「異常」と言われて追放された最強聖女、隣国で超チートな癒しの力で溺愛される〜前世は過労死した介護士、今度は幸せになります〜

赤紫

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第3話:新天地での真価発揮

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「これはアルトリアの愚かさに感謝すべきだな」

 ベルガリア王国の玉座の間で、国王が立ち上がりながら私に向かって軽く頭を下げた。

 その光景に、居合わせた廷臣たちは驚きを隠せない。国王自らが頭を下げるなど、滅多にないことだった。威厳ある白い髭を蓄えた国王の表情には、心からの敬意が浮かんでいる。

「真の聖女を我が国が迎えられるとは、まさに僥倖だ」

 温かい歓迎の言葉に、胸が熱くなる。アルトリア王国では「異常」として恐れられた私の力が、ここでは正当に評価されている。

「息子を救ってくださった恩人だ。それだけでも十分だが、その治療技術たるや、まさに神業だったと聞いている」

 私は「王国顧問聖女」という特別な地位を与えられた。前例のない地位だと聞いている。そして王宮内に専用の居住区を与えられることになった。

「ここが君の新しい住まいだ。気に入ってもらえるかな?」

 アレクシス王子が案内してくれた部屋は、窓が大きく取られ、陽光がたっぷりと差し込む明るい空間だった。アルトリア王国での侯爵令嬢時代よりも豪華で、何より、ここには冷たい視線も嘲笑もない。

「皆様がこんなに親切にしてくださって...まだ信じられません」

 侍女長のマリアが丁寧に頭を下げる。彼女は四十代半ばの、穏やかな雰囲気の女性だった。

「リリアナ様、何かご不便がございましたら何でもおっしゃってください」

「王子様をお救いいただいた恩は、我ら国民全員の恩でございます」

 その言葉に偽りはなかった。城内で働く人々は皆、私に対して自然な敬意を示してくれる。



 平穏な日々も束の間、王国内で原因不明の疫病が発生した。

「高熱と嘔吐、そして全身に発疹が現れます」

 宮廷医師のエドガード博士が、困り果てた表情を見せる。

「既存の治療法では効果がありません。このままでは患者たちが...」

「私の治療魔法でも改善が見られないのです」

 宮廷魔法使いのガブリエルも頭を抱えていた。彼は中級程度の治療魔法を使えるが、今回の疫病には歯が立たないようだった。

 廷臣たちが対策を議論する中、私は静かに申し出た。

「私にやらせていただけませんか?」

「しかし、我々でも治せないものを...」

 エドガード博士が躊躇する。無理もない。彼らからすれば、私はまだ実績のない新参者なのだ。

「やってもらおう」

 アレクシス王子が即座に答えた。

「リリアナなら必ず何とかしてくれる」

 その信頼に満ちた声に、私は深く頭を下げた。



 王都の病院に向かった私。建物に入った瞬間、消毒薬の匂いと患者たちの苦しそうな呻き声が鼻と耳を襲った。

 前世の介護士経験が、ここで生きてくる。

 症状を詳しく観察すると、これは単なる病気ではなく感染症だった。最高位ヒールを使えば症状は改善するが、根本原因を断たなければ再発する。私は前世の医学知識を総動員して、疫病の原因を探った。

