11 / 29
第11話 姉妹団らん
しおりを挟む
私はオクタヴィア姉さんとヴィヴィアン姉さんに席に座るように促すと、二人に紅茶を振る舞いキッチンに向かった。まず最初に焼き菓子を持って行くことにした。冷蔵庫からスコーンやワッフルを皿に重ならないようにのせると、軽く電子レンジで温めなおした。最後に焼き菓子をずらして小さなスペースを作ると、そこにハチミツを注いだ小皿をのせた。
やはり温めなおす時間が短かったようで、外は温かかったけど中はまだ冷たかった。中途半端な温め具合だったけど、それが逆によかったらしく姉さんたちは美味しそうにパクパクと食べてくれた。まだケーキがあることを伝えると、姉さんたちは一斉に手を止めて、そっちを持ってきてと急かしてきた。
ケーキをホールのままテーブルに持って行くべきか、それともキッチンで四等分か八等分に切り分けて持って行くべきか……。
そのことで悩んでいるのが表情に出ていたらしく、今度はオクタヴィア姉さんがにんまりと笑みを浮かべて、私にある助言をしてくれた。
「アリシャが楽な方を選ぶといい。どちらを選んだとしてもわたしたちが、それで機嫌を損なうことなどないのだから。アリシャが想ってくれているだけで、姉さんは嬉しいものなのよ? でも、できればすぐに食べたいから――わたしとしては前もって切り分けておいてくれると助かるわ」
「オクタヴィア姉さん……途中までいい感じだったのに、後半から欲がだだもれよ? でも、私としてもそっちの方がいいと思っていたから、八等分に切り分けて持ってくるね」
私はそう言うとケーキを用意しに一度家に戻ることにした。後ろを振り返ると「はっやく! はっやく!」と、子供のようにテーブルを叩くダメな大人が目に入った。
八等分に切り分ける予定だったけど、あの残念な光景を目の当たりにしたことで、私の考えは変わり四等分に切り分けることにした。少しでも時間短縮をするための浅知恵である。姉さんたちがケーキの大きさでケンカをしないように、一寸の狂いもなく包丁を入れる時が一番緊張する。この瞬間だけは何度経験しても慣れない。
私はケーキを各皿に移し替えると、最後にそれぞれ姉妹のイニシャルを模ったチョコをケーキの外側に刺した。あとはその四皿とフォークをトレイにのせて、姉さんたちが待つテーブルにまで運べば任務完了となる。
少しでも身体を傾ければそれが振動としてトレイに伝わり、ケーキを崩しかねない。ただあの緊張を乗り越えた私にとっては、児戯にも等しい簡単なことだった。
私は深く息を吐き吸ってを繰り返したのち、トレイを手にして無心でただ目的地まで歩いた。正面を見据えたまま螺旋階段を下り、様々な容器が並ぶ棚を横切り、開けっ放しの玄関ドアを通り抜け、それぞれの席前に各ケーキとフォークを置いた。空となったトレイは冷水筒が入った桶に横向きで立てかけた。
「ふぅ~、お待たせしました。秋の果物三種のショートケーキです。果物は、ブドウ、キウイ、ミカンを使用しております。さあどうぞお召し上がりください」
私の声を合図に姉さんたちは手を合わせ「いっただきまーす」と行儀よく返事をすると、フォークを手にケーキを食べ始めた。
美味しそうに頬張る姉さんたちに続いて私も一口食べてみた。酸味のある果物と少し甘めの生クリーム、ふわふわのスポンジと我ながらいい出来栄えだ。伊達に次の魔女会が私の番だと分かってから、地道に練習をしただけのことはある。まあケーキを焼くのも食べるのも嫌すぎて、年単位でサボってた時期もありましたけどね。
私がケーキを半分ほど食べ終えた時には、姉さんたちは完全にケーキを食べ終わり、それぞれコーヒーや紅茶を飲んで余韻に浸っていた。
満足してくれたのかなと思ったのも束の間、姉さんたちはまたこぞって焼き菓子に手を伸ばしては口に放り込んでいった。どうやらただの小休止だったらしい。
まだ食べたりないのか姉さんたちは空っぽになった皿を眺めては、物欲しそうに私のケーキをチラ見してくる。三人の注意を逸らすために話を振ることにした。
私はケーキを食べる手を止めて、姉さんたちに何か面白いことはなかったのかと尋ねた。
「私……姉さんたちの近況報告が聞きたいな~?」
その私の言葉を皮切りに姉さんたちは、それぞれ自分の近況について話してくれた。
私はその近況報告を聞きながら、残ったケーキをフォークで一口サイズにしては口に運んでいった。
やはり温めなおす時間が短かったようで、外は温かかったけど中はまだ冷たかった。中途半端な温め具合だったけど、それが逆によかったらしく姉さんたちは美味しそうにパクパクと食べてくれた。まだケーキがあることを伝えると、姉さんたちは一斉に手を止めて、そっちを持ってきてと急かしてきた。
ケーキをホールのままテーブルに持って行くべきか、それともキッチンで四等分か八等分に切り分けて持って行くべきか……。
そのことで悩んでいるのが表情に出ていたらしく、今度はオクタヴィア姉さんがにんまりと笑みを浮かべて、私にある助言をしてくれた。
「アリシャが楽な方を選ぶといい。どちらを選んだとしてもわたしたちが、それで機嫌を損なうことなどないのだから。アリシャが想ってくれているだけで、姉さんは嬉しいものなのよ? でも、できればすぐに食べたいから――わたしとしては前もって切り分けておいてくれると助かるわ」
「オクタヴィア姉さん……途中までいい感じだったのに、後半から欲がだだもれよ? でも、私としてもそっちの方がいいと思っていたから、八等分に切り分けて持ってくるね」
私はそう言うとケーキを用意しに一度家に戻ることにした。後ろを振り返ると「はっやく! はっやく!」と、子供のようにテーブルを叩くダメな大人が目に入った。
八等分に切り分ける予定だったけど、あの残念な光景を目の当たりにしたことで、私の考えは変わり四等分に切り分けることにした。少しでも時間短縮をするための浅知恵である。姉さんたちがケーキの大きさでケンカをしないように、一寸の狂いもなく包丁を入れる時が一番緊張する。この瞬間だけは何度経験しても慣れない。
私はケーキを各皿に移し替えると、最後にそれぞれ姉妹のイニシャルを模ったチョコをケーキの外側に刺した。あとはその四皿とフォークをトレイにのせて、姉さんたちが待つテーブルにまで運べば任務完了となる。
少しでも身体を傾ければそれが振動としてトレイに伝わり、ケーキを崩しかねない。ただあの緊張を乗り越えた私にとっては、児戯にも等しい簡単なことだった。
私は深く息を吐き吸ってを繰り返したのち、トレイを手にして無心でただ目的地まで歩いた。正面を見据えたまま螺旋階段を下り、様々な容器が並ぶ棚を横切り、開けっ放しの玄関ドアを通り抜け、それぞれの席前に各ケーキとフォークを置いた。空となったトレイは冷水筒が入った桶に横向きで立てかけた。
「ふぅ~、お待たせしました。秋の果物三種のショートケーキです。果物は、ブドウ、キウイ、ミカンを使用しております。さあどうぞお召し上がりください」
私の声を合図に姉さんたちは手を合わせ「いっただきまーす」と行儀よく返事をすると、フォークを手にケーキを食べ始めた。
美味しそうに頬張る姉さんたちに続いて私も一口食べてみた。酸味のある果物と少し甘めの生クリーム、ふわふわのスポンジと我ながらいい出来栄えだ。伊達に次の魔女会が私の番だと分かってから、地道に練習をしただけのことはある。まあケーキを焼くのも食べるのも嫌すぎて、年単位でサボってた時期もありましたけどね。
私がケーキを半分ほど食べ終えた時には、姉さんたちは完全にケーキを食べ終わり、それぞれコーヒーや紅茶を飲んで余韻に浸っていた。
満足してくれたのかなと思ったのも束の間、姉さんたちはまたこぞって焼き菓子に手を伸ばしては口に放り込んでいった。どうやらただの小休止だったらしい。
まだ食べたりないのか姉さんたちは空っぽになった皿を眺めては、物欲しそうに私のケーキをチラ見してくる。三人の注意を逸らすために話を振ることにした。
私はケーキを食べる手を止めて、姉さんたちに何か面白いことはなかったのかと尋ねた。
「私……姉さんたちの近況報告が聞きたいな~?」
その私の言葉を皮切りに姉さんたちは、それぞれ自分の近況について話してくれた。
私はその近況報告を聞きながら、残ったケーキをフォークで一口サイズにしては口に運んでいった。
10
あなたにおすすめの小説
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる