4 / 19
4
しおりを挟む
あの時、私を守りたいと言ってくれた彼の気持ちは、やはりただの同情心だった。
だから今になって私との婚約を破棄したのだろう。
そして彼は新しい婚約者に義妹を選んだ。
婚約破棄を言い渡された私は、あれから茫然自失となり何とか自室まで戻って来た。
どうしてこんな事になってしまったのか。
レオンハルト様のそばでずっと幸せな時間が続くと思っていたのに──彼は人が変わったように冷たくなってしまった。
「何をめそめそしているの?お義姉様。こんなの当然の結果じゃない」
ノックもせずに突然部屋に入って来たローズが私を嘲笑うかのように言った。
「あんな美麗で素敵な方の隣があんたなんかに務まる筈がないわ。髪も目も真っ黒で見ているだけで気が滅入るもの」
ローズはピンクベージュの髪に明るい新緑色の瞳をしており、誰もが目を引く華やかな容姿をしていた。
「瞳は真っ黒じゃないわ」
レオンハルト様に褒められた瞳だ。
あの日以降、私は下を向くのは止めたのだから。
「は?何を馬鹿な事言ってるの?誰がどう見てもあんたの目は真っ黒よ。陛下に嫌われて気がおかしくなったんじゃない?」
「……嫌われた訳じゃないわ」
愛ではなかったにしろ、15年以上共に過ごした絆はある。
そんな彼がそう簡単に人を嫌になる性格ではない事くらい良く分かっていた。
「素直に認められないなんて惨めな人。あんたはもう捨てられたのよ。陛下の婚約者じゃなくなったお義姉様に、この家に居場所はないの。さっさとこの部屋から出て行ってちょうだい。ここは私の衣装部屋にするから」
「なっ……ふざけた事言わないで」
物を勝手に漁り出した義妹を慌てて止めようとした時、部屋の中に義母と使用人達がぞろぞろと入って来た。
「あら。まだここにいたの?早く出て行ってくれないかしら。お前の顔など見たくもないのに」
「そんな……お待ち下さい!まだ準備が……」
「何よこれ!お義姉様は陛下からこんな高価な物を貰っていたのね」
その時、アクセサリーボックスを漁っていたローズが、美しい空色に輝くブルーダイヤのネックレスを取り出した。
「触らないで!それは──」
今年の誕生日にレオンハルト様からプレゼントされた大切なものだった。
「私は陛下の婚約者になったのだから、これは貰っても構わないわよね」
うっとりとネックレスを眺めていた義妹は、それを自身の首にかけようとした。
「返して!」
私はローズのそばに駆け寄ると、彼女の頬を力の限り叩いた。
パンッ──
頬を打つ音が室内に大きく響いた。
「きゃあっ」
ローズは甲高い悲鳴を上げると、頬を押さえてその場に膝をついた。
「何て事を!ローズは陛下の婚約者になったのよ?!顔に傷でも作ってみなさい。お前は処刑されるわよ!」
「陛下が私を処刑すると言うのなら、それでも構わない!」
私は言い返すと、睨むように義母の瞳を見た。
「……忌々しい目でこちらを見ないでちょうだい」
義母の瞳に映るのは、私に対する激しい憎悪だった。
「この娘を外の納屋に閉じ込めておきなさい。二度と出られないようにね」
レオンハルト様という後ろ楯を失った私は、穏やかだった日常から再び地獄に突き落とされた。
だから今になって私との婚約を破棄したのだろう。
そして彼は新しい婚約者に義妹を選んだ。
婚約破棄を言い渡された私は、あれから茫然自失となり何とか自室まで戻って来た。
どうしてこんな事になってしまったのか。
レオンハルト様のそばでずっと幸せな時間が続くと思っていたのに──彼は人が変わったように冷たくなってしまった。
「何をめそめそしているの?お義姉様。こんなの当然の結果じゃない」
ノックもせずに突然部屋に入って来たローズが私を嘲笑うかのように言った。
「あんな美麗で素敵な方の隣があんたなんかに務まる筈がないわ。髪も目も真っ黒で見ているだけで気が滅入るもの」
ローズはピンクベージュの髪に明るい新緑色の瞳をしており、誰もが目を引く華やかな容姿をしていた。
「瞳は真っ黒じゃないわ」
レオンハルト様に褒められた瞳だ。
あの日以降、私は下を向くのは止めたのだから。
「は?何を馬鹿な事言ってるの?誰がどう見てもあんたの目は真っ黒よ。陛下に嫌われて気がおかしくなったんじゃない?」
「……嫌われた訳じゃないわ」
愛ではなかったにしろ、15年以上共に過ごした絆はある。
