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第十四話 かわいい?授業風景①
しおりを挟む「……!」
「まぁ……!!」
『みみーん♪』
またもやドヤ顔を披露するルリ。
宙に浮きながらバンザイ姿をしている。
屋敷にて会う者ひと通りにルリを紹介し終え、今日からは授業にもルリを伴っていた。
予想通りというか、レイクとフローリアはルリに夢中だ。
「か、……」
「かわ……」
「かわいーーーー!!」「かわいいですわぁ!!」
「(ぐはっ)」
俺には君たちもそう思えるよ。
「る、ルリと言います。仲良くしてあげてください」
「ルリ! ルリというんですね。ぼくはレイク! ルリ、よろしく!」
『ぷー!』
「わたくしはフローリアともうします、よろしくね」
『んみみー!』
はぁ、幸せすぎる。
というか俺は従魔とは縁のないパーティに属していたが、従魔への接し方というのは前世で言うペットのようなものなんだな。一応、魔物ではあるんだが……。
魔力のある世界ってのには、まだまだ知らないことがあるな。
「ルリは水うさぎなのですが、風うさぎの特徴も持っています。
驚くことがあるかもしれませんが、私がしっかり見守りますのでご安心ください」
「「ハーイ!」」
水うさぎは水辺に生息する。セイレンがルリを託したのは、レイクの水魔法で水浴びをさせるためだろう。
レイクに実戦授業の一環としてそれも伝えておかないとな。
「では、参りましょうか」
今日は庭師のバーナードより伝言があり、先日言っていた件を授業として取り入れることになった。
元々予定していた座学を終えたあと、借り受けることになった花壇の一角に来た。
「──! ゼヤ」
『な、ナンでいるでしー!?』
そこにはなぜか、実体化したゼヤの姿が。
ルリは驚きでまた片耳がピーンと上に伸びている。
いや、影ならいつでも来いとは言ったけど。
ふつうに人前に出てくるとは聞いてない。
「……? せんせー、どなたでしょうか?」
「おしりあいですか?」
「……」
相手が子供だろうが変わらない表情。
いつもながらクールだな……。
というか遠巻きに使用人の女性二人がめっちゃ見てる。
「許可はとった」
「え?」
まぁ実体化したなら誰の目にも見えるだろうけど……。
「どうしたんだ? 急に──」
「モルドラン様」
「ヴィクター!」「ヴィクター殿?」
ゼヤに問いかける前にヴィクターが現れた。
「ライネリオ様より伝言がございます。」
「伝言?」
まさか、……許可というのは。
「はい。ゼヤ様のことは、実力もある……大切なご友人同士と聞き及んでおります。
屋敷の者にも伝達いたしましたので、どうぞご自由に屋敷をご利用ください……とのことです」
「ぜ、ゼヤ……どういうことなんだ?」
「別に。効率よくお前の側に居るためだ」
侵蝕のことか。それは、まぁ。出来ることなら役に立ちたいが。
「い、いや。ほら、方法なら色々あるだろう」
『ぷぅぷぅ』
ルリも頷いて同意する。
今この場で口にはできないが、方法ならある。
俺の影に入るとか。俺の影に入るとか。俺の影に入るとか!
「……」
「では、確かにお伝えいたしました。レイク様、フローリア様、引き続き頑張ってくださいね」
「ありがとう、ヴィクター!」「ありがとうございます」
それだけ言うとヴィクターは去って行った。
ゼヤ、まさか領主にゴリ押ししたんじゃないよな?
「あの、ゼヤさま? は、まほうしですか?」
「……」
おいおい、子供相手に無言はいかんだろ。
「ゼヤさま、モルドさまのごゆうじんなのですか?
わたくしはフローリアともうします。よろしくおねがいいたしますわ」
「ぼ、ぼくはレイクです。よろしくおねがいします!」
あぁ、健気。
ちゃんと挨拶ができてえらい、いい子。
いくら接し方が分からんとはいえ、大人げないぞゼヤ。
「……。ゼヤと呼べ。魔法師……かどうかは分からないが、闇魔法を使う」
「まぁ! あつかいのムズかしい、やみまほうですか」
「すごい! さすがモルドせんせーのごゆうじん!」
お、珍しい。ゼヤが自分のことをちょっとでも話すなんて。
やっぱかわいいは正義なんだよな。
「まぁ、もう来てしまったのなら仕方がない。
とりあえず俺が二人に教えている間、ルリを肩に乗せてやってくれ」
『ミーーーーーー!!??』
「……」
嫌そう。ルリはとても嫌そうだ。
まぁ大精霊の肩とか畏れ多いよな。
ゼヤは目を閉じて「勝手にしろ」とでも言いたげだ。
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