リア=リローランと黒の鷹

橙乃紅瑚

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第三章

47.鳥葬 ★

「ふっ、や、やああっ! やだあっ!」

 身体を清められ寝台の上に寝かされたリアは、四人のゼルドリックから舌で犯されていた。

 二人の彼から、左右それぞれの胸の頂きをぷっくりと腫れ上がるまで丹念に舐められる。そして股の間には、別のゼルドリックの頭があり、リアのひだや肉芽を味わうように舐めしゃぶる。陰核の包皮を剥かれ、最も敏感な根の部分を舌で舐め回される快感に、リアは切羽詰まった声を上げ続けた。残る一人からは腹や足、脇を舐め回され、たくさんの赤い痕を肌の上に散らされていく。

「おねがっ、おねがい! も、もう、なめないで! はなしてよおっ、あ、ああっ……」

 ゼルドリックの舌がリアの性感帯を柔らかく刺激する。どこまでも甘く、だが逃げ場のない快楽に、リアはぽろぽろと涙を流した。じゅくじゅくと聞くに堪えない水音がリアの股から響く。肩を甘噛みされ、耳に舌を挿し入れられる。柔らかな舌たちが、無慈悲にリアを追い詰めていく。ゼルドリックはとめどなく溢れ出る愛液を甘露のように味わい、暗く笑った。

「ふぅ、ふ、ううっ! あっ! やっ、だめ、だめっ……!」

 ゼルドリックの魔力がリアの身体に満ちていく。魔力酔いの熱と舌で与えられる強い快楽にリアは暴れ、身を捩ろうとした。だが屈強な腕たちがそれを許さない。胸を苛むゼルドリック二人に身体を抑えつけられ、リアは強い快楽を逃すことができずに絶頂の悲鳴を上げた。

「ひうっ! ひゃ、いやっ……! やあああっ……!」

 豊かな赤い髪を振り乱し、リアの身体が寝台に深く沈みこむ。

「ははっ……とても気持ちよさそうだ。舌責めはそんなに良かったか? 俺の唾液で君の身体がべたべたになってしまった。せっかく清めたばかりだというのに……」

 リアの秘所を舐めしゃぶっていたゼルドリックが、ゆっくりとリアの半開きの唇を奪う。口の中に広がる自分の味に、リアは頭をくらくらさせた。ゼルドリックの舌がもっと味わえと言うように絡みつく。ゼルドリックが離れると、リアは荒い息を吐いて彼に懇願した。

「も、もうやめて……これいじょうは、むり……おねがいっ……」

 四人の男に群がられ身体中を好き勝手に舐め回される。身を捩ることも出来ず、ただ与えられる快楽を弱い身体で受け止め続けるしかない。リアは一時間以上も続けられる舌責めに疲れ切っていた。

「聞かぬ、君がどれほど懇願しても俺の気が済むまで続ける。勝手に何度も達していろ」

 ゼルドリックは歪な笑みをリアに向けた。

「リア、気が付いているだろう? 君の身体は、ここに連れてきてから殊更に敏感になった」

「ふ、ああっ!」

 膣に指を突き立てられ、蕩けきった秘部をかき回される。

「乳首だって、俺が大好きなぷっくりとした陰核だって随分と大きくなったぞ? 当然だよな。頻繁に強い刺激を与えているのだから」

「あ、ああっ、やああ、ゆびとめてっ……ぬい、てよおっ……!」

「愛しいリア。君は俺が少し触れるだけで濡らして、顔を赤くして、潤んだ瞳をこちらに向ける。俺は君のその様を見るたびおかしくなりそうだ。俺を求めてくれている気がするから。君が俺を嫌いでも、いくら拒絶したいと心のなかで思っていても。この身体はそうではない。だって俺がそうしたから。そう君を作り変えたから……」

「うっ、あはっ、はあんっ! ふ、うううう……! あ、あっ、あああああんっ……」

 じゅぐじゅぐと粘り気のある水音が響く。リアは弱いところを執拗に引っかくようなゼルドリックの指にまた絶頂を迎えた。

「リア、俺を心から受け入れろ。そうしたら君は救われる」

「ふ、う……?」

 泥のようなゼルドリックの声が落ちる。リアは快楽に痺れる身体の中、ぼうっとそれを聞いていた。

「俺にたくさん精を注がれて、君はもうとっくに子を宿しているかもしれない」

(…………)

 リアは目を瞑った。

「魔法も使えぬ君に何が出来る。こんな樹海に閉じ込められては、どこにも逃げ場はないぞ」

(…………そうね)

「助けは来ない。諦めろ。君がいくら信じようとも、俺はオリヴァーが追ってこれない場所に君を隠した。そしてもう、君を外に出すつもりは一切ない。逃げられないように雁字搦めに縛り付けておく」

(……そう、ね。あなたがもう、次の機をくれるとは私も思っていない)

「これ以上耐えたところで苦しくなるだけだ。君が俺を望みさえすれば楽になる」

(……)

「うつろを埋めてほしくて、刺激が欲しくて、嫌いな俺を情けなく求めるくせに」

(そうよ……その通り。身体がずっとおかしいの。ゼルを求めて常に疼き続けている)

「……身体は俺に触れられて、こんなに悦んでいるのに」

(そう。あなたに触れられるのはどうしようもなく気持ち良い)

「なのになぜ君は逃げようとするんだ。俺に支配されて、そんな顔をするくせに。錯覚してしまいそうな程、嬉しそうな顔をするくせに……」

 ゼルドリックの言葉が雨のように落ちる。悲しみと泥濘のような執着が込もった声音に、リアの胸がとくり、と跳ねた。

(私はあなたに触れられて嬉しい。あなたに支配されるのが嬉しい)

「俺を選べ。何もかも諦めて、俺の傍にいると誓え……リア」

(私だってそうしたい。ゼルに可愛がられたい。ずっと一緒にいたい。未来のことなんて何も考えずに、あなたに縋ってしまいたい。好きって言いたい)

「君が望むものは何でも差し出そう。富も力も、至上の快楽だって与えてやろう。君のためなら俺は何だって出来る。それほどに君を求めているから。君は、俺の奇跡だからっ……」

 震える狂愛の吐露がリアに降り落ちる。
 リアは閉じた目からひとつ涙を流した。心に抱え続けていた宿願を取り出していく。

(ゼル……)

(私ね……ずっと王子様に会いたいと思ってたの)

(コンプレックスだらけの自分を愛してくれる男性ひとが欲しかった)

(すっぽりと私を包むくらい大きくて、ハーフドワーフの私より力の強い男性に会いたかった)

(独りでも強く生きていけたらと思ってたけど、でもそれと同じくらいに……)

(ろくな抵抗なんてさせてくれないくらい強く押さえつけて、私の力をへし折ってくれる男性が欲しかった)

(私の無力さを嘲笑われたい、隅々まで貶されて、身体の奥まで汚されたいって、人に言えない願望を持っていたの)

(でも、酷いことはするけれど、どこまでも……どこまでも私のことを愛してくれる男性に)

(力強く抱きしめて口付けてくれる男性に)

(私がどうなっても傍にいてくれる男性に)

(私は、そんな男性にずっと会いたいって思い続けてきたの)

「……ゼル」

 リアは見下ろすゼルドリックの首に腕を回した。彼に対する想いが込み上げる。脳裏に過ぎるダークエルフの優しい微笑みが、リアの心を温めていく。

(だから、あなたは私の運命だと思った。あなたに逢えてよかった)

(夢で出逢った「黒の王子様」が、あなた自身で心から嬉しかった)

(初めてをあなたに捧げられてよかった)

(あなたに好きって言ってもらえるたびに蕩けそうになる)

(あなたに触れられたところが、熱となって私の中を巡る)

(こんなに好きになれるひとはいない)

(大好きよ、愛しているわ)

(私の王子様……)

 リアはそっと腕に力を込め、ゼルドリックの頭を己の胸に抱き寄せた。

 目の前の愛おしい王子の手を取って、燃え盛る恋に焼かれてしまいたい。
 おかしくなった自分を、いつまでも可愛がってほしい。傍でずっと愛を囁かれたい。

 あなたを愛していると伝えたい。

 深い深い海の底へ、二人で溺れてしまいたい。

 ――その先に、ゼルドリックの破滅さえなければ。

(私の運命。私の、ただ一人の王子様。だから……)

(あなたの隣に私が立てなくても)

(あなたに生きてほしいの)

(傷つけてごめんね)

「ごめんなさい……」

 リアの謝罪に、ゼルドリックの心の内が大きくひび割れた。






「ふっ、ふっ、ふあっ、ああんっ、ひゃんっ、ああああああっ!」

 リアはゼルドリックの上に座らされ、下から剛直を打ち付けられていた。リアの豊かな赤い髪と白い双丘が大きく揺れる。ぶるぶると腿が痙攣し、上気した肌がなお桃色に染まる。強い快楽に耐えきれず、リアは下にいるゼルドリックの方へ倒れ込んだ。

「ひいっ、あん、ああっ……あっ、ああっ」

 ゼルドリックの黒く逞しい腕が、リアの身体を抱え込む。自分の上に倒れたリアを掻き抱き、ゼルドリックは腰を強く動かした。腹の裏側を弱いところを執拗に擦られ、リアはがくがくと身体を震わせた。彼女の半開きの唇からとろとろと唾液が流れ、ゼルドリックの肌の上を伝っていく。

「休むな」

 リアの横からゼルドリックの低い声が落ちる。リアの腿や白く柔い尻の肉に、黒い陰茎が擦り付けられる。そして手にそそり勃った男根を握らされる。リアは四人のゼルドリックに輪姦されていた。代わる代わる彼らに犯され、膣や腔内に次々と陰茎を突き立てられる。リアの身体は、汗と精液でぬらぬらと光っていた。

「ひっ、いやあああっ……ひゃだ、やだあっ……」

 リアを壊す。
 ゼルドリックはそれを目的に、リアを強く責め立て続けた。

 脳が処理しきれないほどの強い快楽を与え、魔力の器が溢れるほどに強い魔力を纏わせる。
 そしてぼろぼろになった精神に、自分という存在を強く強く刻みつける。

 もう逃げ出さないように。
 もう自分以外の存在に縋り付くことがないように。

「ふっ、ふやっ……あ、ああっ、また、いっ……いく、うっ……」

 リアの喉が震え、切羽詰まった喘ぎが桃色の唇から漏れ出る。その声の甘さに惹かれ、ゼルドリックはリアの唇を奪った。

「はあっ、はあっ、あ、はあっ……」

 リアが荒い息を吐き、肩を激しく上下させる。度重なる絶頂がリアの体力を奪う。リアはもう動くことが出来なかった。膣からは収まりきらない大量の泡だった精液がどろどろと流れ出て、リアの腿やゼルドリックの腹を汚していく。強い目眩の中、リアは頭を振って必死に自分を保とうとした。

「ひゅっ……あ、あああああっ!?」

 リアの後孔に、冷たいものが突き立てられる。それは薔薇の香油が入った瓶だった。とぷりと音を立て、媚薬を含んだ香油がリアの後孔へ流れ込む。漂う薔薇の芳香に、リアは身を硬くさせぼたぼたと涙を流した。

「や、これ、だめっ……だめ、だめえっ……おね、がい……!」

 一突きごとに深い絶頂に追いやられた記憶が蘇る。自分がばらばらになってしまうような、腹の底から迫り上がる麻薬のような快感。それを今の身体に与えられては、もう自分の意識を保っていられない気がした。

「いやあっ、いやああっ!」

 ぬるぬるとした香油が注がれた後、リアの身体が火を付けたようにかっと熱くなる。肌の上を滑るゼルドリックの手の温度や陰茎の感触がリアを追い詰めていく。みっちりと埋められた膣が、更なる刺激を求めてひくつく。

「ふ、やっ! あああっ、あああああああっ!」

 ゼルドリックが緩やかに腰を動かしただけでリアは大きな悲鳴を上げた。膣の中で緩慢に動く男根が、リアに抗いようのないじわじわとした快楽を与えてくる。

 そしてリアの後孔へ、別のゼルドリックの男根が突き立てられる。リアの顔が恐怖に歪んだ。

「ひっ!? ひゃ、ひゃだっ! おねがい、はいってるの、もう、そっちにはいらないからあっ……だからっ」

 舌足らずな声を上げて、リアは後ろから自分の内に入ろうとするゼルドリックに懇願した。だが太い陰茎がずぷずぷと音を立ててリアのすぼまった後孔を拓いていく。ゼルドリックの留守の間何度も張り型で犯され、ほぐされてきた後孔はすっかり狂い所だった。

「あ、だめ、だめ、おかしく、おかしくなるっ……ひいいっ、う、うううううっ……」

 自分のうつろを全て埋められている。膣と後孔を太い陰茎で埋められる衝撃に息が吸えなくなる。リアは呼吸の仕方を忘れたように口をはくはくと開けた。喉が引き攣れ、脳に電流が走ったような爛れた快楽が身体を支配する。

「はあっ、ここも気持ちいいな……そら、君もいいだろう?」

 ゼルドリックが強く後孔の奥を擦りあげた。

「ふ、うっ!?」

 一拍の後、リアは強烈な絶頂に追いやられた。

「ひ、ひっ……う、あああああああああああああああっ!」

(や、やあっ……これ……おかしくなるっ……)

 後孔から背筋へ、串刺しにされたような絶頂の衝撃が走る。ぞわぞわとした絶頂の余韻がいつまでも身体から消えない。限界なのに、媚薬を染み込まされた身体は貪欲に疼き続けている。リアは絶頂から降りてこられなくなった。