そんな彼がそう簡単に人を嫌になる性格ではない事くらい良く分かっていた。
「素直に認められないなんて惨めな人。あんたはもう捨てられたのよ。陛下の婚約者じゃなくなったお義姉様に、この家に居場所はないの。さっさとこの部屋から出て行ってちょうだい。ここは私の衣装部屋にするから」
「なっ……ふざけた事言わないで」
物を勝手に漁り出した義妹を慌てて止めようとした時、部屋の中に義母と使用人達がぞろぞろと入って来た。
「あら。まだここにいたの?早く出て行ってくれないかしら。お前の顔など見たくもないのに」
「そんな……お待ち下さい!まだ準備が……」
「何よこれ!お義姉様は陛下からこんな高価な物を貰っていたのね」
その時、アクセサリーボックスを漁っていたローズが、美しい空色に輝くブルーダイヤのネックレスを取り出した。
「触らないで!それは──」
今年の誕生日にレオンハルト様からプレゼントされた大切なものだった。
「私は陛下の婚約者になったのだから、これは貰っても構わないわよね」
うっとりとネックレスを眺めていた義妹は、それを自身の首にかけようとした。
「返して!」
私はローズのそばに駆け寄ると、彼女の頬を力の限り叩いた。
パンッ──
頬を打つ音が室内に大きく響いた。
「きゃあっ」
ローズは甲高い悲鳴を上げると、頬を押さえてその場に膝をついた。
「何て事を!ローズは陛下の婚約者になったのよ?!顔に傷でも作ってみなさい。お前は処刑されるわよ!」
「陛下が私を処刑すると言うのなら、それでも構わない!」
私は言い返すと、睨むように義母の瞳を見た。
「……忌々しい目でこちらを見ないでちょうだい」
義母の瞳に映るのは、私に対する激しい憎悪だった。
「この娘を外の納屋に閉じ込めておきなさい。二度と出られないようにね」
レオンハルト様という後ろ楯を失った私は、穏やかだった日常から再び地獄に突き落とされた。
31
あなたにおすすめの小説
【短編】ちゃんと好きになる前に、終わっただけ
月下花音
恋愛
曖昧な関係を続けていたユウトとの恋は、彼のインスタ投稿によって一方的に終わりを告げた。
泣くのも違う。怒るのも違う。
ただ静かに消えよう。
そう決意してトーク履歴を消そうとした瞬間、指が滑った。
画面に表示されたのは、間の抜けたクマのスタンプ。
相手に気付かれた? 見られた?
「未練ある」って思われる!?
恐怖でブロックボタンを連打した夜。
カモメのフンより、失恋より、最後の誤爆が一番のトラウマになった女子大生の叫び。
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
私達、婚約破棄しましょう
アリス
恋愛
余命宣告を受けたエニシダは最後は自由に生きようと婚約破棄をすることを決意する。
婚約者には愛する人がいる。
彼女との幸せを願い、エニシダは残りの人生は旅をしようと家を出る。
婚約者からも家族からも愛されない彼女は最後くらい好きに生きたかった。
だが、なぜか婚約者は彼女を追いかけ……
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~
marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」
「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」
私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。
暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。
彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。
それなのに……。
やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。
※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。
※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。
好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる