかろうものなら取って食われるぞ。用心に越したことはねぇ。」

「肝に銘じておこう…。」

取って食われる…。それほど節操がない方なのかと甚だ疑問も残るものの、ガイウス様に軽いお辞儀をしてその場を去った。
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