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第二十一話 領都散策②

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『きれいでし~♪』

 元々辺境であったウィンドローズ領は、デュナメリ家の先祖と、それに付き従ったエルローゼ家の先祖が開拓。その功績でフローリアの生家は爵位をもらったらしい。

 特に領都周辺はよく整備されている。
 道も石畳が敷かれ、所々に公共の花壇がある。
 ルリは植わった花に近付くと、鼻をヒクヒクさせた。
 かわいい。

 花といえば……、ギースは元気だろうか。

「冒険者とやらが多いな」
「そうだな。王都と比べても遜色がない」

 王都は人口が多い……イコール仕事が多いから、冒険者が多いのも分かるのだが。
 この街も、王都から離れた地ながら行き交う冒険者の割合が多い。

 ひらかれたとはいえ、領地は広大でまだまだ開拓されていない土地も多い。
 そこには魔物も集まるため、冒険者が駆り出されるのだろうな。

『モルドー! みてみてーでし!』
「ん?」

 ルリが示す花壇を見ると、花の影から精霊がひょっこり出てきた。

「おぉ」

 花の精霊か。掌ほどの精霊はもじもじと照れながらお辞儀だけして消えた。

「……もともと精霊が多い土地なんだろうか?」

 それとも満ちる魔力が豊富な土地……とか?

「花か……、サニヤリーとクレイリーは元気かな」
「さあな」

 地の大精霊は双子。緑魔法と土魔法をそれぞれ司っている。
 姉のサニヤリーは恥ずかしがり屋で、さきほどの花の精霊そっくりだ。

「久しく会っていないが、元気だといいな」
『モルド、モルド! ルリは元気でし! ムンッ!』
「それは知ってるよ」

 目立ちたがりなルリが元気アピールしてきた。
 浮きながらドヤ顔で腰に手を当てている。
 毎度毎度かわいいな。

「辺境かぁ」

 王都に居た頃はアレクスの意向で金回りのいい依頼ばかり受けていた。
 それは大体、商人が遠出する時の護衛だったり、魔物討伐だったりするのだが……一番遠くに足を運んだのはニーズヘッグの時だった。

「ん?」

 深く気にしていなかったが……。
 王都には強者は集まっていたが、街自体に防御の魔法は掛けられていなかった。
 少し足を伸ばせば魔物がいるというのに、街が襲われることはそう多くはなく、あっても騎士団や冒険者にすぐ鎮圧される規模。

 獣の生存本能で強い者を襲わない、という理屈だと思っていたが。
 もしかすると、内なる魔力が多く集まる場所には近づかない。と言った方が正しいのかもしれない。

 逆に言えば人が少ない集落は危険かもしれないな。

「俺ってほんと、パーティに貢献できるかどうかで生きてたんだな」
「……?」
『なんでしか?』
「こっちの話」

 ちょっと離れただけだというのに。
 考えることや気付くことが新鮮で、どこか視界がひらけた気分だ。

「よし。手紙出したら依頼、受けるか!」
『オーー!! でしっ』
「……」

 なら、ここにいる以上。
 誰かのためってのもいいが。それ以上に、自分がどう思うかを大切に冒険者稼業をやってみるのもいいかもしれないな。

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