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第6章  罪咎

第92話  賽子

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 俺の最大の懸念事項。神の鉄槌。

 もう一度起きたら世界が滅亡するかもしれない。謎の出来事。いない筈の神の一撃。インドラの矢なんて落とされたらたまらない。想定ではエルフの天蓋てんがいあたりかね。あれだけのテクノロジーで兵器を装備していない訳ないからさ。

 この日初めて龍の感情が動き。不愉快気に鼻を鳴らした。その様子だけで冷汗が背中を流れる。

(つまらん話だが、約束だ。致し方ないが答えよう。少し前に狂った人種共がたかってきたので追っ払った)

 え? 最高神をも殺す戒めの権能をぶっぱなした? 俺の表情から察したのか龍が不機嫌な意思を伝える。

(否。――くしゃみ程度の力よ。我の権能は世界を滅ぼし暗黒の渦に呑む。朋友の信により友にしか使わぬ)

 おいおい。渦に呑むって、ブラックホールでも生み出すのかね。それと友が創世神で確定だ。それにしてもまさか神の鉄槌が創世龍のくしゃみとは。

 地図で見ても海まで続く関東平野の何倍も広大なんだぜ。――くしゃみって。

 生物絶滅の危機が……くしゃみって。。。

(――それでは良いな)

 俺の返事を待たずにユリを模したようなクリスタルの椅子が光った。そして俺は意識を失った。


 ――リリン♪ 蓄積アセットを確認。――真化を開始します。

§

 ノアの意識を失うと同時に、後ろに控えていたコルンキルトも溶けるように消えた。

 眠るノアを慈しむように、憐れむように龍は見つめる。自身の境遇を重ねて。

 創世神は壊れていた。それが進行し現世を巻き込むことを恐れていた。その為に自傷の龍。自刃の創世龍エクレヴィギータをこの世界に据えた。だが、壊れ続けた創世神は全ての神を従えてこの世界から去った。

 残された龍はその役目を果たすことはない。苔むす悠久を朋友の信の為に伏して過ごす。与えられた使命のまま、機会は訪れぬ永遠を。

 残された者がもう一人。――創世神と共にこの世界に顕現し、その身を尽くし力を逸した使者だ。かの者が遣わしたノアへ約定の元に協力する。この者の役目もまた――。

「アールカ様の使い。主の申されていた神殺しのやいばですね」

(否。――それすらも可能性だ。さいが選ぶ未来は絶えず変ずる。今この瞬間にも)

 疑似バルサタールを討伐することで得た剣士のアセットがアップデ真化ートされる。そしてノアは既に神殺しの朱剣しゅけん。ミミングス・ハバキリを持っていた。持たされた意味を本人は知らずに。

(だが、――かの者にも届きうる可能性か)

 構成者コンポーザーの思惑は知れず。約定やくじょうは目的を果たすのみ。龍は縛られる者。この者は解き放たれる者だ。何処までも自由に。未来すら解き放つ。
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