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第6章 罪咎
第93話 監確
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森を見つめるエステラの眼にツンツクとオナイギの姿が映った。その無事に安堵する。二羽は安心させるようにゆっくりと大きく旋回するとトラの天板に止まった。
「――お帰り。ツンツクくん。無事で安心した」
エステラは意思疎通出来ないが、それでも優しく話しかけた。
「ピーヨロ」
ツンツクが穏やかに応える。
「後はノアさんが無事戻ってくればだねぇ」
トゥエアルを抱きしめ、ブラブラさせながらクラーラが言った。
「――そうね。トラちゃん。残り時間は?」
「はい。エステラさん。残り四十三分十三秒です」
ジリジリと待つ時間は長く感じた。
「トラちゃん。時間になったら教えてね」
「はい。承知しました。エステラさん」
エステラはトラが何か良く分かっていない。だから人格として扱う。その対応は仲間に対するものと変わらなかった。
「――ララ。時間までお茶でもしよう。お菓子は何がいい?」
クラーラは半分寝ているトゥエアルをクッションに置き、パッと放すと立ち上がる。そして、ゴブリンの村で覚えた腰を振る喜びの舞いを踊った。揺れながら言う。
「――ドーナツがいい!」
緊迫していたエステラを和まそうとおどけて見せた。それをクスリと微笑んでエステラも和やかに伝える。
「それじゃあ。――フレンチクルーラーね」
クラーラが飛び跳ねる。
「――最高だよ!」
ツンツクの帰還で普段の穏やかさが戻った。エステラは絶対の信頼を置く青年に早く帰って来てと心で念じた。
§
耳が痛いほどの静寂が支配する場所で、その声は響いた。
「――試験体の真化を確認しました。エクレヴィギータからの強制発動です」
「ありがとう。エムザラ。やはり龍の方が早かったか。ん? 遅かったのかな? まぁ、いいか。一歩前進だね。あいつに届く刃になればいいけど。期待し過ぎても落胆が大きくなるからね」
花を模した複雑なリクライニングに座り男は穏やかに語る。
「もう。悪意の欠片に取り込まれることはないでしょう」
女性が念を押すように、そう口にする。
「――お帰り。ツンツクくん。無事で安心した」
エステラは意思疎通出来ないが、それでも優しく話しかけた。
「ピーヨロ」
ツンツクが穏やかに応える。
「後はノアさんが無事戻ってくればだねぇ」
トゥエアルを抱きしめ、ブラブラさせながらクラーラが言った。
「――そうね。トラちゃん。残り時間は?」
「はい。エステラさん。残り四十三分十三秒です」
ジリジリと待つ時間は長く感じた。
「トラちゃん。時間になったら教えてね」
「はい。承知しました。エステラさん」
エステラはトラが何か良く分かっていない。だから人格として扱う。その対応は仲間に対するものと変わらなかった。
「――ララ。時間までお茶でもしよう。お菓子は何がいい?」
クラーラは半分寝ているトゥエアルをクッションに置き、パッと放すと立ち上がる。そして、ゴブリンの村で覚えた腰を振る喜びの舞いを踊った。揺れながら言う。
「――ドーナツがいい!」
緊迫していたエステラを和まそうとおどけて見せた。それをクスリと微笑んでエステラも和やかに伝える。
「それじゃあ。――フレンチクルーラーね」
クラーラが飛び跳ねる。
「――最高だよ!」
ツンツクの帰還で普段の穏やかさが戻った。エステラは絶対の信頼を置く青年に早く帰って来てと心で念じた。
§
耳が痛いほどの静寂が支配する場所で、その声は響いた。
「――試験体の真化を確認しました。エクレヴィギータからの強制発動です」
「ありがとう。エムザラ。やはり龍の方が早かったか。ん? 遅かったのかな? まぁ、いいか。一歩前進だね。あいつに届く刃になればいいけど。期待し過ぎても落胆が大きくなるからね」
花を模した複雑なリクライニングに座り男は穏やかに語る。
「もう。悪意の欠片に取り込まれることはないでしょう」
女性が念を押すように、そう口にする。
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