【完結】あなたの瞳に映るのは

今川みらい

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あの時、私を守りたいと言ってくれた彼の気持ちは、やはりただの同情心だった。

だから今になって私との婚約を破棄したのだろう。
そして彼は新しい婚約者に義妹を選んだ。

婚約破棄を言い渡された私は、あれから茫然自失となり何とか自室まで戻って来た。

どうしてこんな事になってしまったのか。

レオンハルト様のそばでずっと幸せな時間が続くと思っていたのに──彼は人が変わったように冷たくなってしまった。

「何をめそめそしているの?お義姉様。こんなの当然の結果じゃない」

ノックもせずに突然部屋に入って来たローズが私を嘲笑うかのように言った。

「あんな美麗で素敵な方の隣があんたなんかに務まる筈がないわ。髪も目も真っ黒で見ているだけで気が滅入るもの」

ローズはピンクベージュの髪に明るい新緑色の瞳をしており、誰もが目を引く華やかな容姿をしていた。

「瞳は真っ黒じゃないわ」

レオンハルト様に褒められた瞳だ。
あの日以降、私は下を向くのは止めたのだから。

「は?何を馬鹿な事言ってるの?誰がどう見てもあんたの目は真っ黒よ。陛下に嫌われて気がおかしくなったんじゃない?」

「……嫌われた訳じゃないわ」

愛ではなかったにしろ、15年以上共に過ごした絆はある。
そんな彼がそう簡単に人を嫌になる性格ではない事くらい良く分かっていた。

「素直に認められないなんて惨めな人。あんたはもう捨てられたのよ。陛下の婚約者じゃなくなったお義姉様に、この家に居場所はないの。さっさとこの部屋から出て行ってちょうだい。ここは私の衣装部屋にするから」

「なっ……ふざけた事言わないで」

物を勝手に漁り出した義妹を慌てて止めようとした時、部屋の中に義母と使用人達がぞろぞろと入って来た。

「あら。まだここにいたの?早く出て行ってくれないかしら。お前の顔など見たくもないのに」

「そんな……お待ち下さい!まだ準備が……」

「何よこれ!お義姉様は陛下からこんな高価な物を貰っていたのね」

その時、アクセサリーボックスを漁っていたローズが、美しい空色に輝くブルーダイヤのネックレスを取り出した。

「触らないで!それは──」

今年の誕生日にレオンハルト様からプレゼントされた大切なものだった。

「私は陛下の婚約者になったのだから、これは貰っても構わないわよね」

うっとりとネックレスを眺めていた義妹は、それを自身の首にかけようとした。

「返して!」

私はローズのそばに駆け寄ると、彼女の頬を力の限り叩いた。

パンッ──

頬を打つ音が室内に大きく響いた。

「きゃあっ」

ローズは甲高い悲鳴を上げると、頬を押さえてその場に膝をついた。

「何て事を!ローズは陛下の婚約者になったのよ?!顔に傷でも作ってみなさい。お前は処刑されるわよ!」

「陛下が私を処刑すると言うのなら、それでも構わない!」

私は言い返すと、睨むように義母の瞳を見た。

「……忌々しい目でこちらを見ないでちょうだい」

 義母の瞳に映るのは、私に対する激しい憎悪だった。

「この娘を外の納屋に閉じ込めておきなさい。二度と出られないようにね」


レオンハルト様という後ろ楯を失った私は、穏やかだった日常から再び地獄に突き落とされた。

    
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