「水源を調べてください。おそらくそこに原因が」

 私の指示で調査した結果、上水道に寄生虫の卵が混入していることが判明した。

「水を一度沸騰させてから飲んでください。そして患者の皆さんには——」

 一人一人に最高位ヒールを施していく。

「ヒール・マックス」

 温かい光が患者を包むたびに、高熱は下がり、発疹は消え、苦しそうな表情が安らかなものに変わっていく。その完璧な治療に、医師も魔法使いも言葉を失う。

「信じられない...」

 エドガード博士が震え声で呟いた。

「数分で全ての症状が完治するなんて!こんな治療は見たことがない!」

「まるで奇跡のようです!」

 看護師たちも驚嘆の声を上げた。

 病院の外では、治療を受けた患者の家族たちが待っていた。

「リリアナ様!息子が元気になりました!ありがとうございます!」

 農民の妻が涙を流しながら感謝を伝える。その隣で、小さな男の子が元気に走り回っていた。

「我が家の病人も皆、完治いたしました!命の恩人です!」

 商人も深々と頭を下げた。

「こんな素晴らしい治療師がいてくださるなんて...我が国は幸せです」

 群衆から「リリアナ様万歳!」「真の聖女万歳!」という声が上がる。

 前世で患者の回復を喜んでくれた人たちの顔が蘇る。あの時と同じ、純粋な感謝の気持ち。これこそが、私が求めていたものだった。



 疫病が終息した頃、今度は国境近くの村で魔獣の被害が続発していた。

「もう限界です」

 村長のトーマスが疲れ果てた様子で訴える。

「畑は荒らされ、家畜は襲われ...このままでは村を捨てるしかありません」

「魔獣を討伐するしかないでしょう」

 騎士団長のバルトロメオが提案した。彼は歴戦の勇士で、多くの魔獣討伐の経験を持つ。

「少し待ってください」

 私は手を上げた。

「討伐ではなく、共存の道があるかもしれません」

 前世の介護経験で培った「相手の立場に立って考える」能力が、ここで発揮される。

「魔獣にも魔獣なりの事情があるはずです。一度、彼らと話してみませんか?」

「話す?魔獣と?」

 バルトロメオが困惑した表情を見せる。

「リリアナ様、魔獣は人間の言葉を理解しません」

「言葉が通じなくても、心を通わせることはできます」

 村の近くの森で、私は魔獣たちと対峙した。大型の狼のような魔獣が数匹、警戒しながらも近づいてくる。その瞳には確かに知性の光があった。

「怖くない。私はあなたたちを傷つけるつもりはありません」

 前世で認知症の患者と接した時の経験が生きる。言葉が通じなくても、優しい気持ちは伝わる。

 魔獣の一匹が足を引きずっていることに気づいた私は、迷わずヒールを使った。

「痛かったでしょう。もう大丈夫よ」

 治療された魔獣は、私に向かって頭を下げるような仕草を見せる。そして仲間たちを呼び寄せるように鳴き声を上げた。

「魔獣が大人しく...まるで彼らと心が通じ合っているようだ」

 バルトロメオが驚嘆の声を上げた。

「すごいな、リリアナ様」

 魔獣たちは私を森の奥へと案内した。そこには汚染された水場があった。

「彼らは森の奥の水場が汚染されて、仕方なく人里に下りてきていたのです」

 問題の根本を解決し、魔獣たちのための新しい水場を確保することで、被害は完全になくなった。村人たちは魔獣たちと平和に共存できるようになった。



 王国には多くの高齢の貴族や平民がいたが、適切なケアが行われていなかった。

「歳を取ると体のあちこちが痛んで...生きているのが辛い」

 老貴族のシャルル侯爵が弱々しく呟く。彼は七十を超える高齢で、関節痛に悩まされていた。

 私は前世の介護士経験を活かし、単なる治療ではなく、生活の質を向上させるケアを提案した。

「体の痛みを和らげるだけでなく、心の支えも必要です」

「心の支え...?」

「はい。お話を聞かせていただき、お一人お一人に適したケアをいたします」

 前世で学んだ技術を魔法と組み合わせ、画期的な高齢者ケアシステムを確立した。単に痛みを取るだけでなく、心のケアも含めた総合的な治療を行った。

「リリアナ様のおかげで、この歳になって生きる希望が湧いてきました」

 シャルル侯爵の表情が明るくなる。

「ありがとう!本当にありがとう!」

「あなたは本当に天使のような方ですね」

 老婦人も目を潤ませて感謝を伝えてくれた。



 これらの活躍により、私は国民から絶大な支持を得るようになった。

「リリアナ様こそ真の聖女だ!」
「この国に来てくださって本当にありがとう!」
「アルトリア王国の人間は本当に愚かだったな」

 街を歩けば声をかけられ、感謝の言葉をもらう。子供たちが私を見て手を振り、商人たちが丁寧にお辞儀をする。

「リリアナ様、あなたは本物の奇跡です」

 宮廷魔法使いのガブリエルも、心からの敬意を示してくれた。

「ありがとう、希望を与えてくれて」

 そして何より、アレクシス王子との距離も縮まっていった。

「君と出会えて本当によかった」

 王子が穏やかな笑顔を見せる。執務室で二人きりになった時のことだった。

「君がいてくれるおかげで、この国はどんどん良くなっている。国民たちの表情も明るくなった」

 私も微笑み返した。ここが、私の本当の居場所なのだと確信していた。

 夕日が王宮の窓を染める中、私は新しい生活への満足感を噛みしめていた。

 前世でも今世でも、人を救うことが私の使命。そして今度は、それを理解してくれる人たちと一緒に歩んでいける。

 これ以上の幸せはないと思った。
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