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納屋に閉じ込められて何日経つのだろう。
窓も灯りもないそこは常に真っ暗で、朝なのか夜なのかも分からない。
時折使用人が来て食事を置いていくが、日にちを訪ねても何一つ答えてはくれなかった。
納屋には毛布などの寝具は一切なく、底冷えする固い床に身を縮ませながら寝ていた。
一体いつになったらここから出られるのだろう。
先の見えない不安と暗黒に包まれている環境でどんどん気持ちが堕ちていく。
『家族に虐げられていたお前が哀れで、今まで付き合っていただけだ』
彼の言葉が薔薇の棘のようにもがけば踠くほど心に深く突き刺さる。
彼に愛はなかった──その事実を知り誰からも愛されていない自分など、早く消えてなくなればいいとさえ思った。
ガチャリ──
そんな時、納屋の鍵が外される音がして突然扉が開いた。
久しぶりの陽光に目を細めながら扉の方を見ると、そこに立っていたのは無表情の侍女だった。
「これからアストレア城で国王陛下とローズお嬢様の婚約披露パーティーがあります。早く支度をして下さい」
「……婚約披露パーティ?そんな場所、行ける筈がないわ。私は陛下に捨てられた女なのよ」
「国王陛下から貴女に向けて招待状が届いているのです。断る事など許されません」
婚約破棄された人の婚約披露パーティーに、私はどんな顔で行ったらよいのだろう。
しかも相手は義妹だ。
皆から笑い者にされるのが目に見えている。
どうして彼は私に招待状を送ったのだろう──その意図が理解出来なかった。
◇◆◇
アストレア城内にあるパーティー会場に入ると、そこは華やかに着飾った紳士淑女達で溢れ返っていた。
私は顔を見られないようにうつ向いたまま移動すると、大きな彫刻の影に隠れるように立った。
「驚きよね。今になって婚約破棄だなんて」
若い令嬢達のひそひそ話が耳に入ってきた。
「よほどの事があったのよ。噂じゃティアラ様が他の男に色目を使ったらしいわよ」
「ええっ?!そうなの?私はティアラ様が実は妾の子だったって聞いたけど……」
令嬢達は好き勝手に面白おかしく話していた。
だからこんな場所には来たくなかったのだ──私は小さく吐息を吐いた。
そんな時、会場でひときわ大きな歓声が上がった。
主役の二人が入場して来たのだ。
皆に笑顔で挨拶しているレオンハルト様は、白地の生地に金糸で見事な刺繍が施された燕尾服を纏っており、美麗さに磨きがかかっていた。
そんな彼の隣には、幸福で満ち溢れた表情のローズがいた。
澄んだ空色の瞳に映るのはもう私ではなかった。
彼は手の届かない場所に行ってしまったのだと思い知らされ、胸の奥がズキリと痛んだ。
本来であれば、彼の隣にいるのは私だったのに。
「本当にお似合いのお二人ね」
近くにいた令嬢が感嘆のため息をつくように言った。
「前のティアラ様も良かったけど、何処か影がある人だったわよね。髪も目も真っ黒だったし。華やかでお美しい国王陛下にはローズ様の方がお似合いね」
彼女達の何気ない会話が胸に深く突き刺さった。
レオンハルト様と釣り合わない事くらい、自分が一番良く分かっていた。
義妹のように人目を引く見た目じゃない事も。
たとえそうだとしても私は彼と一緒にいたかったのだ。
こんなに惨めな思いをするくらいなら、あのまま暗い納屋で閉じ込められていた方がずっと良かった。
この場に来てしまった事を深く後悔していた時──
「ティアラお義姉様!」
会場内に響き渡るような声で義妹が私の名を呼んだ。
窓も灯りもないそこは常に真っ暗で、朝なのか夜なのかも分からない。
時折使用人が来て食事を置いていくが、日にちを訪ねても何一つ答えてはくれなかった。
納屋には毛布などの寝具は一切なく、底冷えする固い床に身を縮ませながら寝ていた。
一体いつになったらここから出られるのだろう。
先の見えない不安と暗黒に包まれている環境でどんどん気持ちが堕ちていく。
『家族に虐げられていたお前が哀れで、今まで付き合っていただけだ』
彼の言葉が薔薇の棘のようにもがけば踠くほど心に深く突き刺さる。
彼に愛はなかった──その事実を知り誰からも愛されていない自分など、早く消えてなくなればいいとさえ思った。
ガチャリ──
そんな時、納屋の鍵が外される音がして突然扉が開いた。
久しぶりの陽光に目を細めながら扉の方を見ると、そこに立っていたのは無表情の侍女だった。
「これからアストレア城で国王陛下とローズお嬢様の婚約披露パーティーがあります。早く支度をして下さい」
「……婚約披露パーティ?そんな場所、行ける筈がないわ。私は陛下に捨てられた女なのよ」
「国王陛下から貴女に向けて招待状が届いているのです。断る事など許されません」
婚約破棄された人の婚約披露パーティーに、私はどんな顔で行ったらよいのだろう。
しかも相手は義妹だ。
皆から笑い者にされるのが目に見えている。
どうして彼は私に招待状を送ったのだろう──その意図が理解出来なかった。
◇◆◇
アストレア城内にあるパーティー会場に入ると、そこは華やかに着飾った紳士淑女達で溢れ返っていた。
私は顔を見られないようにうつ向いたまま移動すると、大きな彫刻の影に隠れるように立った。
「驚きよね。今になって婚約破棄だなんて」
若い令嬢達のひそひそ話が耳に入ってきた。
「よほどの事があったのよ。噂じゃティアラ様が他の男に色目を使ったらしいわよ」
「ええっ?!そうなの?私はティアラ様が実は妾の子だったって聞いたけど……」
令嬢達は好き勝手に面白おかしく話していた。
だからこんな場所には来たくなかったのだ──私は小さく吐息を吐いた。
そんな時、会場でひときわ大きな歓声が上がった。
主役の二人が入場して来たのだ。
皆に笑顔で挨拶しているレオンハルト様は、白地の生地に金糸で見事な刺繍が施された燕尾服を纏っており、美麗さに磨きがかかっていた。
そんな彼の隣には、幸福で満ち溢れた表情のローズがいた。
澄んだ空色の瞳に映るのはもう私ではなかった。
彼は手の届かない場所に行ってしまったのだと思い知らされ、胸の奥がズキリと痛んだ。
本来であれば、彼の隣にいるのは私だったのに。
「本当にお似合いのお二人ね」
近くにいた令嬢が感嘆のため息をつくように言った。
「前のティアラ様も良かったけど、何処か影がある人だったわよね。髪も目も真っ黒だったし。華やかでお美しい国王陛下にはローズ様の方がお似合いね」
彼女達の何気ない会話が胸に深く突き刺さった。
レオンハルト様と釣り合わない事くらい、自分が一番良く分かっていた。
義妹のように人目を引く見た目じゃない事も。
たとえそうだとしても私は彼と一緒にいたかったのだ。
こんなに惨めな思いをするくらいなら、あのまま暗い納屋で閉じ込められていた方がずっと良かった。
この場に来てしまった事を深く後悔していた時──
「ティアラお義姉様!」
会場内に響き渡るような声で義妹が私の名を呼んだ。
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