49 / 56
第二章 ティタニアル大陸編 クラーク共和国
第49話 魔邪香ちゃんと焚いておくんだった
しおりを挟む
フォルス大森林に足を踏み入れてから一か月、僕は終わりの見えないこの絶望的な環境に辟易していた。
「あーもう、いつになったら首都にたどり着けるんだよ……つうか、この森どこまで続くんだよ! 僕はもう限界なんですけど⁉」
「そうボヤくでないメグル。馬車ではなくて徒歩で行こうと言ったのはそちじゃろ?」
「そ、それはそうだけどさ。リンは辛くないのか、この環境が……アーってならないのか?」
「ふむ……そうじゃの。強いて言うなら~あれじゃな、ベッドで眠れないのが辛いの。あ~それとちゃんとした食事がとりたいの。そこいらのものをただ焼いたり煮たりじゃなくて、もっと手を加えたものを食したいの」
こういう環境でサバイバルをするのは今後冒険者としてやって行くためにも必要な経験。忍耐力や精神力を鍛えておけば、これよりも過酷な環境に放り込まれたとしてもやっていけるようになる。
とはいっても、四次元袖下に詰め込まれた数々の品によって、正直なところ耐えられないほど辛いと思ったことはあまりない。
ゴール地点が存在しないんじゃないかと疑いたくなるほどの、見渡す限りの緑の中をずっと彷徨うのは話が違うというか、頭がおかしくなりそうだ。リンと一緒じゃなければ、正気度値チェックをしていた可能性まである。
僕と話す気がなくなったのか、リンは身体を丸めて急に眠り始めた。器用にも僕の頭に乗った状態のままで。
てっきり袖下に潜り込むかと思っていたが、町中の綺麗な道とは異なるためリンなりに僕がこけないように考慮してくれたのだろう。
まあだからどうしたって話ではある。どちらにしても、リンの体重分を上乗せして移動することにはかわらない。これが平坦な道であれば、何時間でも乗ってくれていて構わないのだが、状況が状況なだけにちょっとだけしんどい。
フォルス大森林内には枝分かれた道が多数ある。どのルートが目的地に続いているか分からなくなりそうだが、分かれ道ごとに親切に行先の看板が立っているおかげで、初回でも迷わずに目的地に行ける。
国境町から首都に向かうルートは、それらの大元となる道をただ真っすぐ突き進むだけなのだが、驚くほど一向に着かないのだ。
それどころか誰とも会わない、一番良く使うであろうメインルートのはずなのに、馬車で追い抜かれたりとか、すれ違うこともなくこの一か月間、ただひたすら北西に向かって歩き続けている。
馬車もスムーズに通れるように道は石畳で舗装されている。ところどころデコボコな箇所もあるため歩行する分には問題はないが、馬車の場合だと速度を上げすぎると、乗り物酔いまっしぐらなのは確実だろう。それでもぬかるんだ泥道を進むよりかは数段マシだといえる。
出発前にイシュラは確かこう言っていた。徒歩で向かったとしても一か月もあれば首都に到着するはずだと。実際のところ、首都メルフィンの影すらまだ発見できていない。
そこで僕はとある仮説を立てた。
獣人族と人族では身体能力が異なる。彼女の言う一か月は獣人族が歩いた場合であり、人族だとそれ以上かかるのでは? というものだ。つまり、妖力によって身体能力も向上している僕もまた獣人族と同じように一か月でたどり着けるはずだった。
まあ今現在まだこの森にいるため仮説は脆くも崩れ去ったわけだけど、後半部分はあれだけど前半部分は強ち間違ってはいない気がする。
ずっとこの地で生活してきたことで、獣人族はこの環境に適応している。それに対して環境に適応できていない人族は無駄に時間を要する。
僕もまたその例外に漏れず環境に馴染めなかったというわけだ。
フォルス大森林は高温多湿の熱帯雨林。
ただここにいるだけで不快感はマックスになる。僕ですらそんな状況なのに、一般人なら心身ともに疲弊してそれどころではないだろう。
しかも、ちょっと道から外れるだけで鬱蒼と生い茂る樹林に、ぬかるんだ沼地や濁った水たまりがあり、そこにはもれなく人に害する魔物や虫が棲みついている。
その中で最も厄介なものが魔物ではなくて虫、特に僕をイラつかせた相手が蚊である。魔物は確かに脅威ではあったし、這いより血を吸ってくるヒルも相当に鬱陶しかったが、まとわりついて耳元で羽音を鳴らし、お礼と称して痒みを送りつけようとしてくる。あの害虫に比べたら数億倍マシだ。
「ジメジメしてるし、虫に蛇にヒルに……あ~もうイライラする。蚊に刺されたところも痒い。こんなことになるなら魔邪香ちゃんと焚いておくんだった……」
「あーもう、いつになったら首都にたどり着けるんだよ……つうか、この森どこまで続くんだよ! 僕はもう限界なんですけど⁉」
「そうボヤくでないメグル。馬車ではなくて徒歩で行こうと言ったのはそちじゃろ?」
「そ、それはそうだけどさ。リンは辛くないのか、この環境が……アーってならないのか?」
「ふむ……そうじゃの。強いて言うなら~あれじゃな、ベッドで眠れないのが辛いの。あ~それとちゃんとした食事がとりたいの。そこいらのものをただ焼いたり煮たりじゃなくて、もっと手を加えたものを食したいの」
こういう環境でサバイバルをするのは今後冒険者としてやって行くためにも必要な経験。忍耐力や精神力を鍛えておけば、これよりも過酷な環境に放り込まれたとしてもやっていけるようになる。
とはいっても、四次元袖下に詰め込まれた数々の品によって、正直なところ耐えられないほど辛いと思ったことはあまりない。
ゴール地点が存在しないんじゃないかと疑いたくなるほどの、見渡す限りの緑の中をずっと彷徨うのは話が違うというか、頭がおかしくなりそうだ。リンと一緒じゃなければ、正気度値チェックをしていた可能性まである。
僕と話す気がなくなったのか、リンは身体を丸めて急に眠り始めた。器用にも僕の頭に乗った状態のままで。
てっきり袖下に潜り込むかと思っていたが、町中の綺麗な道とは異なるためリンなりに僕がこけないように考慮してくれたのだろう。
まあだからどうしたって話ではある。どちらにしても、リンの体重分を上乗せして移動することにはかわらない。これが平坦な道であれば、何時間でも乗ってくれていて構わないのだが、状況が状況なだけにちょっとだけしんどい。
フォルス大森林内には枝分かれた道が多数ある。どのルートが目的地に続いているか分からなくなりそうだが、分かれ道ごとに親切に行先の看板が立っているおかげで、初回でも迷わずに目的地に行ける。
国境町から首都に向かうルートは、それらの大元となる道をただ真っすぐ突き進むだけなのだが、驚くほど一向に着かないのだ。
それどころか誰とも会わない、一番良く使うであろうメインルートのはずなのに、馬車で追い抜かれたりとか、すれ違うこともなくこの一か月間、ただひたすら北西に向かって歩き続けている。
馬車もスムーズに通れるように道は石畳で舗装されている。ところどころデコボコな箇所もあるため歩行する分には問題はないが、馬車の場合だと速度を上げすぎると、乗り物酔いまっしぐらなのは確実だろう。それでもぬかるんだ泥道を進むよりかは数段マシだといえる。
出発前にイシュラは確かこう言っていた。徒歩で向かったとしても一か月もあれば首都に到着するはずだと。実際のところ、首都メルフィンの影すらまだ発見できていない。
そこで僕はとある仮説を立てた。
獣人族と人族では身体能力が異なる。彼女の言う一か月は獣人族が歩いた場合であり、人族だとそれ以上かかるのでは? というものだ。つまり、妖力によって身体能力も向上している僕もまた獣人族と同じように一か月でたどり着けるはずだった。
まあ今現在まだこの森にいるため仮説は脆くも崩れ去ったわけだけど、後半部分はあれだけど前半部分は強ち間違ってはいない気がする。
ずっとこの地で生活してきたことで、獣人族はこの環境に適応している。それに対して環境に適応できていない人族は無駄に時間を要する。
僕もまたその例外に漏れず環境に馴染めなかったというわけだ。
フォルス大森林は高温多湿の熱帯雨林。
ただここにいるだけで不快感はマックスになる。僕ですらそんな状況なのに、一般人なら心身ともに疲弊してそれどころではないだろう。
しかも、ちょっと道から外れるだけで鬱蒼と生い茂る樹林に、ぬかるんだ沼地や濁った水たまりがあり、そこにはもれなく人に害する魔物や虫が棲みついている。
その中で最も厄介なものが魔物ではなくて虫、特に僕をイラつかせた相手が蚊である。魔物は確かに脅威ではあったし、這いより血を吸ってくるヒルも相当に鬱陶しかったが、まとわりついて耳元で羽音を鳴らし、お礼と称して痒みを送りつけようとしてくる。あの害虫に比べたら数億倍マシだ。
「ジメジメしてるし、虫に蛇にヒルに……あ~もうイライラする。蚊に刺されたところも痒い。こんなことになるなら魔邪香ちゃんと焚いておくんだった……」
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。
平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。
どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる