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第1章
30話、目を覚ます
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深く沈んだ意識の海を漂っていると泣き声が聞こえた。
なぜこの人はこんなにも泣いているのだろうか?泣かないでと手を伸ばそうとするも力が入らない。
かすかに、私の手を握りすまない、すまないと泣き声に混じって謝罪の声まで聞こえる。
ああ、なぜ謝るの?それより、もう身体が重くて…。
私はさらに深くその意識の海に沈んだ。
目を薄く開くと知らない天井が目に入った。
あら?私は…どこに、いるのかしら…?
右手に温もりを感じる。目をやれば、金色のサラサラな髪が窓から入る風に揺られていた。
「お、にい、さま?」
顔を寝台からガバリと上げる翠の瞳と目があった。
「シ、ル?シルフィ??」
「え、ええ。シルフィですわ。」
「シル…シルフィ。俺の愛するシルフィ!!」
両手で私の右手を優しく握り自分の額に当てては、何度も確かめるように名前を呼ぶ。
そのうち、私の名前を呼ぶ声は啜り泣きに変わった。
「な、泣かないで下さいまし。」
私がそう言えば、余計に泣き声が大きくなってしまった。
起き上がって慰めようとするがピリッと体に痛みが走った。
「いったぁ!」
「ああ、シル安静にしていてくれ!頼むから、これ以上俺の寿命を縮めないでくれ。」
(そうだわ、私ったら、あのおバカな王子に捕まって…)
何故か他の誰かの事のように感じられ、自分の身に起こった事だとはどうしても考えられなかった。
それでも、身体に残った傷はたしかに記憶として刻まれている。
「私、生きておりますのね…。」
「何を言っているんだおまえわぁぁあっ!!」
ぼそりと呟いた言葉に兄が反応して、子供のように泣きじゃくる。
(こんなに心配を掛けさせてダメね、私は…。)
その時、扉が乱暴に開かれた。
「お嬢さま!!!」
「まあ、コレッタ。」
焦ったように部屋に突入したコレッタは、その場に崩れ落ちた。
「こ、コレッタ?」
「ご無事で、なによりです…。」
俯いたコレッタの下に雫が落ちて絨毯に染み込んだ。
「泣いているの?」
「なっ、泣いてなどおりません!」
拗ねたようにプイとそっぽを向かれた。
「心配を掛けてしまってごめんなさいね。」
「本当です、反省なさって下さい。」
コレッタは仕事が残っておりますのでと残し、鼻をすすりながら部屋を去った。
そんな後ろ姿を、申し訳なさと心に広がる暖かさを抱いて見送った。
「お兄様、そう言えばここはどこですか?」
「ああ、ガイウスの家だ。」
「ガイウス・セントレン様のお家なのですか?と言うことは公爵邸…。そ、それは大変失礼致しますわね…。」
「まてまて、起き上がるな!!傷口が開いてしまうだろ!あのな、うちに帰って処置を施すより王宮に近いセントレン家の方が都合が良かったんだ!」
「で、ですが。」
「とにかくシルは気にすることない。」
私の髪を優しく撫で、眉を下げた兄の姿を見てはどうすることも出来なかった。
「あの、王子は…。」
「その話はまた今度しよう。今は身体を治すことに集中だ。」
「はい…。」
とても気になる話だが、兄の間髪の入れない遮りからして、落ち着いた頃に聞いた方がよいことがわかる。
「お腹がすいただろう?丸二日も寝ていたからな。」
丸二日!?そんなに寝ていたのかと驚いて目を見開いた。そんな反応に兄は微笑を漏らす。
「喉に通りやすいものでも持ってくる。くれぐれも身体は動かすんじゃないぞ。用があればそこの鐘を鳴らして俺か使用人を呼ぶんだ。」
「分かりましたわ。」
兄に返事をしたところで、あっ、と思い出す。
(そう言えば、一つ聞かなければいけないことがありましたわ!)
「お兄様!あの、私、どなたかに救っていただいたようなのですが、知っておりますか?」
「ああ、ガイウスだよ。」
あまりにもあっさりとした答えに目をパチクリとさせた。
(ガイウス様が…?私を助けて下さったの?)
