もう一度、誰かを愛せたら

ミヒロ

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豊side

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今思えば、どうしてずっと気づかなかったんだろ...。

涼太も俺と同じく、いつも樹の傍にいて、樹の名前を嬉しそうに呼んで。

樹の両脇には俺と涼太がいた。

樹と同じく、涼太もΩだからかな、涼太が樹のことを好きだと思わなかったのかもしれない。
単純に気が合うんだろうな、くらいにしか思っていなかった。

中1の頃、秘かになにも知らず、涼太に、実は樹が好きなことを話した。

「へえ!お似合いだと思う!頑張りなよ、豊」

笑顔で涼太にそう言われて、でもなかなか告白する勇気がなくて。

中学を卒業するまでには告白しようと漠然と考えてはいた。

クリスマス前、涼太にプレゼント選びに付き合って欲しい、と頼んだ。

涼太は二つ返事でOKしてくれ、ショッピングモールを歩きながら、樹に渡すプレゼントを探した。

「これとかどう?」

涼太が笑顔で見せたのは樹の小さな手に合いそうなニットの手袋。

「んー...迷うなあ」

手に取っていた淡いグレーベースのマフラーと見比べた。

「両方、セットにしちゃえば?豊、お金持ちでしょ」

「俺が金持ちな訳じゃねーよ」

親が会社の取締役、俺はその息子なだけ。

「でも、そのマフラーも悪くないね」

まさか、告白することを打ち明け、そのプレゼント選びに笑顔で付き合ってくれている涼太が本当はライバルだなんて当時は思いもしていなかった。

そして、告白前夜、突然、涼太に呼び出された。

「どうしたよ、いきなり」

「んー...豊に話すか悩んだんだけどね」

神妙な面持ちの涼太の言葉を待った。
雪が降り出しそうな寒い夜だった。

「樹から聞いたんだけどさ、樹、好きな人いるんだって」

呆然となった。

涼太も、

「ごめんね、もっと早く知ってたら....」

明日のクリスマスに樹にプレゼントを渡し、告白するつもりだった俺は寒空の下、暫く立ち尽くした。
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