「くくっ……尻を一突きしただけで達するようになったか。ここにも快楽を教え込んだ甲斐があった」

「ひゅ、あ、ゆる、して……」

「そら、もう一回」

「ぐうっ!?」

 ゼルドリックの腰が打ち付けられる。リアの後孔が強く収縮する。

「もう一回」

「う、うああああああああっ! やああっ、ひ、ひああああんっ!!」

(い……いや、こわれちゃ……)

「ははっ、こんなに簡単にいくとは、君を虐めるのは楽しいな……」

「おねがい、おねがいっ! まだいってるの、いったままだから、だからやすませ……」

「聞かぬ」

 リアの必死の懇願が、低く情け容赦の無い一言に打ち捨てられる。リアの強張った顔をうっとりとした目で眺め、ゼルドリックは腰を大きく動かし始めた。

「早く壊れろ」

「あ、あひっ、とめてっ、とめてええ! いやああああああっ!!」

 絶頂の余韻に震える後孔がゼルドリックの陰茎に耕される。張り型で犯されたことはあれど、こうして直接ゼルドリックを後ろの孔で受け入れるのは初めてのことだった。張り型では得られなかった感触や温度が、リアを狂わせていく。絶頂から降りてこられない。達したままなのに、なお強烈な絶頂に上書かれる。

「ん、んんっ、や、なん、でっ? なんでこんなきもちいいのおっ、とまらなっ……いくのとまらないよおおっ!」

 ばちばちと脳が弾けてしまうほどの快楽が走る。

「とめて、とめて! おねがい、こわれっ、もう、もういやあああっ」

「絶頂から降りてこられないか? ほら、ここもいいだろう?」

 重苦しい熱を発する肛門の壁をぐりぐりと擦られ、リアは大きく痙攣した。

「あっ、あ!? はああっ、あ、あ、あっうううううっ……! ひやあああああっ!」

 淫らな叫び声を上げるリアにとどめを刺すように、リアの下にいるゼルドリックが、歪な笑みを浮かべ腰を動かし始めた。快楽に腫れ上がった膣が、再びねっとりと拓かれていく。

「ふっ、あああああああっ!」

 腹の奥底からどうしようもない衝撃に蝕まれていく。後孔と膣それぞれを交互に突かれ、リアは目を剥いてまた絶頂した。どこで達しているのかも分からないほど、全身が快楽の海に叩き落される。溺れて、呼吸すら上手くできない。

「ひ、あっ、やああああっ! やだあ、あっ、あふ、あふうっ、ああんっ! うご、かさないでえ、っもう、もういや! ぜる、ぜるぅっ、ひ、ひううううんっ!」

 リアの声にはっきりとした苦しさが混じる。目の前の女がとうに体力の限界を迎えていると分かっているのに、ゼルドリックは責めの手を緩めなかった。リアが叫べば叫ぶほど、ゼルドリックのひび割れ乾燥した心に甘露が流れ込んでくるようで、彼はなお愛おしい女を求めて強く腰を動かした。肉を打ち付ける音と、女の絶叫が牢に響き渡る。

「リアっ……俺は分身と感覚を共有しているんだ……君の後ろの孔も、このどろどろの膣も、どちらもたまらなく気持ちがいいっ……」

「はああっ、とめて、もうむり、むりいいっ! ひ、いいっ、いく、いっくううううっ……」

「ふっ、くっ……数人の俺で君を貪るのがこんなに良いなんて……。はあっ……リア、俺に両方埋められて君も気持ちよさそうだなあっ……? その乱れ様……! 君がそんな風になるのはっ……初めてだな……!」