「シル、すぐに戻るから待ってて。」
そう残し部屋から兄が出て行った後も私はそのことで頭が一杯になった。
なぜこの人はこんなにも泣いているのだろうか?泣かないでと手を伸ばそうとするも力が入らない。
かすかに、私の手を握りすまない、すまないと泣き声に混じって謝罪の声まで聞こえる。
ああ、なぜ謝るの?それより、もう身体が重くて…。
私はさらに深くその意識の海に沈んだ。
目を薄く開くと知らない天井が目に入った。
あら?私は…どこに、いるのかしら…?
右手に温もりを感じる。目をやれば、金色のサラサラな髪が窓から入る風に揺られていた。
「お、にい、さま?」
顔を寝台からガバリと上げる翠の瞳と目があった。
「シ、ル?シルフィ??」
「え、ええ。シルフィですわ。」
「シル…シルフィ。俺の愛するシルフィ!!」
両手で私の右手を優しく握り自分の額に当てては、何度も確かめるように名前を呼ぶ。
そのうち、私の名前を呼ぶ声は啜り泣きに変わった。
「な、泣かないで下さいまし。」
私がそう言えば、余計に泣き声が大きくなってしまった。
起き上がって慰めようとするがピリッと体に痛みが走った。
「いったぁ!」
「ああ、シル安静にしていてくれ!頼むから、これ以上俺の寿命を縮めないでくれ。」
(そうだわ、私ったら、あのおバカな王子に捕まって…)
何故か他の誰かの事のように感じられ、自分の身に起こった事だとはどうしても考えられなかった。
それでも、身体に残った傷はたしかに記憶として刻まれている。
「私、生きておりますのね…。」
「何を言っているんだおまえわぁぁあっ!!」
ぼそりと呟いた言葉に兄が反応して、子供のように泣きじゃくる。
(こんなに心配を掛けさせてダメね、私は…。)
その時、扉が乱暴に開かれた。
「お嬢さま!!!」
「まあ、コレッタ。」
焦ったように部屋に突入したコレッタは、その場に崩れ落ちた。
「こ、コレッタ?」
「ご無事で、なによりです…。」
俯いたコレッタの下に雫が落ちて絨毯に染み込んだ。
「泣いているの?」
「なっ、泣いてなどおりません!」
拗ねたようにプイとそっぽを向かれた。
「心配を掛けてしまってごめんなさいね。」
「本当です、反省なさって下さい。」
コレッタは仕事が残っておりますのでと残し、鼻をすすりながら部屋を去った。
そんな後ろ姿を、申し訳なさと心に広がる暖かさを抱いて見送った。
「お兄様、そう言えばここはどこですか?」
「ああ、ガイウスの家だ。」
「ガイウス・セントレン様のお家なのですか?と言うことは公爵邸…。そ、それは大変失礼致しますわね…。」
「まてまて、起き上がるな!!傷口が開いてしまうだろ!あのな、うちに帰って処置を施すより王宮に近いセントレン家の方が都合が良かったんだ!」
「で、ですが。」
「とにかくシルは気にすることない。」
私の髪を優しく撫で、眉を下げた兄の姿を見てはどうすることも出来なかった。
「あの、王子は…。」
「その話はまた今度しよう。今は身体を治すことに集中だ。」
「はい…。」
とても気になる話だが、兄の間髪の入れない遮りからして、落ち着いた頃に聞いた方がよいことがわかる。
「お腹がすいただろう?丸二日も寝ていたからな。」
丸二日!?そんなに寝ていたのかと驚いて目を見開いた。そんな反応に兄は微笑を漏らす。
「喉に通りやすいものでも持ってくる。くれぐれも身体は動かすんじゃないぞ。用があればそこの鐘を鳴らして俺か使用人を呼ぶんだ。」
「分かりましたわ。」
兄に返事をしたところで、あっ、と思い出す。
(そう言えば、一つ聞かなければいけないことがありましたわ!)
「お兄様!あの、私、どなたかに救っていただいたようなのですが、知っておりますか?」
「ああ、ガイウスだよ。」
あまりにもあっさりとした答えに目をパチクリとさせた。
(ガイウス様が…?私を助けて下さったの?)
「シル、すぐに戻るから待ってて。」
そう残し部屋から兄が出て行った後も私はそのことで頭が一杯になった。
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