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第十八話 火の大精霊
しおりを挟む「ヴァルロード、元気そうだな」
『おう! とてつもなく元気だぞ!』
『なんか……アツいお方でしっ』
真っ赤な色と、メッシュのように所々オレンジの色が入った髪。
それをハーフアップのようにしている、セイレンとゼヤの間くらい長い髪の精霊。
服装もセイレンと似通っていて、まるで東洋の将軍のようだ。
「暑苦しい……」
『ああん!? ゼヤ、なんつった!?』
「まぁまぁ、落ち着いてくれ……」
ゼヤと真逆の性格で、折り合いは悪そうだ。
だが面倒見のいい兄のような部分は似ていると、俺はこっそり思っている。
「今日はどうしたんだ?」
『いや、なに。セイレンは聖獣を授けたと言うし、ゼヤに至っては行動を共にしていると言う。オレもなにかしてやりたいと思ってな!』
「そ、そうか」
『前回オレの力を使ったのは、国王の前でだっただろう?』
「君の力を借りるほど、強い魔物もいなかったからな」
『カーッ! 人にしておくには惜しい力だな!』
豪快に笑うヴァルロードは、どこか楽しそうだ。
「俺はあくまで大精霊と『対話』したのであって、『加護』を授けてもらったことは公にしていない。信用できる者には明かしているが……面倒事に巻き込まれるのはごめんだからな」
『モルドはやさしいでし~♪』
『あぁ。本音はオレたちを人の道具にしたくないだとか、そんなこと考えてるんだろうよ!』
「か、買い被りすぎだ」
もちろんそういう気持ちもなくはないのだが。
『お前が魔導師の……試験? とやらで、オレたち六人を召喚すればお前は名実共に最高の魔法師であっただろうに』
「『魔導師』とは、内なる魔力を魔道具で封じた状態で、無詠唱で魔法を繰り出せることが条件だ。力さえ貸してもらえれば、君たちを喚ぶほどでもないよ」
国家権力が集まる中でそんなことをすれば、一介の冒険者ではいられない。
それはつまり、デュナメリ家に来ることもなかったかもしれないということだ。
レイクとフローリアに会えなかったなんて……考えるだけでも恐ろしい!
『ほ~ぉ? 人の考えることはよく分からんが、まぁ困ったことがあれば言うといい! このヴァルロードが力になるぞ!』
「あぁ、ありがとう。その時はすぐに喚ぶよ」
『ハッハッハ! 約束だぞ!』
それだけ言うと、アツい男ことヴァルロードは消えていった。
本当に精霊って神出鬼没だよな……。
「ゼヤ」
「……」
呼びかけると、腕組みをしたまま閉じていた瞼を開く。
ゼヤは途中からヴァルロードのことを認識しないよう目を瞑っていた。
そ、そんなに苦手なのか。
『みなさまお元気そうでなによりでし!』
「あぁ、そうだな。元気に越したことはないよ」
それにしたって、ウィンドローズに来てから大精霊たちが自ら姿を現す機会が多い。
ゼヤは元々影によく入っていたから別だが、他の大精霊たちはどうしてだろう。
地方よりも精霊信仰が薄い王都では、思う様に力が出せないのだろうか?
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