「ひいっ、むり、むりなのっ! きもちよすぎっ、もう、きもちよくしないでっ! おねが、ぜるううっ!」

「はっ、はあ、は、はは……! 綺麗だ、リア……! 壊れていく君をもっと見せてくれ……」

「ひうっ、ひううっ、ぜ、る、ああ、ああああああっ!」

 ゼルドリックの白濁がリアの最奥に放たれる。両のうつろから伝わるじんわりとした熱と続く絶頂に、リアは自分を繋ぎ止めていたものが、ぷつりと切れるような感覚がした。

 ずるり、と二本の陰茎が引き抜かれる。リアは全く力の入らない身体を寝台に深く沈み込ませた。

「……あ、ああっ……」

「何を呆けている? まだ終わっていない」

 リアの身体に、また別のゼルドリックが伸し掛かってくる。

「俺を受け入れるか? リア……。受け入れるというのなら優しくしてやる」

 強い目眩に霞む視界の中で捉えた、氷のような冷たさを持つ青。リアはその冷たさと宿る哀しみに、思わず頷いてしまいそうになった。

 だが、リアは自分の中に残った絞りかすのような弱々しい意思で、辛うじて首を横に振った。

 ダークエルフの優しい微笑み。
 誰よりも愛おしい、黒の王子様。

 彼を失いたくない。
 その願いがリアの支えだった。

「………………」

 黙りこくったゼルドリックがリアの身体に手を伸ばす。
 そしてまたリアの身体に、気がおかしくなるほどの快楽が与えられる。

 終わりのない凌辱に、リアは壊されていった。








「……ぁ、……ぁ、ぁぁっ……」

 廃人のような虚ろな瞳を天井に向け、リアは掠れた小さな声を口から漏らした。
 苛烈な凌辱を数時間も受け続けたリアの身体にはゼルドリックの歯型や手形がいくつも刻まれ、体液で酷く汚れている。大量の白濁が、ごぽりと音を立てて膣と後孔から流れ続けていた。

 ゼルドリックはリアの胸にある魔力の器を透かして見た。満杯には至らなくも、あと少しで限界まで満ちるくらいに器に魔力が溜まっている。己の宿願がもうすぐで果たされようとしている期待に、ゼルドリックはほう、と歓喜が入り混じった息を吐いた。

「あと少しだ。あとほんの少し魔力が溜まれば、君を俺の精神世界へと連れていける」

(……それにしても)

 ゼルドリックは昏い瞳をリアに向けた。

「君は、首を縦に振ることはしなかったな……」

 いくら責め立てても、リアは己を受け入れることはなかった。その事実がゼルドリックを酷く苦しめる。

「君をそこまで頑なにする、心の拠り所は何なのだろうな」

 ――私はその人のことしか考えられない。ずっとその人のことだけが好き。その人のことを心から愛してる。その人になら何をされたっていい。……それくらい好きなの……。

 リアの熱の込もった声が蘇り、ゼルドリックは強い吐き気に口元を押さえた。金色の髪と、灰色の瞳を持つ美しいハーフエルフの姿が脳裏に過ぎる。

 レント=オルフィアン。
 リアの心を拐った憎らしい王子。

 ゼルドリックはぎりぎりと奥歯を噛み締めた。

「それほどまでに、あの王子を愛しているのか……」

 己の自白魔法を退けて、嘘の王子の名を吐くほどに。
 どれほど追い詰めても、諦めないと言い切るほどに。

 ゼルドリックの心に、ぱき、ぱきとまたひびが入っていく。
 その隙間から魂がこぼれ出てしまうのではないかという程の喪失感。

 どうしようもない哀しみ。息をするのさえ酷く苦しい。
 誰よりも愛する女が憎らしく、手に掛けたくなるほどの激情。
 泥に汚れた薔薇の記憶が、ゼルドリックから希望を奪っていく。

「……羨ましい」

 ゼルドリックはレントとリアが共に歩いている想像をした。
 幸せな笑みをレントに向けるリアを。自分の宝物であるあの笑みを、すべてレントに向けるリアを。
 その想像が、ゼルドリックの心をまたひび割らせる。

「王子が、レント=オルフィアンが、妬ましい。何も捧げずにリアからの愛を受け取れるあやつが憎い」

「俺もリアに強く愛されたかった。君の王子が……俺であれば良かったのに」

 自分の目から溢れた雫を拭うこともせず、ゼルドリックは体液に汚れたリアをぼんやりと見つめた。

「王子に縋って諦められないというのなら……君の中から、奴の存在を奪ってしまおうか」

 愛憎の込もったどろりとした目で、リアの虚ろな赤い瞳を覗き込む。

「あやつを殺せば、君は俺に縋ってくれるだろうか。もう心の拠り所はないのだと解れば、君は諦めて俺にものになってくれるだろうか」

 リアは何も答えなかった。
 自分の上に落ちた怖ろしい言葉を、今の壊れかけたリアには理解できなかった。

「リア……。君の心の拠り所を、今から粉々に壊してやる」

 ゼルドリックは自分が狂気に浸されきったのをはっきりと自覚した。
 呪いを込めたおどろおどろしい声で幻惑魔法を紡ぐ。

 ゼルドリックは精神に干渉する魔法をリアに施した。

 彼女が心の支えとするものを、全て怖ろしい幻にすり替える魔法。拷問に使われるその手の魔法は、決して罪なき者に対して使ってはならない。中央政府の役人であるゼルドリックはそれを分かりきっていたが、もう彼を止めるものは無かった。

 リアを壊すために、ゼルドリックは使える魔法は何でも使う気でいた。彼の狂気は、リアに対する気遣いをとうに上回っていた。
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