【完結】あなたの瞳に映るのは

今川みらい

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婚約披露パーティーが終わり伯爵家に戻ると、私はすぐに手足を縛られ納屋に転がされた。

「陛下に婚約破棄されたからって、すぐ他の男に色目を使うなんて……」

目の前には瞳に激しい憎悪の光を宿したローズが仁王立ちしていた。

「色目なんて使ってないわ」

「うるさい!そうやっていつも自分は悪くない振りをして!」

ローズは近くに置いてあった木材を手に取ると、それで私の足を思い切り叩いた。

足に激痛が走り思わず呻き声を上げた。

「ゼスティリア王国の王子と何を話していたの?婚約破棄された哀れな自分を助けて下さいとでも懇願して、媚びを売っていたんでしょう」

「違うわ。ただ普通に会話しただけよ」

「誰があんたの話なんて信じるものですか。レオンハルト様の時だって、彼の同情を上手く誘って婚約したんじゃない」

何も言い返せずに黙り込んでいると、彼女の手に何故かハサミが握られているのに気がついた。

「……どうしてハサミを持っているの」

「男に媚を売るしか能がないあんたが、二度と人前に出られないようにしてあげる」

不気味な薄ら笑いを浮かべたローズが、私の顔のすぐ前で銀色に輝くハサミをちらつかせて見せた。

──怖い

逃げたくても手足を固く縛られていて身動きが取れない。

助けてと声の限り叫んでも、陛下から見捨てられた私を誰も助けに来ることはなかった。

「どんなに叫んでも誰もあんたを助けないわ。陛下の婚約者じゃなくなったあんたなんて、何の価値もないのだから」

レオンハルト様の婚約者と言う立場に、今までどれ程守られていたか──その時私は身に染みて痛感した。

「こんな真っ黒な髪、無い方がマシでしょう」

ローズは私の長い黒髪を掴むとハサミで一気に切り落とした。

「止めて!」

私は金切り声をあげた。
貴族令嬢として長い髪は美の象徴であり、命だった。

その大切な髪がローズによって無惨に切り落とされていく──

「キャハハッ!男みたい」

すっかり短くなった私の髪を見て、ローズが身体を曲げて笑っていた。

「これで色目も使えなくなったわね」

満足したようにそう捨て台詞を吐くと、ローズは納屋から出て行き扉を閉めた。

「酷い……」

切り落とされた大量の髪の毛に、大粒の涙が染み込んでいく。

『ティアラの髪は美しい絹のようだね』

そう言ってレオンハルト様は私の髪によく触れてくれていた。

そんな彼との大切な思い出までも一緒に切り刻まれてしまったようで、私はとても苦しくなった。

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